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[MOM3561]静岡学園MF玄理吾(3年)_左足でのスーペルゴラッソ!王国の精密時計が自身の“結果”で勝利を引き寄せる

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静岡学園高MF玄理吾(8番)が左足でゴラッソ!(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.18 インターハイ3回戦 静岡学園高 2-0 大阪桐蔭高 テクノポート福井総合公園スタジアム]

 その瞬間。雨上がりのピッチに、利き足とは逆の左足で美しい虹色のアーチを描く。にわかには信じ難いゴラッソに、チームメイトですら驚きの表情を浮かべる者もいた。「自分はそんなにゴールを決めるタイプではないので、今までで一番ぐらいのゴールだと思います」。静岡学園高(静岡)の中盤を司る『王国の精密時計』。MF玄理吾(3年=FC Libre出身)がゴールという確かな結果で、チームの勝利を引き寄せた。

「ボールを取られないというのは自分の中での持ち味なので、そこは絶対にできないといけないですし、このチームではボランチが重要な役割を担っていると思うので、そこの自覚はしっかりあります」。自ら語った『ボールを取られない』という点においては、間違いなく全国でもトップクラス。まるでコンパスのように、寄せてきたマーカーの位置を中心軸にしながら、クルリと回って局面を剥がしていく。

 大阪桐蔭高(大阪)と対峙したこの日の3回戦。「内容はあまり良くなかったですね」と川口修監督も言及したように、決して前半からリズムが良かったわけではないチームの中でも、この男にボールが入った時には、周囲に攻撃のテンポが生まれていく。

 そして衝撃のスーペルゴラッソは、1点をリードした前半終了間際の35+2分。右サイドハーフのMF高橋隆大(2年)のクロスはDFに弾かれたものの、玄はボールの落下地点を瞬時に見極める。「相手のクリアが中途半端になって、落ちてくるのがわかったので、力まずにミートだけ意識して、利き足と逆の左足で当てようと思いました」。

 左足で叩いたボールは、さながら“ドライブシュート”のような凄まじい軌道を描いて、ゴールネットを捕獲する。「良い軌道でゴールに吸い込まれていきましたね。落ちるボールで、蹴った瞬間に「これは入るな」と。『ああ、ゴールが決まったな』と思いました」。前述したように本人が『今までで一番ぐらいのゴール』と表現したのも納得が行く。

 そもそも中盤でのテクニックは折り紙付き。ここからさらにワンランク、ツーランク上の選手へと成長を遂げるために、“結果”が必要だということは自分でも十分に理解している。「ゴールに繋がるプレーをするというのは自分の中でも課題であって、監督からも結構言われていたりするので、ゴールでチームを助けられたというのは嬉しく思います」。全国の舞台で眩い才能が煌めいた。

 一時はやや調子を崩した時期もあり、ボールが集まってくるがゆえに、相手のプレスのターゲットにされたこともあったと聞くが、今大会の自身の出来を問うと、「どの試合も結構安定したパフォーマンスができているなというのはありますね」ときっぱり。そのフェーズは乗り越えた自覚を本人も持っているようだ。

 だからこそ個人のみならず、チーム全体のパフォーマンスに目を向け、さらなる改善点を口にする。「今日は納得の行く内容ではなかったので、ウチの出来としては4割ぐらいだと思います。前半もそうだったんですけど、後半は相手の勢いに飲まれたというか、ウチのサッカーができなくて、ビルドアップのところでミスも多くて、そういう正確性の部分は改善したいです。サポートの速さも、切り替えの速さも遅かったので、奪われた後の攻守の切り替えで、すぐにゴールにアタックに行くという部分はもう少し突き詰めていけると思います」。

 準々決勝ではプレミアリーグWESTに所属する大津高(熊本)と対峙する。「相手はプレミアのチームでレベルも高いと思いますけど、自分たちは技術の高さでは絶対に負けていないと思うので、静学らしさとか、自分たちのスタイルをとことん出して、全力で勝ちたいです」(玄)。

 “とことん”という言葉に、磨き上げてきたスタイルへの自信が滲む。『自分たちのスタイルをとことん出す』。その中心ではいつでも玄が、ボールと楽しげに会話を交わしている。

(取材・文 土屋雅史)
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