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[関東]早稲田大MF西堂久俊が3年生でFC東京入りを決めたワケ「大学生生活をより実りのあるものに」

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2アシストを記録した西堂。右足を使えることも魅力のひとつだ。

[10.2 関東大学L1部第18節 早稲田大4-3桐蔭横浜大 龍ケ崎フィールド]

 早稲田大のMF西堂久俊(3年=市立船橋高)が、23シーズンのFC東京への入団内定を発表した翌日の桐蔭横浜大戦に先発出場した。

 特別な意識を持って臨んでいたわけではないというが、「自分も最初、ヤバいなと思った」と振り返るほど、固い入りになってしまった。それでも前半30分の主将MF田中雄大(4年=桐光学園高)の先制弾をアシストすると、2-3と追い上げて迎えた後半26分、右サイドからのピンポイントクロスで再び田中のダイレクトボレー弾を演出。2アシストの活躍で劇的な大逆転勝利を呼び込んでみせた。

「(同点弾のアシストの場面は右サイドでしたが)相手は左足を警戒してくると思った。そのおかげでだいぶ縦が開いていたので、あとはシンプルに中を信じて上げただけです。あの形が一番抜きやすい。得意というか武器として僕の中で持っている形です」

 市立船橋高、早稲田大とアマチュアサッカー界の王道を歩む西堂。祖父の就さん(故人)は習志野高を率いて2度の全国選手権優勝に導いた名将というサラブレッドでもある。

 高校時代にもU-16日本代表に選ばれた実績を持っているが、評価を高めたのは大学進学後だ。高校時代にプレーしたFWからサイドに転向。入学直後から試合出場を続けたが、昨冬のアタリマエニカップ、そして関東選抜Aの一員として参加した今春のデンソーカップチャレンジでみせたパフォーマンスは周囲の評価を不動のものにした。

 ただシーズンが始まると、リーグ第3節の慶應義塾大戦で左足靭帯損傷と骨挫傷を悪化させた影響で長期のリハビリ期間に入った。特に骨挫傷の痛みがなかなか取れなかった。それでも負傷箇所周辺に筋肉をつけることで改善を試み、夏にようやくプレーできるまでのコンディションに戻した。並行して見直した体づくりで、1、2キロの増量にも成功したという。

 春からすでに進路が注目されていた。今春にはヴィッセル神戸と京都サンガF.C.のキャンプに参加。そして4月にFC東京の練習に参加すると、怪我が癒えた8月にはFC東京のほかに清水エスパルス、柏レイソル、京都といった複数クラブの練習に参加し、将来を見極めてきた。清水の練習に参加した際は高校の先輩・原輝綺や後輩・鈴木唯人と進路についての話をする機会もあったようだ。

 FC東京からは5月にはすでに獲得オファーが届いていたが、その時点では他クラブの関心も伝えられていたことで、じっくりと判断しようと考えた。しかし怪我から復帰直後の8月、そして9月にも練習参加を引き受けてくれるなど、FC東京が示してくれた熱意に心は固まっていった。

「東京と京都は正式オファーを貰っていました。その時は怪我から復帰してからいくつかのクラブに参加させてもらったあとで決めたいと思っていました。でもクラブの熱意もそうですし、自分がどこに身を置いたら一番成長できるかというのを考えたときに東京さんがベストだと思った。あとはなるべく早くチャンスがあるならJの舞台を経験して、大学生生活をより高いところに基準を置きたかった。実りのあるものにできればと思って、決断に至りました」

 今後はプロ内定選手としてプレーの質にこだわっていく。この日の試合に関しては「意識せずにということを意識しちゃっていた」と苦笑いで振り返るも、そんな中で結果を残すあたりは流石のポテンシャルの高さを示した。「そこまでプレッシャーに感じず、ネガティブにならずにいい意味で変わらずにやっていきたい」。プロ内定選手がこれから1年半をプレーするという意味。進化の途上にある“ア式のマフレズ”が、大学サッカー界の価値を高める。

(取材・文 児玉幸洋)
●第95回関東大学L特集

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