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太陽王子の9番、復活間近。柏U-18FW真家英嵩はゴールで自分の価値を示してみせる

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柏レイソルU-18の9番を背負うFW真家英嵩

[10.2 プレミアリーグEAST第13節 流通経済大柏高 1-1 柏U-18 流経柏G]

  “復活”だなんて微塵も思っていない。まだ“復帰”しただけ。ここから到達すべき地点は、遥か先に見据えている。

 「プレミアはあと残り9試合だと思うんですけど、自分の価値を示すのは得点しかないので、残り9試合で毎試合ゴールを決めないといけないと思いますし、今日みたいなゲームも絶対に来ると思うので、そういう時に一発を持っている選手じゃないと、この先もやっていけないですし、そういうところを意識してやっていきたいです」。柏レイソルU-18(千葉)のエースストライカー。FW真家英嵩(3年=柏レイソルU-15出身)は“復活”のさらに先を目指して、再びピッチに立ち続けている。

 チームにとっては実に3か月ぶりとなる公式戦。プレミアリーグEAST第13節で実現した“柏ダービー”は、スコアこそ1-1だったものの、流通経済大柏高(千葉)の圧力に攻撃の時間はなかなか作れなかった。最前線で味方のパスを待つ真家にも、良い形のボールは届かない。

「相手が気持ち良くプレーしていて、センターバックも結構前へ、前へ、という感じになっていて、取った後の裏というのは相手もそんなに警戒していなかったと思うので、取ってすぐ裏だったり、前に付けてみんな押し上げてカウンターというのを意識していたんですけど、なかなか良い形はなかったです」。明確な狙いは持っていたものの、そのイメージを具現化するまでには至らず、もどかしい90分間を過ごすことになる。

 ただ、FW山本桜大(2年)の先制ゴールは、真家の献身的な守備から生まれている。「キーパーがボールを置く位置が結構足元に近くて、すぐに蹴れる状態じゃなかったですし、相手も油断していたと思うので、自分は最初ゆっくり寄せていたんですけど、一気にスピードを上げました」。相手GKにプレスを掛けると、真家に当たったキックが山本の足元へ。美しい軌道を描いたループシュートがゴールへ弾み込む。“相棒”においしいところをさらわれたが、今の真家にとって課題でもある守備のタスクをこなしてのゴールには、価値があったこともまた確かだ。

 既に1年時からプレミアリーグに出場。年間王者に輝いた青森山田高(青森)からゴールを奪うなど、大きな期待を集めてきた中で、昨年の夏に大ケガを負ってしまう。「自分が考えていたことは、復帰した後にどう自分を示すかというところで、とにかく良いイメージだけをして、この先で暴れるために何をするかということを考えていたのと、とにかく身体を大きくすることを考えていて、ウエイトだったりバランストレーニングを中心に取り組んでいました」。

 長いリハビリを経て、6月27日のプレミアリーグEAST第8節・青森山田戦で復帰を果たすと、いきなり2ゴールを叩き込み、そこまで7連勝で首位を走っていた相手に土を付けてみせる。だが、本人の手応えはまだまだだったようだ。

「2点決めたと言えば決めたんですけど、その他では特に何もやっていないので。復帰戦で決められたことは自信にもなりましたけど、本当に運の良いところに2本来たなという感じです。その他のところになると全然ダメで、プレー面ではもっと改善しないとなという感じでした」。得点を決めることは、ある意味で当たり前。攻守にフルパワーで戦えて、初めて“復活”という言葉が当てはまる。

「彼も復帰して3か月ぐらいなんですけど、まだ身体のキレがそこまで戻ってきていないと思います。攻撃はそれなりに関わっているんですけど、そこに守備もして90分というところには到達していないので、ちょっとずつコンディションが上がってきているところなんですよね。彼がやってくれないとチームの結果が左右されるので」とは酒井直樹監督。自身もそのことは重々理解している。

「自分は攻撃が好きで、つい攻撃のことばかり考えてしまうので、そこで結構相手のビルドアップのところで簡単に外されて前に行かれたりというところが今日の試合も何回もあって、そういう献身性も必要ですし、前から奪えば逆にもっと攻撃もできるので、もっと前から行くというところだったり、ポジショニングだったりを味方と連動させて、もっと走れればなと思います」。

「ケガが明けてから、そんなに試合をこなせていないですし、試合勘や空気感にまだ適応できていないというか、前にはまだ戻り切れていないというのはあると思うので、そこは試合を重ねていくしかないと思います」。逆説的に言うならば、試合を重ねていくごとに、やれる自信は必ず付いてくる。

 レイソルの9番を背負うからには、その存在意義はゴールで証明するしかない。まだまだその価値を示すだけの時間は、“復活”だと自ら認めるための時間は、真家のこれからに十分残されている。

(取材・文 土屋雅史)
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