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8月の3試合で勝ち点7を奪取!帝京も下した三菱養和ユースの逆襲はここから始まる

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三菱養和SCユースはFW洪怜鎭の先制点をみんなで喜ぶ

[8.29 高円宮杯プリンスリーグ関東第6節 三菱養和ユース 2-0 帝京高 三菱養和会 巣鴨スポーツセンターG]

 3試合とも先制しながら、いずれも追い付かれる展開の中で、無念のグループステージ敗退を強いられたクラブユース選手権の反省が、ここに来て確かな結果という形で実を結び始めている。「追加点を獲れているのが大きいですね。クラブユースは必ず1点は獲られていたので、そこは守って追加点を獲ろうと話していて、最近のプリンスリーグではそれができているので、凄く成長しているなと思います」(三菱養和ユース・仲野隼斗)。

 追加点を奪い切って、今季初の連勝達成。29日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ関東第6節、三菱養和SCユース(東京)と帝京高(東京)の東京勢対決は、FW洪怜鎭(3年)が2ゴールを叩き出した三菱養和ユースが2-0で勝利。昌平高(埼玉)戦に続き、複数得点に無失点で勝ち切って、6位まで順位を上げている。

 先にチャンスを作ったのは帝京。前半2分に左SB入江羚介(2年)のロングスローから、最後はMF橋本マリーク識史(2年)のヘディングは枠を捉えるも、三菱養和ユースのGK町田佳祐(2年)がキャッチすると、8分にも決定機。右サイドをドリブルで運んだFW伊藤聡太(2年)のクロスに、ニアでMF前野翔平(2年)が合わせたボレーはゆっくりとゴールへ向かうも、ボールは右のゴールポストにヒット。先制点には至らない。

 すると、意外な形で動いたスコア。9分。帝京は後方でのビルドアップ時に、GKへのバックパスが短くなってしまう。「まずは守備から走りまくってチームに貢献しようと思っていた」とボールを追い掛けた洪怜鎭が、そのままダイレクトでゴールへプッシュ。「あのバックパスは常に狙っているので、アレは狙い通りのゴールだったのかなと思いますね」と笑顔を見せた10番の抜け目ない先制弾は、自身にとっても今シーズンのリーグ戦初ゴール。三菱養和ユースが1点をリードする。

 ややもったいない失点でビハインドを負った帝京は、「失点した時間は早かったからどうにかなるかなと思いましたけどね」と日比威監督も話したように、以降も繰り出す攻撃の手数。14分にはFW齊藤慈斗(2年)が粘って落とし、MF狩野隆有(3年)が叩いたボレーは枠の左へ。36分にもゴールまで約25メートルの位置から、齊藤が直接狙ったFKはクロスバーの上へ。惜しいシーンを作り出す。

 45+1分も帝京。右SBの島貫琢土(2年)が投げたロングスローは混戦を抜けてゴールへ向かうも、千葉への入団内定が発表された中で「正直プレッシャーはありますけど、やれることは変わらないので、自分のやれることをやっていきたいです」と語る三菱養和ユースの右SB西久保駿介(3年)がゴールライン上でクリア。直後に齊藤のパスから伊藤が放ったシュートも、三菱養和ユースのキャプテンを務めるCB森山純平(3年)が身体でブロック。前半は1-0のままで、45分間が終了した。

 後半も同点を狙う帝京が攻勢に出ていたものの、したたかに三菱養和ユースが記録した追加点。12分。右からのCKをレフティのMF嵯峨康太(3年)が蹴り入れると、クリアボールにいち早く反応した洪は「最初は『ミートさせよう』『ちゃんと枠に飛ばそう』と蹴ったんですけど、当たった瞬間に『ああ、これは入ったな』という感じがわかりました」というダイレクトボレーをゴール左スミへ突き刺してみせる。結果の欲しかったストライカーが“ドッピエッタ”の大活躍。点差は2点に開く。

