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カナリア軍団のコントロールタワー。帝京MF狩野隆有は古豪復権のキーマンに

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帝京高のコントロールタワー、MF狩野隆有

[8.29 高円宮杯プリンスリーグ関東第6節 三菱養和ユース 2-0 帝京高 三菱養和会 巣鴨スポーツセンターG]

 テクニックに優れた選手が集うカナリア軍団の中でも、大半の攻撃はこの司令塔を経由してスタートする。自然と集まるボールを運び、配り、決定的なチャンスに関わっていく。「自分はボールを受けてからのドリブルだったり、展開だったりが特徴で、縦パスも結構意識しているので、もうちょっとミドルシュートも狙っていければ、もっと怖い選手になれるのかなと思います」。

 名門・帝京高(東京)のコントロールタワー。MF狩野隆有(3年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)は3年生たちの想いも胸に、トップチームのピッチに立っている。

 三菱養和SCユース(東京)と対峙した、プリンスリーグ関東第6節。前の試合でも山梨学院高(山梨)に0-2と敗れ、連敗は避けたい一戦に臨んでいた帝京だったが、序盤から攻勢に出ていた中でイージーミスから先制点を献上。以降も手数は繰り出しながら、得点を奪えない。ボランチの一角に位置した狩野も積極的に前へと飛び出していくものの、前半14分に放ったボレーも枠外へ。いくつか作ったチャンスも、相手の守備陣にことごとく跳ね返されていく。

「最初に簡単に失点してしまって、チームとしてはあまり良い形ではなかったですし、課題の攻撃もまだまだダメでした。結構チャンスはあるんですけど、決めるところを決め切れなくて、攻撃は2試合連続で無得点なので、もっと練習から質を高くやっていかないといけないと思います」。狩野も反省を口にしたゲームは、またも0-2で敗戦。決して悪くない内容が続いているだけに、もどかしい結果に唇を嚙んだ。

「自分のパフォーマンスは全然ダメですね。ケガしてから体力が戻っていなくて、もっと走れないといけないですし、球際もまだまだ戦えていないので、もっと頑張らないといけないと思います」。個人としても負傷明けということもあって、コンディションが整わず、思うようなプレーが発揮できていないという。

 何より悔しい想いをしたのは、8月の福井で開催されたインターハイ。初戦の米子北高(鳥取)戦で、狩野は1点リードの後半残り1分でピッチに解き放たれたが、そこから2-2と追い付かれ、無念のPK戦敗退を突き付けられる。

「パフォーマンスも全然上がっていなくて、スタメンも外されて途中からの出場だったんですけど、自分が出てから1失点してしまって、本当に悔しかったです。自分たちが(予選準決勝の)堀越戦でやったことを相手にやり返されたみたいな感じで、自分たちもまだ全然時間があったのに、時間稼ぎとかしてしまって、ルーズボールも自分が蹴らせてしまってからの2失点目だったので、凄く悔しかったです」。

 結果的に帝京を倒した米子北は堂々のファイナリストに。「決勝はテレビで見ました。決勝まで行けたのは米子北が凄かったからですし、決勝でも青森山田に後半途中まで勝っていて。自分たちがあれぐらいやれたかというとわからないですけど、青森山田とはやってみたかったですね」。もしかしたら、あそこにいたのは自分たち……。この想いを糧に、また冬の全国を目指して日々の練習と向き合っている。

 今年のトップチームのメンバーには下級生が多く、3年生でコンスタントに試合に出ているのは、ゲームキャプテンを務めるGK岸本悠将(3年)とDF荻野海生(3年)、狩野の3人ぐらい。それゆえに同級生たちの期待に応えようとする想いは、誰よりも強い。

「3年生のベンチ外の人も試合前にLINEとかで『頑張れよ』とか言ってくれたり、結構声を掛けてくれるので、アイツらのためにも頑張ろうとはいつも思っていますし、練習から3年生みんなで頑張ろうという感じでやっています」。このグループで残された時間を悔いなく過ごすために、ここから辿り着きたい目的地も明確に見えている。

「まずプリンスで後期はこういう試合をしないように、無得点に終わらないように、どんどん勝ち点を積み上げていって。選手権ではまず全国に出て、優勝したいです。個人としても課題の球際の部分とか、ミドルシュートの部分をもっと磨いていって、全国でも通用するプレーヤーになりたいです」。

 古豪復権へ。帝京が12年ぶりとなる冬の全国出場を手繰り寄せるためには、この司令塔の躍動が絶対条件だ。

(取材・文 土屋雅史)
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