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16年ぶりの全国へ機は熟した。7発大勝の成立学園は、良いチームから強いチームに

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成立学園高は7発大勝で好発進!

[10.16 選手権東京都予選Aブロック2回戦 成立学園高 7-0 駒込高]

 16年ぶりの全国へ、機は熟したと言ってもいいかもしれない。攻撃の破壊力は例年同様か、あるいはそれ以上。あとは、厳しい試合を勝ち切る“勝負強さ”が求められている。攻撃のキーマン、斎木大和の言葉がそれをよく現わしていた。「このチームは乗ったら爆発的に良い選手も多いと思うので、乗るまでが一番の課題ですけど、良いリズムを作るだけではなくて、しっかり結果を残すことが今年は大切かなと思っています」。

 16日、第100回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック2回戦で成立学園高と駒込高が対峙。MF斎木大和(3年)の4ゴールなどで大量7点を奪った成立学園が、7年連続となるベスト8進出を決めている。

「我々は初戦なので立ち上がりの入り方は難しかったですね」と五十嵐和也監督も話したように、攻勢にこそ出たものの、成立学園はややボックス付近での思い切りに欠ける序盤に。10分にはMF野口蓮(3年)のパスから、MF坂尾一汰(3年)が叩いたシュートは枠の上へ。27分にも左サイドを坂尾が崩し、グラウンダーのクロスにFW吉長由翔(3年)が合わせるも、軌道は枠外。なかなか先制点を奪えない。

 一方の駒込はスタメン11人が全員3年生。最終ラインに並んだDF村元海(3年)、DF伊東遥風(3年)、DF吉井晴大(3年)、DF田中一郎(3年)の4バックを中心に、安定した守備力を発揮。FW島村裕飛(3年)のセットプレーから相手ゴール前を脅かすシーンを作るなど、難敵に対しても粘り強く対抗していく。

 流れ始めた嫌なムードを払拭したのは、10番を背負うアタッカー。36分。左サイドを縦に運んだ坂尾がクロスを上げ切ると、斎木はダイビングヘッドを敢行。ボールは左スミのゴールネットへ飛び込む。「練習からあの形はよくやっていたので、その成果が出たかなと思っています。でも、あのヘディングは正直自分でもビックリしています」と笑った、本人も意外なヘディング弾。ようやく1点をリードすると、畳みかける成立学園。

 38分。エリア内へ単騎で運んだMF大崎日向(3年)は、飛び出したGKを外しながら左へ。ここも坂尾のクロスに、再び合わせた斎木のダイビングヘッドは右スミのゴールネットを捕獲する。「飲水明けからオープンに広げて、縦の意識を持ちながらやったら、いい形で点が獲れましたね」とは五十嵐監督。点差が2点に広がり、最初の40分間は終了した。

 解き放たれたゼブラ軍団は止まらない。後半5分。チームを支えるキャプテン、右SB山崎夏樹(3年)のピンポイントクロスに、ニアへ突っ込んだ坂尾のヘディングは右ポストを叩きながらゴールネットへ。6分。細かいパスワークから右サイドを抜け出した斎木は、飛び出したGKの上を浮かせる巧みなシュートで、ハットトリック達成。一気にリードは4点に変わった。

 吹っ切れた駒込も意地を見せる。7分には左サイドからMF中馬敦樹(3年)がクロスを放り込み、後半から登場したFW本木大登(2年)が枠へ鋭いシュートを飛ばすも、ここは成立学園のGK鈴木健太郎(2年)が超ファインセーブで応酬。直後の右CKもMF大川颯(3年)がグラウンダーで蹴り込むと、ニアでスルーされたボールをキャプテンのFW澤邊竜馬(3年)が枠内へ。DFのブロックにこそ遭ったが、デザインされたセットプレーであわやというシーンを作り出す。

 それでも失点を許さなかった成立学園は、再び終盤にラッシュ。38分。前からプレッシャーを掛けた途中出場のFW田村宇汰(3年)が相手のパスを引っ掛けると、そのまま持ち込んで5点目。40分。細かい崩しのパスを繋ぎ、田村のヒールにこちらも途中出場のMF関根伶央(3年)がきっちり決め切って6点目。40+2分。大崎のラストパスから、斎木が丁寧に沈めて7点目。「去年もそうだったんですけど、毎年苦しい展開にはなるので、初戦で雰囲気を彼らがしっかり味わって、次に向かっていけるというのは凄く大きかったと思っています」と五十嵐監督も評価を口にした成立学園が、7-0で初戦を突破。準々決勝へと駒を進めている。

 インターハイ予選では準々決勝で堀越高に0-2と、悔しい敗戦を突き付けられた成立学園。この夏で取り組んできたことを問われると、五十嵐監督は「守備ですね」と即答。「ゲームはもう守備から入るというところで、そこから自分たちでリズムを掴んで、ポールをしっかり動かしながら、攻撃では失敗を恐れずいいチャレンジをしようと。そこでも攻撃から守備の切り替えだけはしっかりやらせてきましたし、みんなが意識して取り組んでくれたかなと思います」と守備意識の向上を強調した。

「今までの成立って綺麗な形でゴールの前までは行きながら、得点を決め切れなくて、最後に1点獲られて負けるというのが多かったんですけど、守備の部分がしっかりしての攻撃なので、しっかり守備から入るのは今年やってきているところですね」とは斎木。積年の課題と向き合い、克服しようというチームの意識はこの試合からも十分に伝わってきた。

 成立学園が最後に冬の全国へ出場したのは2005年度。以降も都予選では必ず上位まで進出する確かな実力を有しながら、決勝で4度、準決勝で7度、涙を飲み続けてきた。昨年度の選手権予選をピッチで経験した斎木は、言葉に力を込める。「去年は相当悔しい想いをしましたし、準々決勝で大成に負けたことは一度も忘れたことはなくて、今年は選手権を経験していないメンバーが多いんですけど、この初戦に勝ったことで、そういうメンバーも自信が付くと思うので、しっかりこの波に乗って勝ち進んで行きたいと思います」。

 華麗なサッカーという評価は、もういらない。良いチームから、強いチームへ。成立学園は結果を愚直に追い求め、15年間に渡って味わった悔しさを、このグループとこのスタッフで晴らしてみせる。

(取材・文 土屋雅史)
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