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レブロン・ジェームズの決定力に憧れて。帝京長岡FW渡辺祐人は最前線で明らかな異彩を放つ

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帝京長岡高のザ・ストライカー、FW渡辺祐人

[9.26 高円宮杯プリンスリーグ北信越第7節 帝京長岡高 0-0 星稜高 長岡ニュータウン運動公園]

 この技巧派集団の中では、明らかに異質な存在であることは疑いようがない。だからこそ、その特徴が十全に生かされれば、一気に爆発的な化学反応が起きるはずだ。

「もう自分がやることは点を獲ることですね。今までは全然点を獲れていないですし、自分が出ているということは出られない人もいるので、そういう仲間たちのために、自分が点を獲って、チームを勝たせないといけないと思います」。自分がやることは、点を獲ること。帝京長岡高(新潟)の秘密兵器にして、ゴリゴリのストライカー。FW渡辺祐人(3年=FC多摩ジュニアユース出身)が覚醒する日を、チームのみんなが待ち望んでいる。

「勝てる試合でしたね。自分の責任です。自分がチャンスを決めていれば、普通に勝てた試合だったと思います」。いきなり自責の念が口を衝く。リーグ戦5連勝を目指して臨んだ、星稜高(石川)とのプリンスリーグ北信越第7節。フォワードの一角としてスタメン起用された渡辺は、スコアレスドローの責任を自身のプレーに求めていた。

 確かにチャンスはあった。前半5分にはカウンターからMF岡村空(2年)のパスを引き出し、枠内へシュートを打ち込んだものの、相手GKのセーブに遭う。後半3分、8分とどちらも2トップを組んだFW三宅凌太郎(3年)からのラストパスを受け、フィニッシュまで持ち込むも得点は奪えない。そして、21分は決定機。岡村の右CKにヘディングで合わせたボールはゴールへ向かうも、クロスバーを直撃。スコアボードの“0”という数字を変えるまでには至らず。「単純な実力不足です」。きっぱりと言い切る姿勢が清々しい。

 とはいえ、身体の強さを生かしたポストワークは一際目を惹く。「自分は下手ですけど、前で身体を張ることはできるので、それでチームに貢献することを考えています。両ウイングからとか、アンカーの選手が持った時に、縦で1回相手を押さえて、自分が収めることによって周囲が生きてくれればいいかなと思います」。渡辺への対応には星稜ディフェンスも明らかに手を焼いていた。

 三宅も“相棒”について、ポジティブな印象を語っている。「一緒にやっていてやりやすいですし、楽しいですね。自分がちゃんと見えていなくても、だいたいいる場所に出せば収めてくれて、そこで前を向いたりもしてくれるので、そこは今までのチームになかったところだと思いますし、攻撃のバリエーションも広がっているなと思います」。何より“今までのチームになかったところ”が重要なポイント。それこそ、渡辺がこのグループにいる大きな意義だ。

 東京から長岡に来たことで、人間的な成長を感じているという。「もう人間的に大人になりました。中学までは“クソガキ”だったんですけど、親のありがたみとか本当に分かりました。スタッフさんは全員にお世話になっていますけど、人間的な部分では健さんが一番話してくれますし、結構面倒を見てもらっています。メッチャいい人です(笑)」。チーム屈指のムードメーカーでもある川上健コーチの指導も仰ぎ、人としての幅も広げつつあるようだ。

 憧れの選手を聞くと、「サッカー選手ですか?」という逆質問が。続けた言葉にユニークな思考が滲む。「自分はあまりサッカーの試合は見ていないんですけど、NBAをメッチャ見ていて、レブロン・ジェームズが大好きですね。カッコイイですよ。もうオーラが凄いですし、絶対王者感があって、点が欲しい時に絶対決めるので、メンタルの強さに憧れますね」。レブロン・ジェームズの『点が欲しい時に絶対決める』決定力、確かに渡辺の求めるものと一致する気もしないではない。

 3年生の渡辺にとっては、最後の選手権。懸ける想いがこぼれ出る。「絶対負けたくないですし、『もっとやれば良かった』みたいな悔いは残したくないので、空いている時間は全部サッカーに費やしていきたいです。目標はもう選手権の日本一以外にはないですね」。

 プレーも、思考も、実に独特。だからこそ、一度覚醒したらきっと手が付けられない。帝京長岡の渡辺裕人。この名前、覚えておく必要がありそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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