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アピール上手の1年生ボランチ。市立船橋MF太田隼剛は幼稚園の頃から憧れていた青いユニフォームで全国へ

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期待の1年生ボランチ、市立船橋高MF太田隼剛

[10.3 プレミアリーグEAST第10節 市立船橋高 1-1 FC東京U-18 タカスポ]

 「やったー!初インタビューなんです!」。無邪気にはしゃぐ1年生に、近くを通りかかった波多秀吾監督が「みなさん、コイツに騙されないでください。アピールしかしないので(笑)」と笑顔で声を掛ける。話を聞いたきっかけは本人からの逆取材オファーだったが、それだけのプレーを90分間のピッチで披露していたのも事実だ。

「試合を決められる選手になりたいですね。1年生だからってチームを引っ張らなくてもいいわけではないですし、自分が中心でやっていくぐらいの気持ちでやっていって、試合では守備でも貢献して、攻撃でも自分が点を決めるみたいな、フォワードより点を決めるぐらいでやりたいと思います」。この時代にしては珍しいぐらい積極的な16歳。市立船橋高(千葉)のレフティボランチ。MF太田隼剛(1年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)の個性は、名門の中でもキラリと光っている。

 守備の局面での強さが目を惹いた。FC東京U-18(東京)との一戦。1年生ながら、これでプレミアでは3試合続けてスタメンでピッチに送り込まれた太田は、トップ昇格内定のMF梶浦勇輝(3年)、プレミア屈指のプレーメーカーMF加藤大地(3年)を向こうに回し、真っ向からぶつかり合う。

「FC東京は中盤にプロ内定している人とか、上手い人がいたので、そこで潰して自分たちの強みでもあるカウンターに繋げたらいいなと思っていて、まずは守備から入ろうと思っていましたし、そこで奪えていたのが大きかったなと思います」。縦に速い攻撃を志向しているチームの中で、球際で強度の高い守備を心掛け、奪ったら素早く前方へボールを送っていく。

 ファイナルスコアは1-1のドローだったが、ボランチという苛烈なポジションを託されながら90分間フル出場。ただ、本人はまだまだ不満の残る内容だったという。「ゴールに関わっていくシーンがちょっと少なかったかなっていうのはあったので、もっとそれができれば“ハナマル”でしたね。もうちょっと攻撃に関わりたかったんですけど、今日は守備の場面が多かったです」。試合に出るのはあくまでもベース。さらにその先を考えられるぐらいのフェーズに入りつつある。

 波多監督もこのルーキーに期待を寄せている。「太田はそれこそ本当に生意気なんですけど(笑)、力の入れどころを知っているというか、要所を締められますね。セカンドボールの回収だったりとか、攻撃のところでも嫌なところに配球したりと。その質がまだまだ低いので、点を獲らせるとか、攻撃の最後の一手となるようなラストパスを出すというところは、まだまだこれからの課題を残していますけれども、持ち味は発揮してきているんじゃないかなと思っています」。実は太田が在籍しているクラスの担任は、この指揮官。ピッチ内外で“波多先生”と接する機会は少なくないようだ。

 青いユニフォームとは、運命的な出会いを果たしたと太田は明かす。「幼稚園の頃なんですけど、和泉(竜司)選手が出ていた四日市(中央工高)との選手権の決勝を国立に見に行って、それで『うわ、スゲー!行きてえ!』と思って、その時から決めていました。当時は小さかったので『どこのチームだろう?』とか思っていたんですけど、実際千葉にあるって聞いて、地元だし『メッチャ行きたい』って。ジュニアはレイソルで、そこから鹿島のつくばジュニアユースに行ったんですけど、どうしても市船に行きたくてここに来ました」。ゆえにチーム愛は人一倍強い。

 今のライバルは同学年で、U-16日本代表候補にも選出されているMF郡司璃来(1年)。負けず嫌いの性格が、発した言葉に滲む。「郡司が代表に選ばれて、正直『何でだよ』と思っていたんですけど、プレミア、選手権とこれからあるので、そこでアピールして、来年には代表定着だったり、チームを引っ張っていく存在になれればいいかなと思っています」。強気な発言にも、嫌味がないのはおそらく持って生まれたキャラクター。理解ある先輩たちやスタッフの元で、のびのびと成長させてもらっている様子が窺える。

 もちろん代表に選ばれるのも、チームの中心選手として認められていくのも、これからの自分次第。アピール上手の16歳。市立船橋にまた新たな才能が、すくすくと育っている。

(取材・文 土屋雅史)
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