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「フットサルは“迷子になる”感覚」元日本代表・松井大輔が明かしたFリーグデビュー前日の不安と期待

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 FIFAフットサルW杯が閉幕し、いよいよ本日8日からFリーグ ディビジョン1が再開する。その初戦はY.S.C.C.横浜と湘南ベルマーレの神奈川ダービー。勝点16で3位につける湘南と、それを3差で追う4位・横浜の重要な一戦だが、最大のトピックはやはり「松井大輔のFリーグデビュー」だろう。

 “ル・マンの太陽”と呼ばれ、目の肥えたフランス人をも虜にしたクラッキの仕上がりはいかほどか。ABEMAのFリーグ中継でこの試合の実況を担当する筆者が、前日練習を取材した。

デビュー戦に向け軽めの調整


 7日、湘南とのF1再開初戦に向け、Y.S.C.C.横浜がノア・フットサルステージ横浜で練習を行った。

 前日ということもあり、この日のメニューは軽め。ウォーミングアップを行った後2人1組で対面パスを行い、その後は前田佳宏監督の指導の下、セットプレーの確認に多くの時間を割いた。

 松井もセットプレーの動きやディフェンス時の位置取り、どこを優先的に切るかといった点をチームメイトと何度もディスカッション。時折リラックスした表情を見せるなど、すでにチームに溶け込んでいる様子だ。

 2010年南アフリカW杯でも主力中の主力として活躍した、元サッカー日本代表の超大物。それでありながら誰にでもフラットに接する松井の姿勢には、キャプテンの宿本諒太も感銘を受けている。

 「世界中のいろんなチームを渡り歩いてきているというのもあると思いますが、スッとチームに入ってきてくれて。あれだけの選手なのに全然壁もないし、変なプライドが一切ない。フットサル特有の動きやチームの約束事に対しても、『今の俺、もう一歩行ったほうがいい?』『もう少し下がって受けたほうが良かった?』といった感じで、すごく真摯に取り組んでくれています」

 早く吸収しよう、フットサルに順応しようという姿勢だけでなく、松井はピッチを出ても自然体だ。練習後に談笑する姿や周りの選手たちの表情を見ても、すでにチームに大きな影響を与えている様子が見て取れる。練習後、デビュー戦を翌日に控えた松井本人に話を聞いた。

フットサルは難しい。だからこそ面白い


──いよいよ明日、Fリーグデビュー戦ですね。本格的にフットサルの練習に参加されてまだ3週間ほどですが、仕上がり具合はいかがですか?

 隔離期間が明けてすぐにABEMAさんでフットサルワールドカップの日本代表戦3試合の解説をさせていただいて、競技レベルのフットサルのイメージをしっかり持って練習に入ったんですけど、やはりなかなか難しいですね。

 フットサルの戦術にイチからトライしているなかで、覚えることも多いので。すべてを完璧にたたき込むにはもう少し時間がかかりそうです。順応するのに早くても半年とか1年くらいはかかると聞いているので、数週間で覚えられるほど甘い競技ではないなと、あらためて思います。

 でも、その難しさはやる前からわかっていたことですし、そんななかでも楽しくやらせてもらっていますね。「フットサル難しい!けど面白い!」という感じです。

──チームメイトと積極的にコミュニケーションを取るなど、すでにチームに溶け込んでいる様子が印象的でした。

 僕から質問しにいくことがほとんどですけどね(笑)。ディフェンスのやり方とか、ボール回しのときのポジショニングとか、それこそセットプレーの立ち位置とか。かなり細かい質問をすることも多いですが、フットサルだとそこをしっかりやらないとすぐにチームのリズムを崩してしまうので。

 サッカーと違うやり方が知れたりして面白いですよ。みんな優しく教えてくれるのでありがたいです(笑)。

──いま少しお話にも出ましたが、連係面の仕上がりはいかがですか?サッカーとフットサルで異なる部分も多いと思いますが。

 サッカーもそうですけど、5年くらい一緒にやっているとあうんの呼吸みたいなものが生まれてくるんですよね。今の川崎フロンターレとかもそうですけど、数年やっているとお互いの感覚やタイミングがわかってくる。サッカーでもそれなりに時間がかかる作業なので、約束事がより多いフットサルで、入って数週間で合わせるのはなかなか難しいかなとは思います。

 でもできるだけ練習の合間にコミュニケーションを取ったり、練習の前後にも話したりして、少しずつすり合わせていっている段階です。

──一緒にプレーしてみて、チームメイトの印象はいかがですか。

 みんな本当にいいやつですね(笑)。プレーの面でも、いいものをもっている選手がたくさんいるなと感じます。つっつー(堤優太)とか、ドリブルが速くてすごくいい選手だと思いますし、点も取っている(第7節を終えてチームトップの6ゴール)と聞いているので。

