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伝統校・武南で際立つ“異質”のDF中村優斗。「チームとしても、個人としても名を広めたい」

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武南高はゲーム主将を務めるDF中村優斗のプレーに注目

 第100回全国高校サッカー選手権埼玉県予選は23日に3回戦が行われ、インターハイ予選優勝の正智深谷高と同準優勝の武南高が登場する。選手権日本一1回、準優勝1回、3位3回の歴史を持つ武南は、春日部東高と初戦。15年ぶりの選手権出場へ向けたスタートを切る。

 その武南にはJクラブも注目した“異質”のCBがいる。DF中村優斗(3年=朝霞二中出身)は身長こそ170cm台半ばだが、技術力と判断力に長け、自陣PAからのドリブルや縦パス、サイドチェンジを駆使して攻撃をコントロールする最終ラインのプレーメーカー。関東大会予選でCBへコンバートされた当時からピッチで一際目立っていたが、新たなポジションに慣れて縦パスの本数を増やすなど、多彩な崩しが特長のチームに新たなバリエーションを加えている。

 初戦を控えた9月末の練習では紅白戦が実施されていたが、思うがままのプレーを表現していた印象だ。3バックの左から再三相手のプレッシャーをいなして前進。分かっていても止まらないドリブルから、ワンツーで危険なゾーンへ侵入してラストパスを通していたほか、FWに一発でつけるグラウンダーの縦パス、サイドへの展開、守備でも巧みに相手のランニングコースに入ってマイボールに変えるなど名門・武南のトレーニングで別格と言えるほどの動きを見せていた。

「強いところ相手にやらないと意味がないと思いますし、昌平とか全国の上のレベルにできたら良いと思います」と中村。J2の2クラブに練習参加しているDFは、Jリーガーの中に入っても自分の特長を出せていたという。

 練習参加時はSBとしてプレー。「プレー面は結構縦パスとかも入れられたし、自分ドリブルが得意なんですけれども、何回か外すことができたり、ダイレクトで剥がすプレーはできたのでそこは良かった」と振り返る。

 ただし、「自分のレベル的にはできたと思うんですけれども、人見知りであまり自分のプレーを(上手く周囲に伝えて)発揮できなかった」と反省。1クラブ目の練習参加時に自分から発信できなかったことから2度目はより喋ることを意識したというが、それでも本来の自分を出し切れなかったと感じている。

 内野慎一郎監督が「技術的に高いものがある。見ていて、プロと遜色ない」と評価する技術力については、クラブ側からも高評価を得ていたが、プロ入りを勝ち取ることはできず。競り合いやヘディング、判断の速さなど、より磨かなければならない部分があった。全国的に見ても面白い存在だけに残念な部分もあるが、本人は切り替えて選手権で自身の名と武南の名を広める考えだ。

「悔しいですけれども行けないので。でも、それが自分の現在地点なので、大学4年間でしっかりやれれば必ずプロにはなれると思いますし、プレー面とかでは(プロと)遜色なくできていたので(課題の)コミュニケーションの部分はしっかりやっていきたい。J1行って、大卒1年目からバリバリやって日本を代表するような選手になりたいです。(選手権で)全国に出て中村優斗という名前を広めたいですし、武南高校を昔の人は知っていると思うんですけれども、今全国行くとやっぱりどこみたいになっているので、チームとしても、個人としても名を広めたい」と力を込める。

 中村は自分が良いプレーをするという概念に囚われていない。もちろん、自分が中心になってボールを動かさなければ、上手く回らないことは理解しているが、考えているのは「勝つこと」だけ。関東大会予選、インターハイ予選はいずれも2位で「(全国へ)行けると思う」と中村は言う。快足MF水野将人(3年)や2年生ストライカーのFW櫻井敬太、中盤のキーマン・MF山田詩太(2年)、期待の1年生MF松原史季、「夏過ぎから急成長した」(内野監督)というMF内田龍聖(3年)ら個性的なチームメートとともに白星を積み重ねる。

 中村はJクラブへの練習参加を経験し、自身は高校レベルの判断スピードでは足りないことを実感した。ボールを失った際に全体で切り替え速く守ることを仲間たちと共有。加えて、激戦区・埼玉を制すためには、チームとして決め切る部分などの質を高めること、紙一重の勝負をモノにする強さが必要になってくる。その中で、指揮官から「責任を持ちつつも自分の良さを消さずに表現できないといけない」と期待される中村は、勝つために他とは明らかに違う良さを発揮して武南を全国へ導く。

(取材・文 吉田太郎)
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