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[MOM3601]関東一MF堀井榛人(3年)_「あの舞台にもう一回」。全国でのリベンジを期すボランチがセットプレーで3ゴールに絡む!

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関東一高の中盤を支えるボランチ、MF堀井榛人

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.16 選手権東京都予選Bブロック2回戦 狛江高 1-5 関東一高]

 危機感は、常にある。少しでも気を緩めれば、再び掴んだポジションも安泰ではない。だから、戦うしかない。去年のような想いはもう繰り返したくないから。

「前回の試合で全然ダメで、弱気になってしまって。全然ボールも拾えなくて、今週の初めの練習で凄く怒られたんです。だから、『ここは本当に頑張らなくちゃいけないな』と。『今日の試合が大事だ』と思っていたので、最低限のことはできたかなと思っています」。関東一高を支えるボランチ。MF堀井榛人(3年=CLUB ATLETICO ALEGRE出身)が勝負のゲームで躍動した。

 何よりキックが冴えていた。「ウォーミングアップの時からFKも良いコースに決まったり、今日は『ちょっとあるな』と思っていたので、うまく行って良かったです」。自ら振り返ったように、右足からの高精度キックがチームに3つのゴールをもたらす。

 1つ目は前半3分。左CKのスポットに立ち、中央を窺う。「中の動きに合わせて、蹴る前にポイントは決めていて、そこにうまく入ってくれました」。MF藤井日向(3年)の頭にドンピシャでキックを届けると、一旦シュートはDFに掻き出されたものの、MF肥田野蓮治(3年)がきっちり押し込んで先制点を挙げる。
 
 2つ目は前半39分。右サイドのCK。インスイングのボールを蹴り込み、肥田野の右足ボレーがゴールネットを鮮やかに揺らす。「アイツは左利きなので、右足を狙ってはいないですけど(笑)、そこに行けばいいなと思って蹴りました」。右足でのゴールは予想外も、落としたポイントはほぼ狙い通り。きっちりアシストを記録する、

 3つ目は後半3分。今度は左サイドで得たFK。ここも巻きながらファーまでボールを放り込むと、FW本間凛(2年)のヘディングがふわりとゴールネットへ到達する。「ファーに蹴って折り返しを狙っていたんですけど、その折り返しがたまたま入って(笑)、結果的に良かったです」。ここもアシストが付く正確なキックを披露。敵将も「セットプレーの失点が多かったですね」と言及するなど、堀井の右足がチームにリズムと得点を呼び込んだ。

 3年生になった今年のここまでは、決して順調に進んできたわけではない。「今年に入ってからは、最初は全然うまく行かなかったんです。中盤でボールを持っても、全然前に縦パスを入れられなくて、後ろ向きなプレーばかりしていて、試合にもスタメンで関われないこともあったんですけど、いろいろサイドバックとかも経験しながら、まず前を見ることを意識して、縦パスが空いていたら入れて、裏にも蹴ったり、サイドチェンジとか、そういうことを意識し始めてから、少しは良くなってきました」。

 ようやく取り戻したボランチの定位置。それにこだわるのには、ある理由がある。昨年度の高校選手権。予選ではレギュラーを掴んだ時期もあったが、肝心の全国大会では、スタメンのリストに堀井の名前が書きこまれることはなかった。

「前回の選手権もベンチからのスタートで、途中出場しかできなくて、そこも凄く悔しいと思っていました。あの舞台にもう1回戻りたいですし、今年は全試合フルで出られるように、本当に全部強気で毎試合戦うしかないと思います」。決して雄弁なタイプではない堀井が、この時だけは言葉に力を込めた。あの悔しさを二度と味わいたくないという想いが、今の彼を衝き動かしていることは間違いない。

 実はボランチでコンビを組む藤井とは、中学時代から同じチームで、同じ時間を共有してきた仲。“以心伝心”を地で行く関係だ。「中学のチームからずっと同じで、自分が出ていない時も、向こうはずっと出ていて、凄く悔しいなと思っていたので、そこは負けたくないですね。試合中も、他の人とやる時は気を遣う部分もあるんですけど、ずっとやってきているので相手のことも分かるというか、あまりお互いに気にせずできるという感じです。ピッチでは2人で輝ければいいと思います」。このドイスボランチはチームの重要な生命線。6年間の集大成を、そう簡単に終わらせるつもりは毛頭ない。

 次はあの舞台で、必ず輝く。堀井は1年越しのリベンジを手繰り寄せるべく、関東一にとって絶対に欠かせないボランチとして、ピッチに立ち続けていく。

(取材・文 土屋雅史)
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