 彼を中心にチームを作りつつ、セカンドセット、サードセットも含めて、各セットがそれぞれの恐さを出していければおもしろいのかなと思います。

──言葉や表情からとても充実している様子が伝わってきます。

 そうですね。でも体はもうバキバキですけどね(笑)。ベトナムで3カ月間のロックダウンもあって、まったく動けていなかったので。帰国後の隔離期間を経て、3週間ほど前にようやく練習できるようになったばかりです。コンディションを少しでも早く戻さないといけないので、朝フットサルの練習をして、午後はY.S.C.C.横浜のサッカーチーム(J3)の練習にも参加して、2部練習で追い込んでいる真っ最中です。

 明日のリーグ再開初戦に照準を合わせてきたのではなく、その先を見据えてトレーニングしているので。現状、順調ではありますけど、まだベストコンディションにはほど遠いですね。

──何試合かトレーニングマッチにも出場されたそうですね。対外試合となるとチーム内の紅白戦とはまた別物だと思いますが、感触はいかがでしたか?

 やっぱりおもしろいなというのが一番でしたね。サッカーよりも対人が多くて、試合開始直後からバンバン当たるので、一気にアドレナリンが出るなと。

──昔イメージしていたフットサルとはやはり趣が違いましたか。

 あ、もう全然違いますよ!まあこれまでは遊びとか、『やべっちF.C.』の収録とかでしかプレーしたことがなかったので当然ですけどね。競技レベルのガチのフットサルは本当に難しいなと。

 サッカーでは感じたことがなかった、“迷子になる”っていう感覚がすごくあります。ボール回しをしているなかで「今どこに動くのがベストなんだろう」と。

 ABEMAのW杯中継のときも、解説の北原亘さんと実況の福田さんが「ライン間」ってよくおっしゃっていましたけど、「ライン間ってどこだ?この人たちどこのことを言ってるんだろう?」と思ったりもしていて(笑)。サッカーでもライン間はありますけど、それとはまた違うじゃないですか。パラレラで抜けるのか、ライン間で止まるのか。ライン間で受けられたとして、そこで前を向くのか、それともワンタッチで返して逆サイドに振って勝負するのかとか。あれだけ狭いコートで、そういうボール回しの基本を覚えてプレーするのは本当に大変ですし、めちゃくちゃ頭を使う競技だなと、いま身をもって実感しています。

 ディフェンスでも同様で、今はボールに寄せていいのかそれとも待ったほうがいいのか、マンツーマンでついていくのか途中で受け渡すのか、ジャンプ(パスを出された先の選手に対して二度追いするように寄せる動き)して寄せるのかとか……。「覚えることめちゃくちゃ多いな!」と(笑)。

 最初に話したように、競技レベルのフットサルはサッカーとは全くの別物だろうと思っていましたし、そんなに甘くないだろうと覚悟していましたけど、実際にやってみるとあらためて難しいなと。競技レベルはやっぱり違う。けど、だからこそ面白いなと感じています。

──難しさを感じているとのことですが、一方でフットサルは攻守のトランジションも多く、カウンターが発動する機会も多い競技です。オープンなスペースで前を向いてボールを持つチャンスがあれば、松井さんの特徴が生きる可能性も大いにあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 そうですね。オープンになれば自分の特徴であるドリブルや細かいテクニックが出せるチャンスもあると思うので、そこはぜひトライしたいですね。お客さんもたくさん入ってくれると思うので、みなさんに楽しんでもらえるように頑張りたいです。

──フットサルはスタンドとピッチの近さも魅力の一つです。Y.S.C.C.横浜のホーム・横浜武道館も、アリーナ席最前列からであればタッチラインまで約2メートル弱と三ツ沢球技場よりも近いですし、お客さんも松井選手のプレーを間近で観られるのを楽しみにしていると思います。

 そうですよね。バチバチ体をぶつけ合う回数は実はサッカーよりも多いですし、現地で観てもらえたらきっと迫力も楽しんでいただけるんじゃないですかね。うちにもいい選手がたくさんいるので、ぜひ楽しんでいってもらえたら嬉しいです。

 自分自身も楽しめるように、そしてチームとしてしっかり勝てるように頑張りたいと思います。

【松井大輔出場予定試合】

2021年10月8日(金)19:30キックオフ
Y.S.C.C.横浜 vs 湘南ベルマーレ
◆先行入場:18時00分〜(一般入場は18時30分〜)
◆会場:横浜武道館
https://budokan.buntai.jp/
◆チケット購入:
https://ysccfutsal-20211008-kanagawadervy-maeuri.peatix.com
◆無料視聴:*ABEMAで無料生中継(18:25〜LIVE放送)
視聴URL https://bit.ly/3oCh81G

(取材・文=福田悠 記事提供:SAL)

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