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チームの重要で不可欠なピース。青森山田MF小原由敬は自分にできることへ全力で向き合う

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ダメ押しの4点目を決めて喜ぶ青森山田高MF小原由敬(7番)(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.21 インターハイ準決勝 青森山田高 4-0 静岡学園高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 今大会の準決勝までで、スタメン起用はわずかに1試合。まだ2年生だった昨年度の高校選手権をレギュラーで戦った男にしてみれば、悔しい想いがないはずはない。それでも出場機会を得た時には、自分ができることへ全力で向き合いながら、短い時間でも仲間のために戦い続ける。青森山田高のナンバー7。MF小原由敬(3年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)の存在も、チームにとっては重要で不可欠なピースである。

 静岡学園高(静岡)と対峙した準決勝。3-0とリードしていた後半30分。残り5分というタイミングで小原はピッチへ解き放たれたが、投入直後から周囲は彼に強烈なコーチングの声を飛ばす。準々決勝の東山高(京都)戦では、この時間帯から2失点を食らっていただけに、チーム全体にその失敗を繰り返さないという意識が漂う中で、とりわけ守備面で多くの指示の声が飛んでくる。

 だが、やはり小原の最大の特徴はゴールに関われるアタック面。それを証明する瞬間はアディショナルタイムに到来する。35+4分。左サイドを交代で入ったばかりのMF小野暉(3年)がドリブルで運ぶと、中央で空いているスペースを敏感に嗅ぎ取り、マイナス気味にポジションを取る。右足一閃。スライディングしたDFへわずかに当たったボールは、ゴールネットをきっちり揺らす。

 ダメ押しの4点目。そのままベンチに走っていった7番が、祝福の輪の中へ飛び込む。限られた出場時間の中で、これが大会3点目。「途中交代の選手が点を決めてくれると、自分自身も嬉しいですし、小原もスタメンを奪われてしまってという、なかなか難しい状況ですけど、このように今も活躍してくれているので、交代で入ってきて頼もしい印象はありますね」と話したのはキャプテンのMF松木玖生(3年)。チームメイトも彼の想いは十分にわかっている。

 指揮官の黒田剛監督も、小原のプレーには確かな評価を口にしている。「サイドより中で使った時の方が、ターンした時のスピードもあるし、和倉(ユース大会)でも玖生がいない中であのポジションをしっかり埋めながらやっていて、そこで成長が凄く見えたので、『ああ、これで良かったんだ』って。使う目途がちょっと立ったなと。ここに来て凄く成長している選手の1人ですよね」。

 今シーズンのチーム立ち上げ時には左サイドハーフのレギュラーだったが、高円宮杯プレミアリーグEASTで結果を残してきたMF田澤夢積(3年)の台頭で、スタメンから弾き出される格好に。ただ、従来の4-4-2で戦う時の左サイドハーフに加え、4-1-4-1を敷く時はシャドーの位置でもプレーできることで、チーム戦術の幅の広がりに一躍買っていることも、彼の存在をより浮き上がらせている。

日本一までは、あと1勝。今まで積み上げてきた努力と才能を考えれば、決勝の舞台に立った小原が主役を張る可能性は、もちろん十分過ぎるほどに秘められている。

(取材・文 土屋雅史)
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