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[戦評]見せた強みより大きかった両チームの不安(鹿島vs広島)

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[3・1 ゼロックス・スーパーカップ 鹿島 2-2(PK3-4) 広島 国立競技場]

田村修一の「視点」

 試合に関しては鹿島の試合巧者ぶりが目立った。後半開始早々に見せた2得点のように相手のスキを逃さない攻撃、そしてスキを逃さないゲーム感覚を改めて感じさせた。優勝した昨年後半もそうだったが、彼らは力を出すことが必要な場面が分かっている。戦い方もブレていない。今年もこの勝負強さを発揮するだろう。
 だが鹿島からは、昨シーズンからのプラスアルファというものを感じられなかった。日本代表でプレーする田代(有三)や内田(篤人)が一皮剥けたプレーをしたかというと見られなかった。新しい戦力を補強したかというと、昨年と変更はほとんどない。現時点で昨年以上のチームだとは言い切れないと思う。優勝したことで今年はマークが厳しくなることは間違いない。ACLに出場することで日程もハードとなるため、楽な戦いはできないはずだ。

 一方の広島はJ2を勝ち抜くために必要な大砲の存在を見せ付けた。2点のビハインドを久保(竜彦)と佐藤(寿人)の決定力で追いついた。J2で重要なところは点を取れるかどうか。佐藤や久保の決定力を備えていることは大きな武器となるだろう。現戦力であれば、J2で抜け出せる力はある。
 だが、この日の試合内容は少し残念だった。前半に数的優位を得たにも関わらず、鹿島の攻撃を恐れるあまり自分達の攻撃ができなかった。サイド攻撃をもっと仕掛けて勝負して欲しかった。追いついたのは2点リードされ、必要に迫られて攻撃するようになってから。きょうの広島は鹿島をリスペクトし過ぎた感があった。また後半にDFを3バックから4バックへ移行して機能しなかったことも不安が残る。キャンプを終えて、さあ開幕という時期なのに、チームができていないという印象だ。
 両チームが2得点を挙げて盛り上がったような試合だったが、鹿島にしても広島にしても、チームの良さより不安を感じさせた。開幕を告げるゲームとしては寂しかった気がする。

(取材・フットボールアナリスト田村修一)

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