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久保建英に続け! 育成年代のフィジカルプログラムが始動

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中国戦でAマッチ出場を13にのばした久保建英

 東京五輪の激闘からはや1か月、9月のカタールW杯アジア最終予選には、五輪組から6人が選出された(DF酒井宏樹とMF板倉滉は途中離脱)。チーム最多の3ゴールを挙げてチームの原動力となったMF久保建英もメンバーに選ばれた。10歳から同選手をサポートしているプロトレーナーの木場克己氏は、東京五輪での久保のプレーをどう見ていたのか。

「かれこれ10年の付き合いになりますが、彼の涙を見たのははじめてだったので、私も思わずもらい泣きしてしまいました。100点満点のうち何点だったのかは本人にしかわかりませんが、堂々として自信を持ってプレーしているように映りました。フィジカル的な側面から言えば、一歩目の動き出しといった走る力はついてきていると思います。とはいえ、20歳の久保選手はまだ成長段階。さらなる活躍に期待したいです」

 久保は小学4年生から木場氏のトレーニングを開始し、骨格と筋肉が成長のピークとなる22〜23歳までに体づくりを完成させる計画を立てた。スペインでプレーするここ2年は遠隔でアドバイスを続けている。

「出会った頃は、同年代の選手の中でもフィジカルのレベルは『普通』でした。それがいまでは世界と戦えるレベルになった。これも10歳からフィジカルのトレーニングに取り組んだ成果ではないでしょうか」

2030年W杯、
日本代表をベスト4へ


 そして、木場氏は現在、新たな取り組み「CBA Football+(フットボールプラス)」をスタートさせている。

 CBAとは、アスリートにとって不可欠な3つの要素である、Core(コア=体幹の強さ、Balance(バランス=上半身と下半身の安定性)、Agility(アジリティ=俊敏性)の頭文字。木場氏がトップアスリートにも指導しているCBAトレーニングのメソッドを、ジュニア年代のサッカー選手に向けて特化させた特別プログラムがCBAフットボールプラスだ。

「ありがたいことに、私のCBAトレーニングを取り入れてくださっているトレーナーの方は全国にいらっしゃいますが、『少し先』を見据えて、世界で戦える強い選手を育てていきたいと考えています。彼ら、彼女たち選手をサポートしていくには、サッカーを指導しているトレーナーの方々に、サッカーに特化したトレーニングメソッド届けたいと思い、今回のプロジェクトがスタートしました」
 
 CBAフットボールプラスは、木場氏が選手を直接指導するのではなく、その指導者を育成していく。木場氏のCBAトレーニングのメソッドをサッカーにフォーカスしていくために、長年にわたって育成年代を指導してきた山崎真氏がメソッドの開発パートナーとして名を連ねている。木場氏と山崎氏は、東京ガス(現FC東京)でトレーナーと選手の関係で出会い、その後山崎氏がサンフレッチェ広島ユースコーチ時代に、木場氏を招聘。そのことが高円宮杯3連覇の大きな要因となったという。

「広島ユースで怪我人が多く出てしまっていたときに、一度お声がけいただいたのですが、その後、メディカルトレーニングアドバイザーとしてチームに携わらせていただきました。広島ユースで行っていたのは、怪我をしない体づくり。3連覇目の年は、ほとんど怪我人が出ていない状況でした」

 木場氏の考える強い選手とは、怪我をしない、当たり負けしない選手を指す。怪我をしていては、試合はおろかトレーニングに参加することもできない。その土台づくりの重要性を指摘する。

「指導者は、子どもたちが怪我することなくずっと成長していけるような身体に導いてあげなければいけないと考えています。そのためには、子どもたちがトレーニングを理解して、実践し、継続していかなければいけません。それを提供できる指導者を育てることが必要だと、我々CBAフットボールプラスは考えています。いわゆる技術や戦術の前の部分です」

サンフレッチェ広島ユースではアドバイザー就任1年目から高円宮杯を制覇

 木場氏は、これまで広島ユース以外にも、育成年代ではG大阪ユースや仙台ユースといったJユース、瀬戸内高(広島)、岡山学芸館高(岡山)、九州国際大付高(福岡)、堀越高(東京)、関東一高(東京)、星稜高(石川)、広島県国体チーム、東京都国体チーム、東京都中体連を指導。さらに、FC東京、横浜FC、仙台、福岡、チョンブリFC(タイ)といったトップチームでも、アドバイザーを務めてきた。これまでのサッカーにおけるトレーニングの集大成ともいえるCBAフットボールプラスは、すべてオンラインでの講座のため、全国で受講が可能だ。また、動画配信で行うため、日中はチームを見ている指導者でも、自分の都合のいい時間に繰り返し学ぶ事ができる。

 そして、木場氏が強調するのが「日本サッカーが強くなるために」ということ。現在、日本代表は2022年カタールW杯アジア最終予選を戦っているが、CBAフットボールプラスが見据えるのは「少し先」だ。JFAの目標でもある、2030年W杯での日本代表のベスト4入り――。そのチームの中心を担うのが、現在の育成年代だ。

「子どもの頃から、怪我なく2030年までプレーし続けることができる選手を、世界に送り出していくことをビジョンとして持っています」

 日の丸を背負い、世界で戦う選手を育成し、日本サッカーを強くすることを木場氏は見据えている。

木場克己(こば・かつみ)
1965年、鹿児島県生まれ。KOBAスポーツエンターテイメント株式会社代表。KOBA式体幹バランス協会代表。長友佑都、久保建英、中井卓大らサッカー選手のほか、水泳の池江璃花子、陸上の日本郵政女子陸上部などさまざまな競技のトップアスリートを指導した経歴を持つ。テレビや雑誌などメディア出演も多く、企業の健康講演会、教育現場での体育指導など幅広い分野で体幹トレーニングを通して人々の健康づくりを支援している。
CBAフットボールプラスサイト
木場克己オフィシャルサイト
木場克己Instagram

(取材・文 奥山典幸)

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