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[MOM3580]國學院久我山MF加藤圭裕(3年)_あるいはチームのラストピース。新センターフォワードがいきなり2ゴール!

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MF加藤圭裕はセンターフォワード起用でいきなり2ゴール!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.23 高円宮杯東京1部リーグ第2節 堀越 1-6 國學院久我山高]

 まだこのポジションにトライして2か月ぐらいとは思えないような“様になっている”雰囲気が、そもそも兼ね備えていた適正すら感じさせる。その上、このポジションで初めて臨んだ公式戦で2ゴールを決めてしまうのだから、末恐ろしい。

「中盤の時と違って、フォワードは点を決めないといけないポジションですし、今日もたぶん試されていたと思うので、しっかり毎回点を獲れるぐらいの力を付けていきたいです」。インサイドハーフからセンターフォワードへ。國學院久我山高の新たな点取り屋。MF加藤圭裕(3年=東京ヴェルディジュニアユース出身)。新境地開拓中。

「今年の夏合宿ぐらいからやり始めました。中盤での守備が下手だったからですかね(笑)。前線で収めることは言われてますけど、あとは結構自由にやっています」と笑う8番が、見慣れない最前線に立っている。お互いに選手権も見据えながら、目の前の勝負にもこだわりたい堀越高と対峙したT1リーグ。インサイドハーフが主戦場だった加藤は、センターフォワードの位置に解き放たれる。

 そんな“新参者”がいきなり結果を出してしまう。前半4分。加藤と入れ替わるように、本来のセンターフォワードからインサイドハーフにコンバートされたFW小松譲治(3年)のシュートは、相手GKにキャッチされた……はずだった。だが、ここで加藤の嗅覚が作動する。

「譲治がシュートを打ったあとに、『もしかしたらこぼすかな』と思って一応走っておいたら、本当にこぼしてくれたので、そこを詰めた感じでした」。堀越の選手も既に目を切っていたようなシーンでも諦めずに走り、こぼれてきたボールを加藤はそのままプッシュ。キックオフから5分と経たないうちに、いきなりフォワード起用に結果で応えてみせる。

 これだけでは終わらない。19分。中盤アンカーのMF飯塚弘大(3年)が丁寧なスルーパスを繰り出すと、反応した加藤はGKと1対1のシーンを迎える。「センターバックが後ろから来ていたんですけど、その力をうまく利用して前を向けましたし、1対1はシンプルに打ちました」。右足で蹴り込んだボールは、左スミのゴールネットへ突き刺さる。早くも自身2ゴール目を叩き出し、チームメイトの祝福に笑顔を浮かべた。

 以降もチャンスメイクに、フィニッシュワークに奮闘。小松も「アイツがあんなに収められるとは思っていなかったんですけど(笑)、紅白戦のセカンドチームの方で加藤がフォワードで出ている時も、何回もトップチームがやられていたので、試してみてほしいなとは思っていました。自分もやりやすかったですし、上手い選手とやるのは楽しいですね」と加藤のフォワード起用に手応えを掴んでいる様子。周囲を輝かせる術も持っていることが、チームの幅をより広げていくことにも直結するのは、疑いようがない。

 ポジションの変更に伴い、参考にする選手も当然変わってきたという。「今まではデ・ヨングとかデ・ブライネとかを見ていたんですけど、結構いろいろな選手を満遍なく見ている中で、自分とタイプは違いますけどレバンドフスキも見ますし、昨日は上田綺世選手を見ました!」。いわゆるストライカータイプのプレーをチェックすることで、本来得意とする“デ・ブライネ的”な要素に、“上田綺世的”な要素をプラスするハイブリッド版のフォワード像を自身の中で膨らませている。

 ブレない軸を持つこともフォワードに大事な要素。「久我山はバスサッカーだと思うので、時には自分で行くことも大事ですけど、どんどん味方を使って、パスワークで相手を崩せたらいいのかなと思います」と口にする加藤も、このチームで自分が最前線に立つことの意味を、もうハッキリと理解している。良い攻撃の仕留め役。仕留められれば勝てるし、仕留められなければ負ける。このぐらいの責任感を背負った方が、きっとプレーにもポジティブな影響がもたらされるはずだ。

「インターハイ予選はベスト8で負けて、凄く悔しい想いをしましたし、リーグ戦もあまり順位も高くない一方で、選手権は何があるかわからないと思うので、しっかり勝つべくして勝てるようにここからもどんどん成長していきたいですし、チームとしてはもちろん優勝して全国に出るというのが目標で、個人としてはフォワードで出るとしたらチームを勝たせる点を獲ることと、うまく味方を活用しながら、久我山らしいサッカーができればなと思います」。

 意外なコンバートがチームにもたらした大きなプラス材料。あるいは國學院久我山のラストピース。センターフォワードを託された加藤の“得点感覚”が、再びチームに確かな歓喜を連れてくる日はきっと来るはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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