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丸岡は青森山田に0-8の大敗も、地元開催の経験を感謝しつつ“最高の基準”を刻み込む

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丸岡高は地元開催で得た経験を未来に繋げていく(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.18 インターハイ3回戦 丸岡高 0-8 青森山田高 テクノポート福井総合公園スタジアム]

 1点を奪われて迎えた、前半のクーリングブレイク。丸岡高(福井)のベンチからは、小阪康弘監督の怒号に近い大声が響いていた。

「もうミーティングでも『絶対逃げるな』『絶対怯むな』ということを言っていたにもかかわらず、大事なところでやっぱり退いちゃったという、そこだけです。だから、『怯まずに行け』と。アレは絶対やっちゃいけないことだから、僕は頭にきていましたね」。

 絶対に逃げないこと。絶対に怯まないこと。高体連最強の呼び声も高い青森山田高(青森)と対戦したから、8つものゴールを奪われたから、その言葉が持つ意味は体感として彼らの中に刻まれたはずだ。地元開催で悔しい結果を突き付けられた丸岡の選手たちは、この基準を携えて、冬の全国大会での躍進を誓う。

 前半も開始15分前後までは決して悪い出来ではなかった。10分にはDF徳山港音(2年)が跳ね返されたものの、鋭いクロスを中央へ送る。続いて15分にもMF德川留野(3年)のキープから、ここも徳山がクロスを上げ切り、キャプテンマークを巻いたMF横山潤成(3年)がシュートまで行きかけたものの、最後の局面でDFに弾かれる。この勢いを続けていけば、何かが起こりそうな雰囲気はあった。

 それが霧散したのは18分。一番警戒していたであろうロングスローの流れから、全体が下がってしまい、CBにヘディングでゴールを奪われる。そこから冒頭のクーリングブレイクに、流れは繋がっていく。

「1点目がすべてやったかなと思います。ああいうところを突いてくるというのは、やっぱりプレミアのトップを走っているチームだとは思いました。あの1点がなければもっと順応していったかなと思いますけど、アレでやっぱりちょっとおかしくなっちゃったというか、おかしくさせたのはやっぱり山田の強さなんだろうなとは思いますね」。小阪監督は率直にそう振り返る。

 ただ、「もう本当に1点目を獲られてから、前半が終わるまでは地獄のような、そういう時間帯でしたね」と表現した時間帯で5点を奪われ、メンタルが完全に折れても仕方がないような後半には、一定の手応えを感じたという。「後半は変化が見られましたね。相手がメンバーを落としたというのもあるかもわからないですけど、割と慣れてきたのかなと。でも、やっぱり体験してみないとわからないですね」。試合後。選手たちは思い思いの表情で、終わったばかりの70分間を噛み締めていた。

 瀬戸内高(広島)と青森山田。タイプの違う2チームとの対戦で、指揮官はより想いを強くしたことがある。「瀬戸内とやってみて、ある程度ボールを動かすチームには対応できると。でも、ああいうふうに飛び越えてくる、セカンドボールをかっさらっていくという、青森山田みたいなチームへの対応というのは、『ああ、これだけ差があるんだ』と。でも、これに対応できないと、全国でベスト16からベスト8というのは超えられないんだなというのは感じましたね。どっちがいいのかはわからないですけど、今はどっちもできないとダメなんだなというのは凄く感じました」。

 そして、何より地元開催で味わった様々な経験に、感謝の念が口を衝く。「我々には本当に地元開催という責任もあった中で、生徒らは1つ勝って、こういう全国のトップを知ることができて、僕らにとっては凄く収穫があったなと思いましたね。あとは、こういうコロナ禍の中でも、こうやって大会運営をやって下さる方がいて、そのおかげでこうやって試合ができているのは、本当に感謝しかないです。だから、そういうことがあったからこそ、こうやっていろいろなことを学ぶことができたかなと思うので、これから続いていきますけど、またいろいろな試合をしたいなと思いますね。勉強になりました」。

 無観客での地元開催。難しいシチュエーションにも1勝を手繰り寄せ、最後まで試合を投げることなく、青森山田という最高の基準を自分たちの経験としてその身体に刻み込んだ、丸岡の選手たちに大きな拍手を。

(取材・文 土屋雅史)
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