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“家の中”でもコーンドリブル。東海大高輪台MF佐藤将が醸し出す絶対的サッカー小僧感

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東海大高輪台高の1年生ドリブラー、MF佐藤将

[9.12 高円宮杯東京2部リーグ第9節 東海大高輪台高 0-2 修徳高]

 ボールに触りたくて仕方がないような、一目でわかる“サッカー小僧”感が微笑ましい。とはいえ、ひとたびそのボールと一緒になってしまうと、彼らを引き離すのはそう簡単なことではなくなってしまう。

「自分はボールをいっぱい受けたいからボランチが好きです。後ろからドリブルで運んで、そのまま中央突破とかワンツーをして、チャンスを作るのが得意です」。東海大高輪台高のドリブル系アタッカー。MF佐藤将(1年=FCアビリスタ出身)は最高の環境で、充実した日々に身を置いている。

 修徳高と対峙した、T2(東京都2部)リーグの首位攻防戦。先に失点を許したことで、東海大高輪台は本来のリズムをなかなか取り戻せない。「練習でいつもサイドに出して、回って、クロスを上げてシュートみたいな形を作ったり、サイドが空かなかったら中を突破して、という感じのことをやっていたんですけど、今日は最初からそこまでできなかったかなと思います」。ボランチで起用された佐藤も、チームがうまく回っていない雰囲気を敏感に察知していた。

 個人としても課題が残ったという。「自分としては、前回の試合は後半の途中から入って、チャンスを多く作れたと思うんですけど、今回はあまりチャンスを作れなかったので悔しいです。前回はラストパスとかドリブルでも行けたところがあったんですけど、今回はあまり自分の得意なドリブルが生かせなかったです」。試合も0-2で敗戦。佐藤はフル出場を果たしたものの、明らかに悔しさを滲ませた試合後の表情が印象的だった。

 実はこの試合がAチームの公式戦初スタメン。予感はあったものの、それは意外な形で前日に知らされた。「今週の練習の時に『前回はサイドハーフでまあまあ良かったから、サイドハーフかボランチのスタメンで行くかも』と言われていて、昨日の練習が終わった後に結構遅くまでボールを蹴っていたら、監督に『蹴るのやめないとスタメン外すぞ』と言われて、スタメンを知りました。もともとそんな感じはしていましたし、試合に出たかったので、『早く帰ろう』と思いました(笑)」。

 居残り練習は通常営業。「一番好きなのがサッカーで、今もテストとかあるんですけど、まだ勉強は全教科までやっていないです。勉強よりサッカーの方が面白いので」と笑顔で語るが、その“好きさ加減”は家にまで持ち込まれているという。

「自分の得意なプレーがドリブルなので、家では部屋の中にコーンを4本置いて、5号球でドリブルをやっています。ギリギリでドリブルできるぐらいの部屋ですけど、高校に入ってから、『もっとドリブルが上手くなりたいな』と思って始めました。昨日はやっていないですけど、だいたい毎日やっています」。

 なかなかの衝撃的な告白。「家族に何か言われないの?」と尋ねると、「たまに夜の9時半ぐらいにやり出すことがあって、『何で今やるの?』と親に言われることもあります(笑)」とのこと。家族の理解も得ながら、グラウンドでも家の中でもドリブルを磨いている。

 いくつかの選択肢の中から、東海大高輪台を選んだのは指揮官の言葉が大きかった。「高輪台と試合をした時に、川島先生の話が良かったのと、サッカーのイメージが良かったので決めました。川島先生には『オマエのプレーだったら、ドリブルとかパスを生かせるから、ウチで活躍できるし、もっとドリブルしていい』みたいに言われて、入ってみたらやっぱり良いチームで正解でした。トップチームでやらせてもらっているので、周りの環境も凄く良いですし、中学校の時よりは上手くなった気がします」。

 ここから進んでいきたい道も、明確にイメージはできている。「参考にしているのはイニエスタ選手やフロンターレの大島僚太選手です。自分では高校を卒業してプロに行くのが目標なんですけど、そのためにはまずプロはミスの少なさとか、シュートの決定力とかが違うと思うので、まずはミスを少なくすることを意識しています。今はサッカー、メッチャ楽しいです」。

 豊かな人間性と確かなテクニックを追求し続け、都内でも独自の存在感を築き上げてきた東海大高輪台。このチームだからこそ育ってくるような“究極のサッカー小僧”が、また新たに登場してきた。

(取材・文 土屋雅史)

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