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“喝”を入れられる生粋のリーダー。柏U-18DF大和優槻の沸々と湧き上がるキャプテンシー

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柏レイソルU-18のキャプテン、DF大和優槻

[10.2 プレミアリーグEAST第13節 流通経済大柏高 1-1 柏U-18 流経柏G]

 帰ってきたキャプテンの“声”が、ピッチ上に響き渡る。「自分の特徴でもあるコーチングのところでは、やっぱり周りの集中力が切れた時に、自分が一声“喝”を入れることによって、士気も上がりますし、そういうことは意識しています」。柏レイソルU-18(千葉)の闘将。DF大和優槻(3年=柏レイソルU-15出身)のリーダーシップが、このグループを1つに束ねていることは間違いない。

 流通経済大柏高(千葉)と対峙したゲームは、相手の2トップが展開したハイプレスに苦しめられる。「サイドに付けるボールとか、もうドンピシャでプレスに来たのでディフェンスもハマりましたし、その中でも自分たちが持っているポゼッションサッカーを出せないといけないですよね」。それでも簡単に蹴り出さないように意識している様子は、大和のプレーから窺えた。

「自分は右に(伊達)由太嘉がいて、その前に(モハマド)ファルザン(佐名)がいて、もう少し周りの人たちで連携を取りながらやりたかったですね。少し距離が遠かったので、相手のプレッシャーが速い中でも開放できるパスラインをどんどん作っていかないと、この先もやっていけないと思います」。とりわけ右CBの大和と、右WBの伊達由太嘉のビルドアップには工夫の跡が。追い込まれてもそこから繋いでいく意志と実行力は、チームの中でも際立っていたと言っていいだろう。

 肝心の守備でも、最後の局面では身体を投げ出すことも厭わず、相手に突っ込んでいくことも多々。後半終盤には相手の鋭いドリブルにも、半身をねじ込んでそのまま体勢を入れ替える絶妙のカバーリングでゴールキックに。直後に「ウォー!」と叫ぶ姿に、“守備者”としての矜持を滲ませた。

 攻撃への関わり方には、まだまだ成長の余地がある。とりわけ3バックで最終ラインを構成しているため、機を見たオーバーラップやビルドアップ時の立ち位置のバランス感覚は、チームにとっても必要不可欠。その上で酒井直樹監督は、良い意味でそれぞれの判断にプレー選択を委ねている。

「自分たちは1本のパスというところを狙ってやっていたんですけど、もしかしたら自分がフリーでドリブルした方が良かったかもしれないですし、それも100パーセントではないですし、パス以外の選択肢は今後見つけていかないといけないのかなと思います」。縦パスで刺すのも、フリーでドリブルするのも、センターバックだからできる役割だが、攻撃への意欲は明らか。自分でゴールも奪いたいという意志も携えている。

 今シーズンは中学校1年生以来のキャプテンに就任。アカデミーラストイヤーということもあり、気合を入れていた矢先に手首を骨折してしまう。プレミアリーグ開幕にも間に合わず、春先からしばらくはピッチで躍動するチームメイトを見つめることしかできなかった。

「仲間が戦っている姿を見るのは『頑張ってほしい』と思う反面、悔しい部分もあって、自分が復帰したら少しでもチームの力になれるようにというところで、もう切り替えようと。自分の出番が回ってきた時に、チームに100パーセントの力を注げるようにという気持ちでやってきました」。

 支えになったのは“リハビリ仲間”の存在だ。「真家(英嵩)もその時にはケガをしていて、真家の方が自分よりもケガで苦しんでいた期間は長いんですけど、彼のリハビリに対する姿勢は自分の力にもなりましたし、あとはやっぱりみんながピッチ内で自分を表現している姿というのは、凄く自分の力になりました」。2人とも夏前には戦列復帰。プレミアリーグEAST第8節では無敗の首位・青森山田高(青森)撃破を攻守で支えるなど、お互いに自らの復帰をチームへパワーとして還元できるように、努力を積み重ねてきた。

 最近は日本代表の選手と、レイソルのトップチームの選手から刺激を受けているという。「自分は板倉(滉)選手を参考にしていて、身長も同じぐらいですし、体重はちょっと違うんですけど(笑)、デュエルの部分だったり空中戦の高さは見習っています。あとは前にトップチームと練習試合をやった時に、大南(拓磨)選手のスライドの速さとか、自分でサイドに出して、全力で駆け上がっていくところとか、そういうスプリント能力は見習いたいなと思いました」。守れるのは当たり前。走って、攻めるセンターバックへ。小さくまとまるつもりなんてない。

 小学校4年生から9年間に渡って袖を通してきた黄色いユニフォームを着るのも、いったんは今年が最後。秘めてきた想いがあふれる。「まずは柏レイソルに恩返しをするというのが一番のところですし、もしかしたらこのレイソルのエンブレムを付けて戦うのは最後の年かもしれないので、悔いは残さず、最後はみんな笑顔で戦い終われるように頑張りたいと思います」。

 最高の仲間と、最高の時間を。そのためだったら、大声だって出し続ける。燃える男。大和が飛ばしている“喝”は、いつでもチームの雰囲気を力強く引き締めている。

(取材・文 土屋雅史)
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