beacon

[MOM3577]仙台ユースFW加藤壱盛(3年)_「涙が出てきそうなくらい嬉しかった」リーグ戦初ゴールでストライカーの仕事完遂!

このエントリーをはてなブックマークに追加

FW加藤壱盛(13番)は今季リーグ戦初ゴールに渾身のガッツポーズ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.11 高円宮杯プリンスリーグ東北第14節 仙台ユース 3-0 聖光学院高 マイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場]

「もう涙が出てきそうなくらい嬉しくて、自分はゴールを獲らないといけない仕事を任されているのに、今まで決められていなかったので、いろいろな感情が湧き上がってきて…… 嬉しかったですね」。やはりストライカーは、ゴールを奪うことでしか存在価値を誇示できない。長く暗いトンネルを抜けて、ようやく辿り着いた“出口”の景色は、最高だった。

 遂に生まれた今シーズンのリーグ戦初ゴール。ベガルタ仙台ユースの13番。FW加藤壱盛(3年=GRANDE FC出身)の苦悩に満ちた半年間が、このタイミングでようやく報われた。

 5月19日。加藤は“トップチームデビュー”を飾る。YBCルヴァンカップグループステージ第6節のサンフレッチェ広島戦。同じくユース所属のMF淀川誠珠(3年)とともにベンチ入りを果たすと、89分にユース出身の“先輩”に当たる佐々木匠との交代で、ユアテックスタジアム仙台のピッチへ解き放たれる。

 ユースの中でもいち早く知ったプロの香り。だが、「すぐ調子に乗っちゃうタイプ」と自らを評する加藤は、その経験の還元法を間違えてしまう。「周りに自分が教えるというより、言い方を間違えてしまって、それを受け取る側もやりたくなくなったりして、そういう中で結構チームの雰囲気が悪くなってしまったんです」。

「その時は周りの人にも言われましたし、公亮さん(木谷監督)にも『自分がちゃんとやっていれば周囲が勝手に付いてくる部分もあるし、自分で最初に見せないと、言われている方も反論したくなることもあるから、まず自分がしっかりやれ』ということを注意されましたし、プレーしやすい環境を下の学年の子たちにも作ってあげないといけないなと。怒ることも必要なんですけど、支えてあげることが必要だなと思いました」。トップデビュー時に味わった“2つ”の経験は、自分の中に大きな収穫と反省を与えてくれた。

 ただ、不思議とプリンスリーグでのゴールが生まれない。「自分でもゴールが獲れていないということはわかっているんですけど、周りからもやっぱり言われたりとかして、凄く落ち込んでいた期間もありました。もう食事ものどを通らないぐらい、『サッカーをやっている意味があるのか?』と自分で思ってしまった時期でしたね」。周囲は次々と得点を重ねていくのに、一番得点を奪うべきストライカーの自分に、結果が付いてこない。

 聖光学院高(福島)と対峙したプリンスリーグ東北第14節。残された試合数も、ゴールを奪うための機会もどんどんと少なくなっていく中で、1点をリードした前半36分に絶好の得点チャンスが到来する。左SB佐々木裕貴(2年)のクロスに、2トップの相方でもあるFW小野獅道(2年)が頭で競ったボールは、空高く舞い上がりながら徐々に落下してくる。

「裕貴がうまくクロスを上げられて、獅道が触ってボールが上がったので、ステップをしっかり踏めて、ショートバウンドで左足でうまく合わせられたかなと思います」。難しいバウンドにも身体をかぶせて打ち切ったボレーの軌道は、ゴールネットへと到達する。駆け寄ったチームメイトとともに歓喜に身を委ねると、少しずつ実感が湧いてくる。「みんなからも『やっと決めたな!』『ナイス壱盛!』って言われたり、もう本当に嬉しい言葉を掛けてもらいました」。ようやく辿り着いた“出口”の景色は、やはり最高だった。

 元々は埼玉県出身。県内高校のサッカー部へ進もうと考えていたが、ある人の言葉がキッカケでみちのくへと単身で乗り込んできた。「夏のクラブユースの全国大会をやっている時に、『会場の中で一番輝いていた』というのを当時の壱岐(友輔)監督に言われて、『これだけ欲しがってくれているなら、自分が行っても輝けるのかな』と思ったんです」。

「それに『プロに一番近いのはどこかな』と考えた時に、『やっぱりユースなんじゃないかな』と思って、練習参加した時にプリンスリーグの試合も見させてもらったんですけど、凄く雰囲気も良くて、『ここに入ったら自分が成長できる』と思ったので、ベガルタのユースに入りました。高校だったら経験できないこともいっぱいありましたし、ずっと『トップに関わりたい』と思っていたので、それが達成できて、自分の中でも良い3年間だったと思います」。だからこそ、残された時間でできることはすべてやっておきたいと、改めて決意を固めている。

「自分が目指しているのはプロなので、そのままユースから行けなくても、大学を経由してもっと良い選手になって戻って来たいですし、ここからの4か月ぐらいを大学に行ってもすぐに試合に使ってもらえるように努力して、自分の良いところと悪いところをしっかり見極めていけたらなと思います」。

 とうとう“トンネル”を抜けたストライカー。13番を背負った加藤の逆襲は、ここから幕を開ける。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プリンスリーグ2021特集

TOP