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“6選手緊急会談”の発起人・長友「声をかけたわけではなく…」

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 森保ジャパンにとって日本帰国後初の活動となった9日のトレーニングでは、リカバリーメニューを終えた主力6選手がピッチの脇で約10分間にわたって話し込む姿が見られた。意見交換の口火を切ったDF長友佑都(FC東京)によると、この“緊急会談”は自然発生的に生まれたものだったという。

 日本代表は7日、敵地で行われたカタールW杯アジア最終予選第3戦・サウジアラビア戦に0-1で敗れた。これで3試合を消化して1勝2敗。早くもロシアW杯最終予選10試合の敗戦数と並び、7大会連続のW杯出場に向けて崖っぷちに追い込まれた。

 それでも12日には次のオーストラリア戦が待っており、下を向いてもいられない。チームは現地時間8日未明にサウジアラビアを出発し、日本時間同日深夜に帰国。9日夕から千葉県内で合宿を行い、まさに“背水の陣”となる一戦に向けて準備をスタートさせた。

 この日の練習では、サウジアラビア戦に先発したフィールドプレーヤー10選手はリカバリーメニューのみ。それでも終了直後、長友とともに最終ラインを形成するDF吉田麻也、DF酒井宏樹、DF冨安健洋、そしてボランチのMF遠藤航とサイドハーフのMF南野拓実がピッチ脇で話し込んでいた。

 長友によれば、すでにウォーミングアップのランニング中から南野や遠藤らと攻守のポジショニングについて話し合いを続けており、「声をかけたわけではなく、自然とあのメンバーが集まった」という。会談の中心メンバーは守備陣が占めたが、内容は攻撃の起点となる自陣からのビルドアップがメイン。長友は次のように振り返った。

「普通に自分たちがセットした状態ならそうそうやられないと思うが、ボールロストしてしまって、ボールを持っている時間帯に失い方が悪く、そこからピンチになったりしている。それはどこから来ているかというと、一人一人のポジション、位置関係、距離感から。たとえば僕がボランチに入れた時に、その先がつながりきれていなかったり、一人一人がズレていたりということがある」

「またサウジアラビア戦は暑い中、守備でボールを取った後に疲弊してしまっていて、僕も含めてポジション取りがちょっと遅れてしまう状況が多々出ていた。あと自分のポジションのままボールを回していても、相手はプレッシャーをかけやすいと思う。詳しくどうするかは言えないが、一人一人ちょっとポジションを変えてみて、わざとスペースを開けたところに誰かが入ってくるとか、そういうものも出していかないと相手にとってプレッシャーをかけやすいよねという話をした」

 この“緊急会談”は、果たして苦しいチーム状況を好転させられるのか。長友は「実りがあるかは結果次第」ときっぱり述べ、サウジアラビア戦から豪州戦に向けての決意を語った。

「いまは負けているので自分たちの実力は負けたチームということで認めないといけないけど、ただ僕はこの日本代表は実力があると思う。結果がついて来なくて残念だが、必ず次の試合で結果を掴めるという強い気持ちを持って進む」。

 そこで重要なのは「信じること」だと考えている。長友は「一人一人がブレてしまうとこれからも結果は出ない。苦しい時にこれまでやってきたこと、仲間を信じて、監督・スタッフみんなを信じて戦っていく」と指摘。そうした確信は豊富な経験に裏打ちされたものだという。

「僕自身は経験として南アフリカW杯の前であったり、ロシアW杯の前であったり、チームがうまくいかなくなって雰囲気が良くない時にどういうメンタル状況で一つになって、そしてW杯に向かっていくかを経験してきた。そこでベスト16までいけたというところで、どういうメンタル状況、どういうチーム状況だと結果が出るかは自分は根拠として持っているので、チーム自体に伝えて、少しでもチームが一つになって、一丸となって、そして強い気持ちで戦っていけるように経験を伝えていきたい」。

 2010年の南アフリカ大会に始まり、14年のブラジル大会、18年のロシア大会と通算3度のW杯予選を経験してきた長友。4回目の挑戦では自身の豊富な経験も携え、試練を乗り越えていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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