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難敵上等。気合一発。市立船橋DF小笠原広将は安定感とアグレッシブさを両立させる“やりたがり”

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市立船橋高のディフェンスを支えるDF小笠原広将(4番)

[10.3 プレミアリーグEAST第10節 市立船橋高 1-1 FC東京U-18 タカスポ]

 苦しい時間をその中心で過ごしてきたからこそ、わかったこともある。悩んで、もがいて、それでも前に進んできたことが、チームの輪を大きくしてきた実感は確かに掴んでいる。

「チームのまとまりは、もう練習の時から凄く全体で意識しているところで、自分たちはそんなに強く言い合うことで『やってやろう』という雰囲気になるチームではないですし、チームとして誰かの気持ちが落ちかけている時に、チーム全体で押し上げてというチームなので、そこは凄く意識しているところです」。堅守イチフナを支える最後の砦。市立船橋高(千葉)のセンターバック。DF小笠原広将(3年=アブレイズ千葉SC出身)は日に日に周囲を落ち着かせるような安定感を、纏いつつある。

「いつもと同じような感じで、自分たちが優位に進められる時間が後半はあった中で、そこで決め切れずに相手に追い付かれてという、いつもの勝負弱さのところが出た試合かなと思っています」。追い付かれての1-1。ドロー決着となったプレミアリーグEASTのFC東京U-18(東京)戦を終えて、小笠原は開口一番悔しさを滲ませる。

 ただ、攻撃には間違いなく手応えがあった。「攻撃は前よりは凄く運べるようになったかなと今日は思いましたね。ただロングボールを蹴るだけではなくて、ロングボールも混ぜつつ、縦パスを引き出して突破するシーンは少なからずあったと思うので、そこはちょっと手応えを感じています」。

 それと同時に相手との差を感じた部分もあったという。「個人的な所で『まだ相手の方がレベルが高いな』というのは感じました。相手の方が1つ予測が速いとか、ルーズボールに対しての反応が相手の方が凄く速かったりとか、そういうところを凄く感じました」。チームの中での約束事がより整理されてきたからこそ、個人の部分にも目が向くようになってきたことも、あるいはポジティブな要素ではないだろうか。

 シーズンの前半戦は結果の付いてこない日々を強いられていた。とりわけ青森山田高(青森)にアウェイで0-9という衝撃的な大敗を喫したことを、小笠原が忘れるはずがない。「やっぱりまず自分の力のなさを凄く感じましたし、プレミアリーグで自分たちの力が全然通用しないというところも痛感しました。だからこそ、負けていられない気持ちが凄く強くなったところはあるので、良い経験になったかなと思います」。

 そこからチーム全体でミーティングを重ねたことで、「チームとしてどういうふうにならなくてはいけないのか、どうあるべきなのかというところ」への意思統一を図ってきたことが、少しずつ実り始めている。「夏休み中は凄く苦しい時期だったんですけど、そこでチームがもう1回1つになれたかなというのはありますし、プレミア直前の練習試合にしても凄く良い雰囲気でできたのは大きかったので、良くなってきていると思います」。

 今シーズンはまだ得点を奪えていないが、昨シーズンのプレミアリーグ関東では唯一スタメン出場した横浜F・マリノスユース(神奈川)戦で豪快なヘディングでのゴールを叩き込むなど、センターバックとは言えども、もともと攻撃性も併せ持つのが自身のスタイル。そのこだわりも笑いながら口にする。

「ゴールはやっぱり獲りたいですね。自分は良くも悪くも“やりたがり”なところがあると思うので(笑)、今はそんなにないんですけど、中学校の頃はハーフラインからドーンとシュートを打っちゃったり、センターバックからドリブルを始めたりというのもあったので、ゴールは求めているところではあります。目立ちたいですね」。それとなく明かした“やりたがり“の一面。小笠原の“ゴール”にも注目する必要がありそうだ。

 周囲の評価は嫌でも耳に入ってくる。それでも、逆にそれを跳ね返してやろうという気概は十分過ぎるほど携えている。「やっぱり一度評価が下がってしまうと、上げるのは凄く難しいと思うので、だからこそ今日みたいな試合は勝たなくてはいけないということは凄く感じていますね。これから勝ち続けるしかないと思います」。

 難敵上等。気合一発。市立船橋の前に立ちはだかる壁は、小笠原がぶち壊す。

(取材・文 土屋雅史)
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