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“代替出場”筑波大が3大会ぶり4強、U-20代表コンビ不在も柏内定MF加藤匠人ら「4年生のプライド」

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先制点をアシストしたMF加藤匠人

[9.1 総理大臣杯3回戦 筑波大2-0桃山学院大]

 筑波大蹴球部に連絡が入ったのは、大会が開幕して4日経った8月23日の夜。初戦となる2回戦の前々日の夜だった。流通経済大と富士大で新型コロナウイルスの感染者が出たことで、関東予選で9番目だった筑波大に繰り上げ出場の声がかかった。

 幸いにも8月26日に予定されていたリーグ延期試合に向けた調整を行っていたことでコンディションへの不安はなかったが、小井土正亮監督は、「事情を考えると正直複雑な気持ちはあります」と吐露する。

 それでも選手たちにとっては格好のアピールの場、そして近年遠ざかっているタイトル奪取へのまたとないチャンスになっている。FW森海渡(3年=柏U-18)が「出たからには関係ないと思うので、タイトルを狙いたい」と話せば、MF加藤匠人(4年=柏U-18/柏内定)も「自分が大学に入ってからタイトルを獲れていないので、筑波を勝たせてからJに進みたい」と力を込める。

 総理大臣杯の4強は4年ぶり。準決勝はその2017年大会の準決勝で屈した法政大が相手となる。「今年は関東で行っている大会なので、関東のチームが上位に行かないといけないというのは使命だと思っていた」とまずは4強進出に安堵した小井土監督は、「中1日というところでどっちがいい準備を出来るか。戦術的な云々はないと思うので、楽しみたいなと思います」と闘志を燃やした。

■U-20代表候補コンビが不在

 8月30日から始まったU-20日本代表候補トレーニングキャンプに筑波大からMF山内翔(2年)とMF田村蒼生(1年)の2選手が選ばれた。両選手とも下級生ながら不動のレギュラーで、3回戦以降の不在はチームにとって大きな痛手となっている。ちなみに合宿は9月5日までのため、決勝まで進んだとしても両選手は出場できない。

 そこで小井土監督は上級生の奮起に期待する。この日は2回戦でベンチスタートだったMF小林幹(4年=FC東京U-18)や加藤が先発。加藤は前半3分の森海の先制点をアシストするなど、結果を残した。指揮官は「4年生のプライド、負けてないぞというところをみることができた」と評価。「彼らにはやってもらわないと困る」と引き続きの活躍を期待した。

 加藤にとっては久々にやってきたチャンスだった。ここ1か月ほどは怪我もあって試合に絡むことが出来ず、しばらくぶりの公式戦の先発。「プロ内定者として負けていられない」と意気込んで臨んだ試合。「山内がいないから負けたと言われないように思いも持っていました」と意地をみせることが出来たことに胸を張る。

 蹴球部に憧れて筑波大に入学した。ただ枠の少ない推薦での入学は叶わなかったために一般受験に挑戦。猛勉強の末に合格を勝ち取った。

 大学入学後もなかなか思い通りに進まず、「苦しんだことの方が多かった」と振り返る。しかしリーグ戦は2年時に17試合、3年時に20試合とコンスタントに出場を続けると、オフに“古巣”である柏レイソルから練習参加のオファーが届いた。

「ちょっとずつ試合を見に来てくれていたみたいです。それでシーズン始まる前に練習に呼んでもらって、練習試合にも出て、内定を頂きました。自分としてはもらえたチャンスを生かせたことが大きかったと思っています。大学に来てからは苦しんだことの方が多かったので、レイソル内定はかなり驚き。戻れるとは思っていなかったので、すごく幸運だなと思います」

 柏には現在、DF三丸拡やMF戸嶋祥郎といった筑波大OBが在籍。加藤にとっても同じ一般受験からプロ入りを掴んだ先輩、さらに三丸とは研究室が同じということもあり、深い縁を感じているという。「一緒に出来ることは嬉しいことですし、尊敬しかない。姿勢を学びながら、自分も活躍したいなと思います」。

 将来的には元イングランド代表のポール・スコールズ氏や柏のMF大谷秀和のような中盤の中心、欠かせない選手になりたいという目標を語る。ただまずは、「筑波、家族、お世話になかったすべての方々への恩返し」のために、残り半年を切った大学生活を全力で駆け抜ける。

(取材・文 児玉幸洋)
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