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見え始めてきた「自分たちの色」。堀越は保善を3-0で下し、苦しんできた“初戦”を確実に突破!

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保善高と堀越高のゲームは激しい雨の中での80分間に

[10.17 選手権東京都予選Aブロック2回戦 保善高 0-3 堀越高]

 PK戦で敗退した関東大会予選。2度のリードを許したインターハイ予選。初戦で味わってきた苦労は、今年のチームの中に強烈な印象として残っている。だからこそ、まずは勝利したことが何よりも大きな成果だったことは言うまでもない。

「初戦の難しさは関東予選やインターハイでも感じていて、まずは『初戦に勝つ』という目標でチーム全体が動いてきたので、3得点というのもそうですし、相手を0点に抑えられたことが良かったと思います」(中村ルイジ)。慎重なゲーム運びで、きっちり初戦突破。17日、第100回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック2回戦で、保善高と堀越高が対峙。前半3分にMF山口輝星(3年)、26分にDF中村ルイジ(3年)、後半37分にMF伊東來(3年)といずれも3年生のゴールで、堀越が3-0で勝利。準々決勝へと勝ち上がった。

 電光石火の先制劇は3分。右サイドへの展開からMF日隠ナシュ大士(2年)がクロスを上げると、逆サイドから入ってきた山口が丁寧にボールをゴールネットへ流し込む。得点が獲れずに苦しんだ2度の“初戦”の呪縛から解き放たれる大きな一発。堀越が早くもリードを奪う。

「『きっちり守って守備から入ろう』というプランを進めていくために、あの1点は大きかったなという印象です」と佐藤実監督も話したように、この日の堀越はここまで採用することの多かった3バックではなく、4バックでスタート。DF渡部美紗哉(3年)とDF宇田川侑潤(3年)のCBコンビが相手の2トップをケアしつつ、突破力のある両ウイングも右にDF久保木舜稀(2年)、左の中村とSBが監視することで、守備の安定感を打ち出していく。

 すると、26分には全国でも輝いたホットラインが魅せる。右サイドでボールを持ったMF古澤希竜(3年)がピンポイントクロスを放り込むと、「選手権同様、彼が持った時には良いボールが入ってくるという信頼がありますし、しっかりそこに走り込んで、実際に良いボールが来たので、しっかり頭に当てれば入るかなという感じでした」という中村のヘディングが豪快にゴールネットを揺らす。

 1点目も、2点目も、右で作って、左で仕留める形。「左から右に展開した時には、必ず左サイドの山口選手や自分が中に入って仕留めるという練習をやってきたので、その結果が出たのかなと思います」(中村)。堀越が2点のアドバンテージを手にして、前半の40分間は終了した。

 後半のファーストシュートは保善。3分にミドルレンジから右SB木村優佑(3年)が枠を越えるフィニッシュを放つと、以降も「彼らがやれる時間はありましたし、狙っているところは2トップやサイドで出ていたと思います」と佐藤監督も言及したように、FW野崎雄吾(3年)とキャプテンのMF藤本光(3年)が中央で時間を作り、右のFW清水一輝(3年)、左のFW石田航輝(3年)とサイドからの仕掛けでチャンスを創出。少しずつ攻撃の勢いが増していく。

 また、MF笠松遥(2年)とMF後藤寛(2年)のドイスボランチもセカンドへの反応が鋭くなり、ボール回収も増加。27分にはエリア内までボールを運び、藤本がシュートを放つも、堀越GK菅野颯人(3年)がファインセーブ。惜しいシーンを作り出したが、得点には至らない。

 2点差で推移していくゲームに、次のゴールが加えられたのは終盤の37分。堀越は途中出場の伊東が中央から左へ流れながら、左足で思い切りよく叩いたミドルシュートが、ゴール右スミへ鮮やかに決まる。チームメイトも大喜びの3年生アタッカーが沈めた追加点で勝負あり。「保善さんがきっちり1つ1つのことをやられていたので、彼らの持っている力に僕らも引き出してもらえたというか、『ちゃんとゲームに入っていって、しっかりやらないといけないよね』というのは明確になったなと思いました」と佐藤監督も認めたように、最後まで締まった好ゲームは3-0で堀越に軍配。今季の“鬼門”となっていた初戦を、きっちりと完封で勝ち切る結果となった。

「Tリーグで3連敗している中での選手権の初戦だったので、『ここは勝たなきゃいけないな』というのはチーム全体にありました」と中村が話したように、夏以降の堀越は少し苦しい時間を過ごしている。特にT1(東京都1部)リーグ3連敗の初戦となった國學院久我山高戦は、1-6という衝撃的な完敗。試合後には山口も「完全に自分たちの弱い部分が出てしまったなと。原因はあると思うので、しっかりそこを改善していきたいです」と言及。ただ、そこからの2試合もともに3失点を喫して敗れるなど、自信を失いかねないような試合が続いていた。

 勝利を挙げたこの日の試合後。佐藤監督はこう言葉を紡ぐ。「『去年のことは1回忘れた方がいいよな』という話は僕らもしていて、結果の出た翌年って、やっぱりいろいろなものを背負わされてしまうので、そんなものを背負わされてこの大会を楽しめなかったり、この大会に入っていけなかったら、それこそ後悔するだろうなと。自分たちにできることを明確にして、それをちゃんと出せるか出せないかというだけのことだと思います。去年のチームは去年のチームですし、結果を追い求めたらどんどん逃げていくと思うので、まずは自分たちが普段やってきたこと、それをちゃんと出せるように準備だけはしようねという感じです」。

 望んでも、望まなくても、前回王者だという事実は変わらない。ある意味でそのプレッシャーは受け入れながら、今年は今年と割り切ったような、吹っ切れたようなグループの強さが、この日の堀越にはあった。「『絶対に自分たちが東京を獲る』という目標で1年間が始まりましたし、自分たちの持ち味だったり、やってきたことを1つ1つ出せれば、勝てない試合はないと思うので、自分たちの色を出しつつ、しっかり勝ちを掴めればいいかなと思います」と中村は言い切っている。

 『自分たちの色』がようやく見え始めてきた2021年の堀越に、確かな光が差し込みつつあることは間違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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