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少しずつ「タフになってきた」。プリンス九州2位の日章学園が0-2から熊本ユースに逆転勝ち!

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後半37分、FW木脇蓮苑主将(10番)の決勝点を喜ぶ日章学園高イレブン

[9.23 高円宮杯プリンスリーグ九州第5節 熊本ユース 2-3 日章学園高]

 インターハイで学んだ日章学園が、プリンスリーグの連勝を4へ伸ばす――。高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 九州は23日、延期されていた第5節のロアッソ熊本ユース(熊本)対日章学園高(宮崎)戦を行い、暫定2位の日章学園が3-2で逆転勝ち。連勝を4へ伸ばした日章学園は、消化試合こそ2試合多いものの、勝ち点21で首位・神村学園高(鹿児島)と並んだ。

 日章学園は今夏のインターハイでU-20日本代表候補CBチェイス・アンリ(3年)擁する尚志高(福島)と鹿島学園高(茨城)を下し、ベスト16。3回戦で同大会準優勝の米子北高(鳥取)にPK戦で敗れた。原啓太監督は「三者三様のチームとやれて、一つだけ言えるのはタフさや強さの部分は、僕らは足りなかった。勉強になりました」。練習から意識して取り組んでいるものの、米子北の連続性や強度にはまだ及ばない。それでも、この日は0-2から逞しく、逆転勝ちをしてのけた。

 序盤、現在8位・熊本ユースが攻勢に試合を進める。開始直後の1分、右スローインからMF志賀寛大(3年)が仕掛けて中央へ折り返す。そして、PAのFW城洸佑(2年)がゴールを背にした状態から、浮き球を右足アウトに引っ掛ける形でシュート。これがGKの頭上を越えてゴールへ吸い込まれた。

 ボールを握りながら前進しようとする熊本ユースに対し、日章学園は準備してきた前線からのプレスで対抗。守りを安定させた一方、攻撃に転じた直後に細かなミスが出たり、セカンドボールの回収を許したりするなど主導権を握ることができない。迎えた23分、熊本ユースはこの日左FWとして起用され、縦突破などを見せていたMF谷山湧人主将(3年、トップチーム昇格内定)の右CKに右SB山下凜太郎(2年)が飛び込み、ヘディング弾。2-0とリードを広げた。

 日章学園はインターハイ後に前線へ抜擢されているFW田上遼馬(1年)とFW葭岡遥来(3年)へ素早くボールを入れながら反撃。相手CB渡邉暖仁(3年)らに跳ね返されていた一方、泥臭くボールを収めるシーンも多かった。0-2とされてからは落ち着いてボールを繋ぎ、俊足SB蔵屋明徹(2年)が連続でのスプリントから右クロスを上げるなど外からの攻撃も増やして反撃する。

 熊本ユースはU-18日本代表候補GK廣田公明(3年)がクロスへの対応力の良さを発揮するなど2-0のまま試合を進めるが、日章学園は36分、高い位置でのインターセプトから葭岡が左クロス。これを田上がニアで合わせて1点差とした。

 後半、日章学園が立ち上がりから押し込む。3分には中央から葭岡、MF橋天飛磨(3年)とショートパスを連続で繋ぎ、最後はMF前田聖七(3年)が抜け出すが、熊本ユースGK廣田が1対1をストップ。逆に熊本ユースは7分、左サイドからショートパスで逆サイドへ展開し、志賀の右足シュートがクロスバーを叩く。だが10分、熊本ユースは相手FK後の攻防で連係ミス。オウンゴールで2-2となった。

 2点差を追いついた日章学園は、高い位置でのボール奪取からMF金川羅彌(2年)の展開や、左SH挑戦中のFW木脇蓮苑主将(3年)の仕掛け、クロスでゴール前のシーンを作り出す。対する熊本ユースは後半も中盤が良い形で前を向くシーンが多く、MF原田樹行(2年)やMF最上龍聖(3年)が最後の局面の崩しに絡む。

 そして31分には、右クロスからファーのMF平田亘(2年)が決定的な右足シュート。だが、日章学園GK後藤大輝(3年)が足でストップする。守護神や「タフに守ることができる。良くなってきた」(原監督)というCB片井野皐史(3年)、そしてCB工藤珠凜(2年)らDF陣の好守で3点目を許さなかった日章学園が、エースの一撃で勝ち越した。

 後半37分、日章学園は田上と交代出場FW石崎祥摩(2年)が前線で粘り、左中間の木脇へ。ドリブルで仕掛けた木脇が切り返しから右足を振り抜くと、ニアを突いた一撃がGKの手を弾いてゴールを破る。「(公式戦で)先制点を取られて追いかける試合が半年ぶりくらい。それを経験できたのは良かった」(原監督)という展開で追いつき、勝ち切った日章学園が優勝争いへ大きな勝ち点3を獲得した。

 熊本ユースは流れ良く試合に入ったが、DF陣が対応しながらもシュートを打たせてしまったほか、声の不足、そして勝負どころでの決定力や個の力が差に。中山貴夫監督は「厳しい経験をしているかどうか」や「勝敗の際の部分」について指摘し、「(全国大会の経験など浅いが)日常のトレーニングの中でも(もっと)厳しさを作り出せれば。日常がそういうところにあれば対策もできる」と選手たちに求めていた。

 勝った日章学園は、原監督就任2年目でプリンスリーグ九州優勝争い。「良いプレーもジャッジして、悪いプレーもジャッジする」ことを心がけながら、褒めることと厳しさの両方で選手、チームを成長させている。「(インターハイで学び、)少しずつタフにはなってきたかなと思います」と指揮官。プリンスリーグ再開後、福岡U-18、熊本ユースに連勝したチームは勝ちながら、伝統的な連動性高い崩しや、タフさ、連続性をよりレベルアップさせて、「プリンスでも選手権でも負け無しで、最後日本一を取りたい」(木脇)という目標に挑戦する。
 
(取材・文 吉田太郎)
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