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浦和西との100分間の“我慢比べ”に勝利!本格強化6年目、徹底して繋ぐ細田学園は8強の壁越えて上へ

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埼玉8強入りを喜ぶ細田学園高イレブン

[10.23 選手権埼玉県予選3回戦 浦和西高 1-2(延長)細田学園高]

 埼玉の新興勢力・細田学園が伝統校を突破――。23日、第100回全国高校サッカー選手権埼玉県予選3回戦が行われ、浦和西高細田学園高戦は延長戦の末、細田学園が2-1で勝利。3年連続8強入りの細田学園は準々決勝で武南高と戦う。

 全国優勝の歴史を持つ伝統校・浦和西と本格強化6年目の新鋭・細田学園との3回戦は“我慢比べ”と言えるような戦いに。浦和西は185cmのFW小池耀晟(3年)や182cmのCB珍田知輝(3年)、178cmCB山本海翔主将(3年)の高さを活用し、前半だけで9本のロングスロー。またCK、FK、積極的なサイドアタックからゴール前に次々とボールを入れていた。

「フロントコートでサッカーをするというプラン通り」(市原雄心監督)という浦和西に対し、細田学園は172cmのCB吉岡陸(3年)と170cmのCB島村龍征(3年)中心にチャレンジアンドカバーを徹底しながらよく競っていた。こぼれ球への反応も速く、決定打を打たせない。

 そして、マイボールに変えると、自陣ゴールエリアから徹底してポゼッションを試みた。前線からのプレッシング鋭い浦和西相手にリスクが高いのは覚悟の上。幾度か自陣でインターセプトされることもあったが、スペースへ抜け出すFW金子弘輝主将(3年)と成長株のFW滝澤夏惟(2年)への配球も織り交ぜながら自分たちの戦いを貫いた。

 互いにセットプレーからチャンスも作り合う中、先制したのは細田学園だった。前半25分、CKの流れから敵陣でボールを奪い返すと、右ハイサイドへ抜け出したMF田端優作(2年)がクロス。ゴール前へ2人が走り込み、中央の金子が右足ダイレクトでシュートをゴールネットへ突き刺した。

 浦和西は後半立ち上がり、ロングスローのこぼれ球から決定機を迎えるが、細田学園GK朝倉達也(2年)がビッグセーブ。浦和西GK宇都宮良偉(2年)も好セーブで対抗するなどなかなか次の1点は生まれなかった。

 浦和西はいずれも交代出場のMF溝口嵩人(2年)とMF染谷颯人(2年)の両ドリブラーが後半、延長戦と嫌な存在になっていた。後半35分には染谷が左サイドでFKを獲得。これをMF片野駿(2年)が右足で蹴り込むと、相手オウンゴールを誘発し、同点に追いついた。

 細田学園は一気に逆転を狙う浦和西に押し込まれるシーンもあった。だが、我慢強い守りを続け、MF小林京介(3年)中心にグラウンダーでボールを繋いで、相手を動かし続ける。浦和西は市原監督も評価していたように、スライドを徹底し、間延びすることなくコンパクトな守りを継続していた。だが、どこかで影響を受けていた部分があったかもしれない。延長後半9分、細田学園は前線から圧力を掛けてMF小川愛斗(2年)がボールを奪い返すと、ゴール方向へ斜めのパス。金子がコントロールから右足を振り抜き、激闘に決着をつけた。

 細田学園の上田健爾監督は「一つずつ積み重ねて来て相手にダメージを与えて行ったというのが、最後あそこにこぼれるということに繋がったかなと思います。ジャブが効いてダメージを与えることができた」。慌てずにショートパスでボールを動かし、ドリブルで運んだことが布石となり、決勝点と勝利を引き寄せた。

 これで3年連続の8強入り。名門・市立船橋高(千葉)出身の上田監督が埼玉で勝負する上で大事にしていることは、「コンセプトとしてはボールを大事にしたい、攻撃したいというのがありますけれども、やっぱり力強いチームが多い中で、それを徹底していなせるかという部分と、今日のように耐える部分、我慢する部分というのを両方やっていかなければ上には行けないので、そこは両方と思っている」。この日は苦しい展開だったが、我慢し、両面を表現して白星を掴み取った。

 金子は今年のチームの強みについて、「どのカテゴリーもみんな繋がっていることです」と説明。昨年、一昨年の敗戦を経験したチームはより自分たちの武器を磨くと同時に、欠けていた迫力の部分の成長も求めてきたという。吉岡が「人芝になってパスの質とかこだわるようになって、自分たちはパスを繋ぐサッカーをするので人芝だと助かります」と語っていたが、今秋には創立100周年事業としてグラウンドが人工芝化。整ってきた環境もプラスアルファにしている。

 次は2年連続で敗れている準々決勝。吉岡は「ベスト8の壁を自分たちが越えられるように。今日からまた頑張っていきたいと思います」と語り、金子も「このサッカーで監督を男にしたいという気持ちがある。信じてやっています。細田は1、2年の時は8。そこを超えるというのが歴史の一歩だと思うので、そこを越えて、全国に行けたら良い」と力を込めた。まずは次の一戦に集中。準々決勝で名門・武南を乗り越えて歴史を変える。
 
(取材・文 吉田太郎)
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