「相手のバイタルまで侵入するところは前半も後半も良かったですよね」と指揮官も言及した帝京は、それでも無得点で敗れた前の試合の山梨学院高(山梨)戦同様に、ゴールが遠い。30分にはMF山下凜(2年)とMF松本琉雅(2年)と途中出場の2人でチャンスを作るも、三菱養和ユースの左SB大沢惇貴(2年)がきっちりカバーに入り、シュートは打たせず。35分には右から伊藤、左から入江のピンポイントクロスを、どちらも齊藤が枠内にヘディングで打ち込むも、やはりどちらも町田がファインセーブで阻止してみせる。

 ファイナルスコアは2-0。「11人全員で守るためにも、個人がどうその場面で振る舞わないといけないかというような話をしていて、全部が全部ボールに行くわけではないし、全部が全部下がるわけでもないし、カバーするかも、チャレンジするかもしれないし、とエリアや状況に応じた話をしている中で、彼らはそういうことを忠実にやってくれて、本当に粘り強くやってくれたなという気はしますね」と庄内文博監督も評価を口にした三菱養和ユースが帝京相手に完封勝利を収め、8月開催のリーグ3試合で勝ち点7を積み上げることに成功した。

 前述したように先月開催されたクラブユース選手権では、全3試合で先制点を奪いながら、結果的に2分け1敗でグループステージを突破できず、悔しい現実を突き付けられた三菱養和ユース。その経験から「先制点を獲って、点を獲られないという目標を立てて」(仲野)挑んだプリンスリーグで、昌平戦、今節の帝京戦とその課題をクリアしたことで、チームは結果と自信を同時に手に入れている。

 この日は他のカテゴリーの選手たちの姿はなかったものの、帝京戦後には紅白戦を実施していたユースの選手たちだけでも、いつも通りグラウンドには養和っ子の活気があふれていた。長くこのクラブに在籍しながら、今シーズンから初めてユースの指揮を執っている庄内監督は、三菱養和で指導することについてこう言及している。

「とにかく僕らは、指導者全員でみんなを育てているという感覚なんですよね。今のユースの子たちも僕が小学校4年生のスクールを教えていた時の子たちで、ちょうどこのタイミングでまたみんなと会ったなという感じなんですけど、今までもグラウンドで見かけたら声を掛けて『どう?』なんて言いながらやってきて、巡り合わせで今はこうなったなという感じなんです」。

「実際にユースの監督をしてみて思うのは、養和での“最後の出口”というか、その責任感は凄く感じるなと。ただ、前任の生方(修司・前監督)を含め、僕もずっと一緒にやってきているスタッフなので、それぞれの指導者の個性もありますし、選手たちはいろいろな指導者に教わって、僕に教えられないことは他のスタッフが教えてくれているし、僕にしかできないことを伝えられたら、また何か掴んで上に行ってくれるんじゃないかなと。それが養和であるのは間違いないですね。あんな小さかった子たちと一緒にプリンスリーグを戦っているとか、本当に笑っちゃいますけど、こんな嬉しいことは本当にないですよね」。

 東京という土地柄もあり、この社会情勢下で時間的な制約も。スクール、ジュニアユースのあとにユースの練習が組まれる日は、1時間弱しかボールを蹴れないこともあるという。「だから、『サッカーができる時を大事にしようね』と。練習はできる時間でとにかくやろうという中で、『挑戦』ということをとにかくみんなで言い続けながら、やってきているのが実際のところです。本当に選手は頑張ってくれています」(庄内監督)。

 苦しんだ前半戦だったが、8月シリーズの巻き返しで6位まで浮上。ようやく上が見えてきた。「自分はお兄ちゃんも養和なので、何ならベビーカーに乗っているぐらいからかわいがってもらっていた生粋の養和っ子ですね。正直まだ最後の年という気はしないですし、最高のクラブなので、本当に離れたくないなって。なので、プリンスリーグからプレミア参入戦まで行って、最後はみんなで喜び合って終わりたいなって思います」(洪怜鎭)。

 『挑戦』を掲げる2021年の三菱養和ユース。真剣にプレミア昇格を目指す本当の逆襲は、ここから幕を開ける。

(取材・文 土屋雅史)
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