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[MOM3585]星稜MF戸川期雄(3年)_走って、戦えるサイドアタッカー。右の主導権は誰にも渡さない

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星稜高に推進力をもたらす“右の槍”、MF戸川期雄

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.26 高円宮杯プリンスリーグ北信越第7節 帝京長岡高 0-0 星稜高 長岡ニュータウン運動公園]

 右サイドは自分のステージ。このエリアでは誰にも負けるつもりはない。ボールを受けたら前へ、前へ。自らが生み出す推進力が勝敗にもたらす影響も、もちろん熟知している。

「自分の特徴はスピードと攻守における運動量で、ゴールに関わって勝利に導いていける選手というところです。インターハイでは本当に良い経験ができたなと思いますし、そこで満足してはいけないんですけど、1回そういう経験ができたことで、選手権ではそれよりもっと上へという目標ができました」。星稜高(石川)が誇る“右の槍”。MF戸川期雄(3年=坂井フェニックスSC出身)の突破力が、このチームの大きな武器であることは間違いない。

 インターハイ後は初めての公式戦となった、23日のプリンスリーグ北信越第6節。星稜はカターレ富山U-18(富山)に0-1で敗れ、痛い黒星を突き付けられる。「前回の試合のカターレ戦が、自分たちの特徴である元気にサッカーして、サイドから攻めるということがあまりできていなかったので、そういう部分を反省して、今日のゲームではしっかり生かしていきたいなと思っていました」と戸川。改めてねじを巻きなおし、中2日で新潟へ乗り込んできた。

 テクニカルなサッカーに特徴を持つ帝京長岡高(新潟)との一戦は、「身体も結構動いていましたし、サイドの主導権はしっかり取れてできたかなと思います」と戸川も振り返ったように、得意のサイドアタックも機能。右の戸川、左のDF黒田大翔(3年)と両翼の躍動感が、攻撃のアクセントを生み出していく。

 絶好の先制機は前半24分。左サイドを黒田が縦へと仕掛け、素晴らしいクロスを中央へ。このポイントへ戸川が走り込む。「いつもだったら決めているんですけど……。クロスに“アザー”が逆サイドからしっかり入ってくるという練習をずっとしていて、その形は良かったんですけど、最後の詰めが甘かったですね。良いボールが上がってきたのに、やっちゃいました。もう『来た~!』と思いましたし、『入った!』と思って頭を振ったら、『終わった……』と(笑)」。渾身のヘディングはクロスバーを直撃。得点には至らない。

 試合は結局スコアレスドロー。「やっぱりチームでの得点がなかったので、そこをもっともっと追求していきたいなと思います」と決定機逸は反省しつつ、「今日の手応えは自分なりに高い方だと思います。サイドが空いていると自分の持ち味の運動量とスピードが出るので、やっぱりサイドのポジションはやりやすいかなと感じますね」とも。確かに戸川の前にスペースを与えてしまうと、対峙した相手はチャンスを作り出されることを覚悟しないといけないだろう。

 自らの地元に当たる福井で開催されたインターハイでは、米子北高(鳥取)に準決勝で後半アディショナルタイムに追い付きながら、直後に勝ち越しゴールを許し、1-2で敗戦。悔しさとともに得難い経験値を手に入れた。「やっぱり感じたのは全国との差ですね。自分たちはラストプレーで米子北に決勝点を決められて、ああいう1つ1つの精度の違いという部分が感じられたので、良かったかなと思います」。

「決勝も見ましたけど、やっぱり悔しかったです。『自分たちだったらもっとできたかな』という部分もありましたし、あの試合から学べる部分もたくさんあったので、そういう想いを選手権にすべてぶつけたいと思います」。肌で感じた全国のレベルを基準に、日々のトレーニングを全力でこなしていく。

 特徴がはっきりしているだけに、参考にしている選手もうなずける人選だ。「海外で言うとアザール選手やヴィニシウス選手が好きで、動画を見たりしています。2人とも一瞬のスピードとドリブルが持ち味なので、緩急の付け方とか、どういうところで仕掛けるのかとか、技術の部分を見ていますね」。とにかく最優先はドリブル勝負。このこだわりは譲れない。

 目前まで迫っている選手権予選でも、やることは変わらない。「もっともっとチームの運動量を上げて、1つ1つの精度を追求して、もっとみんなで共通意識を持ってやっていきたいと考えていますし、インターハイで自分たちの立ち位置が見えたので、全国優勝という目標をしっかり掲げて、良い形で高校サッカーを終わりたいと思います」。

 いわゆる駿足ドリブラー。ただ、その枠に収まり切らない、豊富な運動量を生かした献身的なプレーも持ち味の1つ。いわば走って、戦えるサイドアタッカー。戸川の存在は星稜が狙う“インターハイ超え”という目標に到達する上でも、絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)
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