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イメージは常に中村俊輔。守備意識も向上中の市立船橋MF北川礁は左足に覚えあり

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市立船橋高の14番を背負うレフティ、MF北川礁

[10.3 プレミアリーグEAST第10節 市立船橋高 1-1 FC東京U-18 タカスポ]

 痩身のレフティ。左足で操る正確なキック。自身で思い描いているイメージは、もちろんあの選手だ。「憧れの選手は小さい頃からずっと中村俊輔選手です。もうフリーキックはもちろんですし、自分も体形は細い方なので、その中でもどんなプレーをしているかとかも参考にしています。特にパスの種類も凄く多く蹴り分けていますし、そういう部分を見ていますね」。

 プレミアデビュー戦での堂々たるパフォーマンス。日本が誇る左利きの才能に憧れてきたFW北川礁(2年=東急SレイエスFC出身)の攻守における存在感が、この日の市立船橋高(千葉)をキラキラと輝かせた。

「自分たちは練習からああいった“守から攻”のところを意識していて、今日も何度か後半の立ち上がりはボールを奪い切れていてチャンスになっていたんですけど、そこからの自分たちの課題でもある得点というところがまだまだ今日の試合で見えて、本当にそこで点を決められればもっと点差を付けて勝てたと思うので、本当にもったいないと思いました」。

 FC東京U-18(東京)と対峙した一戦。「今日がプレミアでは初スタメンということで、ずっと前期とかはベンチ止まりで、いろいろ感じることがありました」という14番を付けたボランチは、チームの中央で攻撃に、守備にと顔を出し続ける。

 ドイスボランチの相方はルーキーのMF太田隼剛(1年)。左利き同士という珍しいペアだが、「自分が上がったら隼剛が下がる、隼剛が上がったら自分が下がる、という連携は上手く取れていて、そこが攻撃の始まりだということは意識しました」と話す北川は、太田を上手く泳がせながら、自らもボールを引き出しつつ、攻撃へ積極的に関わっていく。

 前半42分。中央でボールを受けると、躊躇することなくドリブル開始。そのまま30メートル近く運ぶと、左足を振り切る。軌道は枠の左側へと逸れていったが、このワンプレーが直後の布石になる。

 43分。「相手が結構食い付くのは分かっていて、あそこで横にもらったらラインは剥がせるなと思って、そこのライン間で受けて、もらった位置がハーフウェーラインだったので、一瞬でパスを出すか迷ったんですけど、相手のディフェンスラインもけん制していて、ドリブルで運んで、最終的に空いた郡司を見て蹴りました」。

 ここは自身でのフィニッシュではなく、前方に走ったMF郡司璃来(1年)へ浮き球でパスを届ける。マーカーとGKともつれながらも、郡司が右足で押し込んだボールはそのままゴールネットへ到達。「アレは狙い通りだったんですけど、自分の長所でもあるシュートというところで、その前に自分のシュートが1本外れたことも踏まえてのパスだったので良かったと思います」。2分間で披露した2つのプレーで、きっちり先制点を演出してみせた。

 後半にはほとんど角度のない位置でのFKを任されると、中へ蹴るモーションからニアサイドへ蹴り込み、ゴールを直接狙う機転も。「アレは狙いましたね。この間の試合も直接コーナーを決めたり、それはファウルになっちゃったんですけど、相手のキーパーの位置も見たり、相手が思っていないようなところに蹴ることは考えています。たぶん枠を外れていたと思いますけど、アレでも1点決めればゴールなので」。この男の左足には常に警戒が必要だ。

 中学時代は東急SレイエスFCでプレー。「自分はもともと守備ができなくて、それを補わないとプロにはなれないと思ったので、良い環境でできるということと、守備の部分を強化しながらももっと攻撃の部分も活性化できるようにということで、高校サッカーならやっぱり市船だと思って入学しました」。この日の試合でも守備面で最後まで粘れる力強さも披露。着実に戦える選手へと成長を遂げつつある。

 市立船橋での大いなる一歩を踏み出した北川。ここからは自分の左足で未来を切り拓いていく。「今日をスタートにして、今の目標は日本代表に入ることです。下の学年の郡司が入ったことも刺激になりますし、自分ももっと頑張って代表に選ばれて、またチームを支えられるように頑張っていきたいです」。

 2年生で14番を背負うレフティと言えば、第78回高校選手権で日本一に輝いた市立船橋のレギュラー、本橋卓巳(現・松本山雅FC U-18監督)を想起させる。偉大過ぎる先輩たちの系譜に、この男も続けるか。北川の今後の飛躍に注目したい。

(取材・文 土屋雅史)
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