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前橋育英MF笠柳翼が長崎内定会見。「たくさんの人に元気や勇気を与えられるような選手に」

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長崎内定の前橋育英高MF笠柳翼(中央)、長崎・竹元義幸テクニカルダイレクター(右)、前橋育英・山田耕介監督

 子供たちの憧れになり、たくさんの人に元気や勇気を与えたい――。前橋育英高(群馬)のMF笠柳翼(3年)が5日、群馬県前橋市内の同校で行われたV・ファーレン長崎入団内定記者会見に出席した。会見には笠柳のほか、長崎の竹元義幸テクニカルダイレクター、前橋育英の山田耕介監督、金子雅人校長、笠柳の両親が出席。笠柳は「プロサッカー選手としてこれから厳しい世界に入りますが、まずは人として、ファンやサポーターへの感謝を忘れず、自分の武器であるドリブルやスルーパスを生かして、子供たちに憧れを持たれるような、たくさんの人に元気や勇気を与えられるような選手になっていきたいと思います」とやや緊張の面持ちで抱負を語った。

 上州のタイガー軍団で10番を背負う笠柳は、2年生だった昨年度からトップチームでの出場機会を掴むと、今シーズンは不動のレギュラーとして躍動。「ドリブルなど得意なストロングポイントがありますので、そこは本当にすぐにでも発揮してもらいたいなと。それと、個人技に注目されがちなんですけど、サッカーインテリジェンスが高いので、周りとの関わりができるところは素晴らしいなと思います」と竹元テクニカルダイレクターが言及したように、絶対的な武器のドリブル突破はもちろん、スルーパスも含めたチャンスメイクも持ち味として披露しており、インターハイでも無回転のドライブシュートをゴールに突き刺すなど、インパクトのある活躍を続けてきた。

 長崎は1年前から笠柳の動向を注視していたという。「去年から少し情報は入っていて、今年になって本格的にスカウトの上釜(広行氏)が調査をしまして、山田先生にもいろいろとご協力をいただいて、夏に練習参加に来た瞬間に『オファーを出したいな』と私1人が思ったわけではなく、監督、コーチを含め、スタッフみんなから『欲しいね』という言葉がありました」(竹元テクニカルダイレクター)。同時に笠柳もその練習参加でチームに好印象を抱いたという。

「練習の強度が高くて、とても雰囲気が良かったのを覚えています。特に自分は高校生であるにもかかわらず、たくさんの人が自分にもコミュニケーションを取ってくれました。私生活の部分でもたくさんの選手が自分に話しかけてくれて、凄くサッカーに集中しやすかったので、長崎の選手の人柄の良さや人間性は自分も見習わなくてはいけないポイントだと思いました。サッカーの部分ではしっかりとしたパスを繋いでゴールに迫っていく、時には前に速く攻めて相手を脅かす、といったスタイルが自分には合っていると感じ、『ここからなら、さらにステップアップしていける』と思いました」。

 とりわけ、W杯も経験している大ベテランの存在は大きな刺激となった。「プレー面では玉田(圭司)選手がとても印象に残っていて、“止める、蹴る”の技術が凄く高くて、玉田選手が持つとチームがいったん落ち着いて凄くタメができますし、自分も安心して裏に走れるなと思ったので、そこは見習っていきたいです。玉田選手はポジショニングと止めることを重視していて、『トラップは大切だぞ』と言われたので、そこは日頃から意識してやっていきたいですし、サッカー選手としては『ピッチ内でもピッチ外でも日々の準備が大事』とも言われたので、そこも真似していきたいと思います」。23歳年上のレジェンドからもらったメッセージを心に刻んでいる。

 なお、高校の“先輩”もしっかりと面倒を見てくれた様子。「私生活の部分では富澤(雅也)選手や亀川(諒史)選手はわからない練習でも、練習中に教えてくれたり、食事も一緒に誘って食べてくれたりと、本当に人柄の良さを感じたので、そこは自分も見習っていきたいと思います」。ちょうど10歳年上の富澤にとっても、かわいい“後輩”の加入はやはり嬉しいようだ。

 実は山田監督は長崎県雲仙市の出身。故郷のクラブに教え子を送り出す心境をこう語っている。「僕らの時代に長崎にプロチームができるなんて考えられないことだったので。だけど、上釜さんと竹元さんと話していても、本当に壮大なスケールの大きいスタジアムの話を聞いた時は、これから必ず九州でもナンバーワン、日本でもナンバーワンになるような施設だったり、システムがあるんだなと思って、これだったら本人が力を発揮する場所として合っているなという印象を受けました」。

 続けて長崎に住むに当たってのアドバイスを問われると、「長崎市内はそんなに僕は行ったことがないので。前橋よりは都会だと思います。ただ、坂が多いですよね。でも、夜景は綺麗ですよね。あまり関係ないか(笑)。環境にいち早く慣れてくれればなと」と報道陣の笑いを誘うさすがのコメント。ただ、最後には「今日は素晴らしい意見を言っていたので、それをそのまま行動に移せればいいと思います。言うのは簡単なので、それを確実に、芯を強くして、ちゃんと表現できるようにしてくれれば、長崎でも必ず結果が出てくるかなと思います」と厳しくも愛のあるメッセージを笠柳に送った。

 この日はさすがに緊張を隠せなかったが、普段は大人ともハキハキと明るく話せる好青年。自身でも「自分は人と話すのが結構好きなので、オフの部分では人とのコミュニケーションは欠かせないかなと思いますし、明るいとも言われます」とのこと。プロサッカー選手向きの性格だとも言えそうだ。

 素晴らしい環境と、素晴らしい仲間たちに囲まれ、プロサッカー選手としての道を歩み出す日々への期待感が、言葉の端々に滲み出る。

 「自分が山田監督から一番教わったのは、どんな場面でも満足せずにどんどん上に上がるということで、常に監督がそれを示してくれたことで、自分もどんどん上に行きたいという向上心を持つことができたので、プロサッカー選手になれたと思いますし、向上心は自分の武器だと思っているので、これからはプロに行っても日々努力してやっていきたいと思います」
 
 「プロサッカー選手としては厳しい世界なんですけど、ゆくゆくは世界に出ていって、ワールドカップにも出て、日本を代表する選手になりたいですし、それが簡単ではないことは分かっているので、日々の練習からもっともっと意識を高くして、『絶対に日本代表になる』という強い気持ちを持ってやっていきたいと思います」。

 さらに上を目指す覚悟は整った。名門・前橋育英が誇るナンバー10が、いよいよプロの世界に羽ばたいていく。

(取材・文 土屋雅史)  

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