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得意の右足で“自称2ゴール”。仙台ユースMF淀川誠珠はこの仲間たちとアカデミーの集大成へ向かう

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ベガルタ仙台ユースのキャプテン、MF淀川誠珠

[9.11 高円宮杯プリンスリーグ東北第14節 仙台ユース 3-0 聖光学院高 マイナビベガルタ仙台泉パークタウンサッカー場]

 得意のセットプレーから、2つのオウンゴールを誘発する精度の高いキックを見せた7番は、「アレは自分の2ゴールです」と笑顔を見せながら、その武器に自身を覗かせる。「今年のチームはセットプレーの得点が多いと思っていて、『自分のキックで点が獲れる』という自信は付いているので、特にコーナーキックだったら、もうゴールのチャンスだと思っています」。

 この男、右足に覚えあり。ベガルタ仙台ユースを束ねるキャプテン。MF淀川誠珠(3年=ベガルタ仙台ジュニアユース出身)はそのキックで、チームを勝利へと導き続ける。

 2試合勝ちのない状況で迎えた、プリンスリーグ東北第14節の聖光学院高(福島)戦。「最近は勝てていない状況が続いていて、今日はチーム全体が『まず戦うところからやっていこう』という試合でした」という淀川が、いきなり先制点を演出する。

 前半10分。左サイドで獲得したFK。この試合最初のセットプレーに当たり、「練習からコーナーもセットプレーもニアが空くという話をしていて、練習もしていたので、まず1本目はニアに蹴ろうと思っていた」という淀川は、ニアサイドに絶妙のスピードでボールを送り込むと、触るしかなかった相手DFのクリアがゴールネットを揺らす。「結果的に狙い通りと言ったらアレですけど、ゴールを決めることができて、良かったかなと思います」。公式記録はオウンゴールでも、自身の中では自らのゴールとカウントする姿勢が、なかなか逞しい。

 後半35分。2点をリードしている状況で、やはりセットプレーのチャンス。左からのCKは、その前に一度蹴っていたシーンが“伏線”になっていた。「後半1本目のCKの時に、1回ニアを越えるボールを蹴って、それをヘディングで外したんですけど、少し相手もそこを気にしていて、『ちょっとニアが空いているな』とは感じたので、ニアに蹴って何かが起こればと思いました」。

 淀川が低くて速い軌道でニアに蹴り込んだボールは、ここもMF小林亮太(2年)と競り合った相手DFに当たって、ゴールへ到達する。この1点も公式記録上はオウンゴールだったが、「自分のゴールが決まりましたね(笑)」ときっちりアピール。ただ、“自称2ゴール”がチームに大きな勝ち点3をもたらしたことは間違いない。

 実はキャプテンを務めるのは初めてだという。「副キャプテンはやったことがあったんですけど、正直最初は『どうしよう』みたいな感じでした。でも、『自分には何ができるか』と考えた時に、1つ1つの練習から自分が100パーセント集中して、プレーで見せていきながら、声を出す所は声を出してと、そういうところは自分でもできるかなと思ったので、シーズンが始まった時から1つ1つ何気ない練習から、そういうところを大切にしてやってきています」。

「副キャプテンの(工藤)紫苑は声も出してくれるので、そういう面で引っ張ってくれるのは紫苑かなと思って、自分も声はもちろん出さないといけないとは思うんですけど、やっぱりプレーの面で見せていって、それで仲間に付いてきてもらうことをやってきています」。工藤との棲み分けもバッチリ。自分なりのキャプテン像を、この半年間で築き上げてきた。

 2種登録も完了しており、YBCルヴァンカップではベンチ入りも経験。トップチームの練習にも参加してきた中で、ある選手の凄さが印象的だったそうだ。「松下佳貴選手は試合で見ていても上手いと思っていたんですけど、練習で見たら『メチャメチャ上手いな』と思いました。『そこに出す?』みたいな、見ている側も騙されるような、そういうパスセンスも凄いですし、ボールも失わないですし、キックの面でも凄いなと。関西弁でフレンドリーに話しかけてくれたり、優しく気を遣ってくれて、自分を巻き込んでくれました」。

 こういう経験ができるのもJクラブのアカデミーならでは。「小学生の頃はサッカーチームをベガルタぐらいしか知らなかったので(笑)、地元ですし、そういうところは憧れみたいな部分もありましたね」というチームで着実に自分を磨き、成長を続けてきた。そんなベガルタのユースで過ごす時間も、あと残りわずかになってきた。

「もうチームとしても残り6試合なので、本当に勝たなきゃいけない状況で、練習からまず勝ちにこだわってやっていきたいですし、個人的にも次のステップがあるので、チームの結果もそうですけど、プレー面で成長しながら、個人的な結果も出していければいいなと思います」。

 この仲間たちと有終の美を。自分の右足で、自分の背中で、チームを牽引してきたキャプテン。淀川は残された時間でチームも自身も少しでも成長できるよう、今までと同様に100パーセントで練習に集中して、ボールと向き合う日々を積み重ねていく。

(取材・文 土屋雅史)
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