beacon

CB、ボランチ、FWもこなす“新10番”。帝京長岡FW三宅凌太郎は目の前の勝利を追求し続ける

このエントリーをはてなブックマークに追加

帝京長岡高の新10番、FW三宅凌太郎

[9.26 高円宮杯プリンスリーグ北信越第7節 帝京長岡高 0-0 星稜高 長岡ニュータウン運動公園]

 1年前の悔しさをピッチで体感したからこそ、あの舞台に戻るための、そして超えるための道のりがどれだけ厳しいものかは、誰よりも理解している。それでも再び目指すだけの価値が、日本一という頂には間違いなくある。

「もちろんチームとしては日本一を目指していますし、去年の成績を超えないといけないというふうにトレーニングはしていますけど、1つ1つ勝ち続けないとそこには辿り着かないので、目の前の1試合を大切に、全力で戦わないといけないと思います」。2年連続で冬の全国4強を味わっている帝京長岡高(新潟)のキャプテン。FW三宅凌太郎(3年=尼崎東ミュートス出身)はどのポジションを任されようとも、100パーセントで自らに課せられたタスクを完遂してみせる。

「この前のウインドーで変わって、これで2試合目ですね。しっくりは来ていないけど、嬉しいです。でも、帝京長岡に来て、10番を付けるような選手になるとは思っていなかったです(笑)」。星稜高(石川)と対峙したプリンスリーグ北信越の一戦。三宅の背中には見慣れない10番が躍る。

 元アルゼンチン代表のハビエル・マスチェラーノに憧れているように、もともとはセンターバックやボランチが主戦場。昨年度の選手権でも守備的なポジションを担い、全国4強進出に大きく貢献したが、今シーズンはリーグ序盤で何試合かフォワードで起用されると、夏前からは本格的に前線でプレーする機会が増加。「小学校の頃は自分もフォワードでしたし、点を獲れている状態なので、そこは楽しいなとは思いますね」と前向きに新たな背番号とポジションを楽しんでいる。

 実際にリーグ戦ではここまで6ゴールと、チームトップの得点数を記録。「徐々に自分の中でもできることが増えてきて。今はそれなりにチームに貢献できるようにはなったなと。やっぱりディフェンスラインや中盤の選手は息も上がってキツい状況の時も結構あると思うので、そういう時は前にいる自分たちがしっかりチームを鼓舞して、アバウトなボールもしっかり収めて、相手のリズムを切れるようなプレーができるようにとは思っています」。フォワードとしてやるべきことも整理されてきた。

 この日の2トップを組んだ相棒、FW渡辺裕人(3年)との連携もスムーズ。「アイツは“ザ・ストライカー”という感じで、自分もそこは凄く頼りにしているので、自分は陰ではないですけど、アイツを立てられればチームのためにもなるのかなと思いますし、良い形で点を獲ってもらえるようにプレーできればなと思います」という言葉通り、何度も渡辺のシュートチャンスを演出するなど、チームの攻撃を牽引したが、結果は無得点でのドロー。「チャンスもピンチも両方多かったゲームだったんですけど、勝負所で決め切れるチームにならないといけないですね」と悔しさを滲ませた。

 インターハイ予選は準決勝で、結果的に優勝した開志学園JSC高に敗れたが、この負けはチームの覚悟を問い直す上で、重要な1試合になったという。「やっぱり『新潟県を勝ち抜けることは簡単じゃない』と再確認させてもらえた大会ですし、この選手権直前という状況でも、県大会から負ける可能性もあることはわかっていると思うので、そこの緊張感は出ていると思いますけど、もう残りは選手権しかないので、前に進んでいくしかないのかなとは考えています」。

 帝京長岡らしいサッカーは、少しずつできてきている。だが、それだけでは足りないことも、過去の経験から三宅は感じ取っている。「上手く行かないゲームもあると思うんですけど、そこでどんな形であれ、勝てるようなチームになっていかないと上には行けないと思いますし、良いサッカーをしていても勝たないと意味がないので、泥臭い1点を獲ってでも、ゲームに勝ち切れるという力を加えていきたいです」。

 泥臭い1点が、きっと最後に勝敗を左右する。そのことを知る“10番のフォワード”が最前線にいる意味は、日本一を目指す今年の帝京長岡にとって決して小さくない。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プリンスリーグ2021特集

TOP