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[MOM3571]青森山田MF松木玖生(3年)_常に引き寄せる“結局”は努力の結晶。10番は悲願達成を懸けた4度目の全国決勝へ

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青森山田高を牽引するキャプテン、MF松木玖生(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.21 インターハイ準決勝 青森山田高 4-0 静岡学園高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 結局はこの10番が、仕事をやり遂げてしまう。だが、その“結局”を常に出し続けることがどれだけ難しいかは、なかなか本人以外に理解できないのではないだろうか。「『自分たちは絶対に勝てる』という気持ちを、自分もピッチでやっていて感じたので、仲間も凄く良い形で動いてくれましたし、今日は全員で勝ち切った勝利かなと思います」。青森山田高(青森)が誇る10番でキャプテン。MF松木玖生(3年=青森山田中出身)が披露し続けている“結局”は、彼自身の努力の結晶に他ならない。

 静岡学園高(静岡)と対峙したビッグマッチの準決勝。チームに勢いを呼び込んだ先制弾は前半13分。右サイドをFW名須川真光(3年)との連携で、MF藤森颯太(3年)が抜け出した時には、まだ自陣にいたにもかかわらず、50メートル近い距離をフルスプリントで駆け抜けると、ニアでMF田澤夢積(3年)が潰れた折り返しは、目の前に転がってくる。

「どフリーでしたし、あそこに飛び込むのが自分だと思うので、でも、シュートをふかさなくて良かったです」。笑顔で振り返ったゴールは、今大会4点目。スプリントと得点力。シーズン前に自身で課題に挙げていた2つの合わせ技で、きっちりと結果を出してみせる。

 後半4分にはセットプレーで魅せた。自らの仕掛けで奪った、ペナルティエリアすぐ外のFK。いつものように藤森と言葉を交わしながらスポットに立った時点で、腹は決まっていた。「あのコースは普段練習から取り組んでいた場所で、自分自身も『あのコースなら絶対に決められる』と蹴る前から確信できていました」。

 左足から放たれた軌道は、壁の左側を高速で巻きながら、左スミのゴールネットへ鮮やかに吸い込まれる。「変わらずお祭り男であることは間違いなくて、『本番に強いな』とつくづく感じました」と黒田剛監督も言及した“お祭り男”は、まずは“クリスティアーノ・ロナウド”で歓喜を爆発させた後、今大会のお気に入りでもある“メンフィス・デパイ”のダブルパフォーマンスで自らのゴールを祝う。これで今大会5点目。得点ランクトップに立っていた福田師王(神村学園高)をついに捉えた。

 全国屈指の攻撃力を誇る静岡学園をシュートゼロに抑え込んだことについても、キャプテンらしく仲間の奮闘に言及する。「これはディフェンスラインを褒めたいと思います。まず、サイドプレーヤーの10番(古川陽介)と11番(川谷凪)が凄く静学の長所だと思っていた中で、(大戸)太陽と(多久島)良紀のところでそこを抑えてくれましたし、センターバックもカバーリングやヘディングで勝っていた部分もあって、本当に“シュートゼロ”ということを目標にしていたので、凄く良かったですね」。以前は懸念材料として挙げられていた守備陣への信頼が、日に日に増している様子もその言葉から窺える。

 4-0でリードしていた、最終盤の後半35+6分。青森山田はCKを獲得する。点差や時間帯を考慮しても、十分に時間稼ぎに出ておかしくないタイミングだったが、松木はコーナースポットに近付いた藤森を制し、果敢に5点目を狙いに中央へキックを蹴り込んだ。些細なワンシーンかもしれないが、あくまでもアグレッシブにゴールを目指す選択は、決勝へ向けたチームの勢いという意味でも、決して小さくないものだったようにも感じる。

 最後の1試合。日本一までは、あと1勝。「決勝まで進むことができて、自分自身ホッとしているんですけど、次に勝たないと意味がないので、次に向けて気持ちを切り替えていきたいです」。

 中学3年時の全国中学校サッカー大会。一昨年度の高校選手権。そして、昨年度の高校選手権。松木は3年連続で全国準優勝という悔しさを味わっている。明日の決勝が終わった時。「“結局”は松木だった」と言われる活躍が、4度目での悲願達成にとっては必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)
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