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光ったパワーと粘り強さ。日章学園の特長消した米子北がPK制して8強へ

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魂こもった守りで無失点に貢献した米子北高DF飯島巧貴。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.18 インターハイ3回戦 米子北高 0-0(PK5-4)日章学園高 三国運動公園陸上競技場]

 令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)は18日に3回戦を開催。米子北高(鳥取)と日章学園高(宮崎)の一戦は最後までゴールが生まれず、70分で決着着かず。PK戦の末に米子北が準々決勝進出を決めた。

 1回戦、2回戦と相手に先手を取られる流れとなってしまっていた米子北。この試合についても「どうも嫌な予感がしていた」と中村真吾監督は振り返る。ハードにプレッシャーを掛けて相手の自由を奪っていくプレーが身上のチームだが、それをテクニカルにいなされてしまうと難しくなる。そして、その予感は前半の間は的中していた。「相手の巧さに対して、(守備で)飛び込むのを怖がってしまっていた」(中村監督)。

 対する日章学園・原啓太監督は手応えも感じる前半の内容だった。「小気味良いパス回しはできていた。割りとボールも握れて、ギャップで受けてということもできていた」と振り返ったとおり、試合時間の経過と共に前半は日章学園の良さが出る流れに。MF金川羅彌(2年)を軸にボールを動かし、2トップの個性を活かす、あるいはサイドに開いてという展開も観られた。

 ただ、米子北の守備対応も粘り強かった。2回戦の内容で中村監督から厳しい指摘も受けたというディフェンス陣が奮起してあらためてこの試合に向けて自分たちの守備を確認。相手に主導権を握られる中でも、DF鈴木慎之介(3年)と飯島巧貴(3年)の両CBを軸に隙らしい隙を作らず、決定的なシュートは打たせない。MF佐野航大(3年)と山中奨(3年)の両ボランチも、前半は守備に軸足を置いて難しい時間帯を乗り切った。

 そして迎えた後半は、ハーフタイムで「後ろ重心になっていた」(中村監督)点を修正した米子北のペースとなった。ピッチ上の肉弾戦で優位に立って相手の技術的な特長を消すことに成功すると、ロングボールも効果的に使いながらサイド攻撃中心にチャンスを作っていく。

 後半の3分、8分、そして15分とFW福田秀人(2年)が立て続けに決定機を迎えるが、シュートはいずれも入らない。7分にはハーフウェイライン手前でボールを拾った佐野の超ロングシュートも飛び出したが、これは枠外。ただ、「相手GKがだいぶ前に出て裏(のスペース)を見ていたので、そこを狙った。入ればよかったですけれど、外れても出にくくなるだろうと思ったし、実際そうなった」という10番の頭脳的なプレーも飛び出すなど、プレーの発想や余裕の部分も前半とは段違いの内容だった。

 しかし、日章学園・原監督が「最後の最後まで体を張る、自由にやらせないというところをやってくれた」と語ったように、日章学園も素晴らしい守りを見せる。30分に、米子北MF佐野のドリブルからの絶妙な左クロスを逆サイドのMF渡部颯斗(3年)に合わせられてしまう被決定機もあったが、これはGK後藤大輝(3年)が右手1本でビッグセーブ。終了間際の35分にはロングFKから繋いだところをFW木脇蓮苑(3年)が頭で合わせるこの試合最大級のチャンスも作ったが、これは枠外へ逸れた。

 結局、両チームに得点が生まれまま、PK戦へ。先行となった日章1番手のシュートがポストを叩いた一方で、米子北は全員が成功。PKスコア5-4で、米子北が8強進出を決めた。

 勝った米子北・中村監督は試合内容自体には渋い表情を見せつつも、「でも勝てたことはよかった」と総括。その上で、次の準々決勝に向けては「(神村学園高は)強さも巧さもあるチームだと感じている。判断ができていろいろなことができる選手が多い」と警戒も深めつつ、「相手にはスーパースターもいるので、そこの1対1でどこまで頑張れるかどうか」と一つのポイントを挙げた。

 一方、敗れた日章学園・原監督は「パワーやタフさの部分で米子北さんが上回っていて、そこをかいくぐれなかったということ。PK戦の結果自体は仕方ないと思っているし、選手たちはよく頑張ってくれました」とコメント。そして「秋口からまた鍛え直してもう1回挑戦したい。敗退は私の責任なので、私自身もレベルアップして冬に向かいたいと思っています」と、チーム全体でさらなる成長を目指すことを誓っていた。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2021

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