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目標は圧倒して秋田を制し、全国で勝負すること。より高い基準求めながら戦う明桜が前回決勝の再戦を4-0で突破

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前半16分、明桜高FW田中将太(10番)が先制ゴール

[10.21 選手権秋田県予選準決勝 秋田工高 0-4 明桜高 ソユスタ]

 圧倒して秋田を制し、全国で勝負する――。第100回全国高校サッカー選手権秋田県予選は21日、準決勝を行い、前回大会決勝の再戦となった明桜高秋田工高戦は明桜が4-0で快勝。明桜は23日の決勝で秋田商高と戦う。

 前半、先に決定機を作ったのは、リベンジへ意気込む秋田工だった。1分、注目の2年生エースFW西井太陽が左ハイサイドでボールを収めてクロス。これをPAのMF加賀谷空主将(3年)が1タッチで狙うが、ボールは惜しくも枠左へ外れた。

 明桜はボールを保持してリズムを作ろうとするが、次のビッグチャンスを作ったのも秋田工の方。10分、相手のビルドアップを右中間のMF加藤玲那(3年)がインターセプトし、斜めのラストパスを通す。これをMF佐々木敬吾(3年)が右足で狙ったが、明桜の1年生GK川村晃生が至近距離からの一撃を足でストップし、先制を許さない。
 
 明桜はボールハンターのMF内藤蒼空主将(3年)らが強度高い守備を見せ、攻撃でもシュートで終わる回数を増加。そして17分、狙い通り、前に出てくる相手CBの背後を突く攻撃で先制点を奪う。自陣でのルーズボールを内藤が繋ぎ、最前線のFW佐藤拓海(2年)が収めてターン。DF背後へのループパスに反応したMF佐藤嵐(3年)のシュートはGKに止められたものの、こぼれを10番FW田中将太(3年)が押し込み、明桜が先制した。

 明桜はさらに30分、右スローインから佐藤拓が1タッチで右ハイサイドへパス。佐藤嵐のグラウンダークロスに走り込んだ左SB小野亮輔(2年)が、左足ダイレクトで豪快に決めて2-0とした。

 秋田工は西井が厳しいマークを受ける中での戦い。その中でも西井がボールを収め、トップ下の加賀谷がキープ力を活かして前進したほか、加藤玲やMF三浦大陸(3年)が細かな技術力を発揮するなどチャンスを作り出していた。だが、決め切ることができない。逆に明桜は38分にも内藤の奪い返しから田中が左クロス。佐藤拓が落としたボールを佐藤嵐が左足で狙い、最後はこぼれ球をMF竹前海来(3年)が押し込んだ。

 前半だけで3-0。明桜・原美彦監督は「ハーフタイムに(選手から自発的に)『これじゃ全国では戦えない』『基準を上げて行こう』という声が出ていたので、そこは僕が何も言わなくても彼らがそういう風に気づいてやってくれているのは良いことだと思います」と振り返る。

 明桜は国見高(長崎)や神戸U-18のコーチとして、選手権、インターハイ、全日本ユース選手権、Jユースカップで日本一を経験している原監督就任4年目。東北地方の有力選手に加え、神戸U-15出身の内藤や名古屋U-15出身のCB長江慶次郎(3年)ら他地域のJクラブアカデミーの選手たちも先発に名を連ねる。強化3年目の昨年度は旧・秋田経法大付高時代以来となる選手権出場。秋田県を圧倒して勝ち上がり、全国で勝負すること、日の丸を背負う選手を育成することが明桜の目標だ。

 それを実現するためにはまだまだ自分たちの基準値を上げなければならない。内藤は「去年は全国大会1回戦で負けてしまって、(今年の)東北新人で青森山田とやった時にも基準を上げていかないと全国でそもそも通用しないということもチームメート全員が分かっていますし、練習から基準を上げることを考えてやって来ました。秋田で勝つだけ(の基準)じゃ足りない。全国で勝つためにも、基準を一つひとつ上げていくことが大事だと思います」。

 今年はインターハイ予選で全試合無失点を達成しながら、決勝でPK戦の末に敗れて準優勝。秋田では得点できる、勝てるという慢心があったのかもしれない。だが、その敗戦を経てチームは球際や声、人間的な部分などで大きく成長。この日、大量リードの試合でもさらに基準を上げようとした明桜は後半、質、強度にこだわり、内容をより好転させた。

「弱気なディフェンスをしない」(原監督)ことを徹底し、高い位置でボール奪取。そして、司令塔のMF田村仁志(3年)中心に試合をコントロールし、多彩な仕掛けでゴールへ迫った。36分には内藤のループパスから交代出場のFW藤山成弥(2年)が追加点をマーク。無失点のまま試合を締めた。

 原監督は「最初に比べたら、少しずつやっているサッカーも変化してきて良くなってきている。次の試合はもっとパフォーマンスを出して、今年も言っているんですけれども圧倒していく。無失点優勝を狙う、今年はより攻撃的に行くという部分は言っているので、表現できたらなと思います」と期待。また、内藤は「自分たちがやっていて楽しいだけじゃなくて、見ている人もワクワクするというか楽しめるようなチームにしていきたいと思っていますし、コロナ禍でなかなか(サッカーが)できなかったりする中でも選手権が開催されていることに感謝しながら、プレーしていきたいなと思っています」と力を込めた。伝統校・秋田商との決勝戦でも高い基準を持って戦い、インパクトのある内容・結果で全国舞台へ進む。

(取材・文 吉田太郎)
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