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目指すのは「1つのチーム」。東京朝鮮DFク・チャンドは誰からも頼られるチームの柱へ

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東京朝鮮高を率いるキャプテン、DFク・チャンド

[9.5 高円宮杯東京2部リーグ第9節 東久留米総合高 2-0 東京朝鮮高]

 決して思ったようなシーズンを過ごせてはいない。なかなか結果の付いてこない現状に、もどかしい想いももちろん感じている。でも、諦めたくない。自分たちでこのチームを選び、3年間で積み重ねてきた努力を形にするため、まだまだ諦めたくない。

「自分たちは前々から最弱の年と言われていて、3年生の人数も少ないですし、周りから見たら『今年は難しい年なのかな』と言われることも多いんですけど、『それを見返してやろう』と3年生で話をして、今年の1年間も頑張ってきているので、『全国で1勝する』という自分たちの目標を選手権では成し遂げたいです」。

 悲願の全国出場を目指す東京朝鮮高のキャプテン。DFク・チャンド(3年=東京朝鮮中出身)は最後の1分まで、チームのために、仲間のために、戦い続ける。

 流れは悪くなかった。東久留米総合高との一戦は、前半から東京朝鮮が攻勢に打って出る。「最近負けが続いていたので、最初から全力で行こうと言っていました」とク・チャンドも話したように、アグレッシブな姿勢でゴールに迫るシーンも再三作ったものの、なかなか得点を奪うまでには至らない。

 すると、後半は流れが一変する。「後半は最初のプレーでちょっとつまづいた部分があって、そこからちょっとずつ押し込まれていって、そこで耐えられずに、踏ん張りが足りなくて失点してしまいました」。2点を献上し、完封負け。「自分も含めて、失点を食らった瞬間にこれまでと一緒で『またか』と思ってしまった部分もあったので、そこから自分を含めて3年生の主力メンバーが、みんなを鼓舞する声を上げないとダメだったかなと思います」とキャプテンは悔しさを滲ませた。

 それでもシーズンが進むにつれて、光明は見えつつあるという。「試合の結果で見るとあまり変わりはないんですけど、リーグ戦をやるにつれて、走りの練習の時もみんなで声を出したりして、雰囲気の面では良くなっていますし、練習の質もみんなが死ぬ気で頑張るようにはやっとなってきました」。リーダーだからこそ、雰囲気には人一倍気を遣ってきた。

 もともとボランチを務めていた頃はセルヒオ・ブスケツを参考にしていたが、センターバックに転向してからは、ある選手の凄さに影響を受けているという。「ファン・ダイクがずっと何試合も1対1を抜かれないみたいなのがあったじゃないですか。『試合で抜かれるのは当たり前だ』と思っていたんですけど、ああやって1人でもずっと1対1に勝てる選手がいると強いなと感じたので、それぐらい自分が強くなって、チームの柱になりたいなと思いました」。誰からも頼られるチームの柱へ。勝利を持ってこれる選手へ。掲げた目標は力強い。

 この学校でサッカーと向き合っているうちに、気付いたことがある。「自分が高校に入ってから感じたことなんですけど、自分たちは強いチームからスカウトされて集まったりしているチームではないので、やっぱり『1つのチーム』として、みんなで力を合わせてやらないと勝てないと思いますし、そういう意味では他のチームよりも気持ちで負けてはダメだと思います」。みんなで力も、気持ちも、合わせる。『1つのチーム』として、目の前の敵に立ち向かっていく。

 中学生の頃。西が丘で見た先輩たちの雄姿は忘れられない。「試合前の挨拶とかもカッコよく見えて、自分もああいうところに立ちたいなと思いました。まずは選手権の前のTリーグに向けて一生懸命練習して、みんなで士気を上げながら全勝して、選手権でも良い結果を残したいです」。

 東京朝鮮で戦う意味を、この仲間たちと戦う意味を、ク・チャンドは自分に問い掛けながら、最後の選手権へと歩みを進めていく。

(取材・文 土屋雅史)

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