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「気持ちいいぐらいの完敗」。静岡学園はこの70分間を絶対的な“基準”に冬のリベンジを誓う

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完敗を喫した静岡学園高は冬のリベンジを誓う(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.21 インターハイ準決勝 青森山田高 4-0 静岡学園高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

「相手の読み、球際、先を読む力が断然違うなと感じて、本当に気持ちいいぐらいの完敗です。逆に気持ちいいですね。これからもっとどうやっていこうかなと。『この強度でやろうよ』という、そういう気持ちです」(川口修監督)「本当に完敗の一言に尽きると思います。強度、守備の激しさ、球際、切り替え、すべて自分たちの完敗でした」(生嶋健太郎)「自分たちのやりたいサッカーができずに完敗だったと思います」(持山匡佑)。

 得点どころか、シュートもゼロに抑えられた完敗。今シーズンの高校年代最強チームとの呼び声も高い青森山田高(青森)と対峙した準決勝。静岡学園高(静岡)が思い知らされた圧倒的な“基準”は、あるいは彼らを次のフェーズへと向かわせるために、必要な過程だったのかもしれない。

 まず、前進できなかった。「技術とアイデアでフィジカルを上回ろうとしていたんですけど、プレスを剥がせずに終わってしまいました」(持山)。技術とアイデアを出す前に、気付けばオールコートで深く寄せられ、ボールが繋がらない。

 FWの持山匡佑(3年)はシンプルに1対1の劣勢を痛感していた。「自分はセンターバックと対峙して、ゴールキックとか空中戦は1回も勝てなかったし、ボールを受けることができなかったので悔しかったです」。青森山田も彼にボールが入った時に、全体がテンポアップすることは把握済み。意識的に全体を圧縮することで、持山を孤立させることに成功していた。

 CBの伊東進之輔(3年)はゴール前での質の高さを突き付けられた。「ゴール前に入り込んでくる質とか、クロスの質とかは、上手いなと思いました。テクニックという部分ではウチが勝っていると思うんですけど、最後のゴール前に入り込む質だったり、キックの質だったり、そういう部分はレベルが高いなと感じました」。1失点目も、4失点目も、エリア内で完全にフリーの状態からゴールを奪われている。オフ・ザ・ボールの動きも含めて、先手を取られていた感は否めない。

 川口監督が感じたのは、ボールを奪われた時の守備強度だ。「マイボールになった時のプレッシングはもちろん剥がさなきゃいけないですけど、やっぱりそこで取られた後のウチの守備力が低くて、あの強度を上げるだけでだいぶ変わってくると思います。そこはウチの選手たちにもまだ要求していないので、取られた後の切り替え、球際のところはもちろん、また奪い返してマイボールにすると。そういうところをこれからやっていきたいですね」。いわゆる“即時奪回”の強度を上げることは、ここからの大きな課題になっていきそうだ。

 ただ、思い知らされた圧倒的な“基準”をここからの成長に繋げることも、既に指揮官はイメージできている。「この青森山田さんを“基準”に考えて、今後のトレーニングをしていかないといけないし、一番良かったのは選手たちがこの強度を体感できたということで、もちろん始まる前から『ここまでは最低でも行こうよ』という話はしていたので、非常に良い経験が積めたかなと思います」。

「これから彼らが技術練習とか、守備のところの球際、切り替えのところとか、たぶん練習の中で強度が上がってくるので、良い練習ができるようになるのかなと。もう1つ上の練習がやっていけるのかなと感じますし、これから夏以降で選手たちが成長して、奮起してくれると思います」。

 それでも、静岡学園は静岡学園であり続けなければならない。「やっぱり自分たちのストロングを伸ばさないといけないなと思いました。あの強度の中でしっかりボールを持てる、ちゃんと剥がせる、ボールを繋げる、そういうチームにしないといけないなと。2年前のチームも夏以降グッと伸びていきましたし、この年代の高校生は非常にのびしろがあって、1つのキッカケで上がってくるので、そこに期待してチーム作りをしていきたいですね」(川口監督)

「次に青森山田と戦えるのは冬の全国だと思うので、それまでに本当に日々の練習を大事にして、次に戦った時は自分たちが圧倒できるようにしたいです」と持山が口にすれば、「ある意味、山田さんに凄く勉強させてもらいました。『ありがとうございます』という感じです。この強度で、この真剣勝負はなかなかできないですよね。だから、ここまで来れたことは凄く財産で、明確な目標を持たせてくれたなと」と川口監督は今後に向けて前を向く。

 5試合を戦った全国大会を振り返ってみても、魅力的なスタイルは十分に示した。最後に味わった70分間の“基準”を、さらに超えるために。静岡学園はこのまま黙っているようなチームではない。

(取材・文 土屋雅史)
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