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[MOM3609]北海GK神宮快哉(3年)_“PK職人”が全国決めるセーブ! それでも真顔を貫いた理由

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PKをセーブしたGK神宮快哉(3年)

[10.24 高校選手権北海道予選決勝 旭川実高 0-0(PK4-5) 北海高 札幌厚別]

 夏のインターハイまで正守護神として北海高を支えていた控えGKが、優勝をかけたPK戦で大仕事を成し遂げた。勝負を決めるビッグセーブにも笑顔を見せず、冷静に手繰り寄せた全国行きの切符。仲間のメンタルに配慮する余裕も見せつつ、指揮官に任された役割を冷静にまっとうした。

 パワフルな攻撃陣が並ぶ旭川実高を相手に一方的な猛攻を受けていた延長後半10分、淡々とウォーミングアップを続けていたGK神宮快哉(3年)の出番が訪れた。終盤のGK投入は高校生のビッグトーナメントでもはやおなじみの光景。同点の場合に決着をつけるためのPK戦に備えた選手交代だ。

「試合中は緊張していた部分はあったけど、3年間ここまでやってきたことを思い出しながら、仲間のことも考えながらメンタルをつくっていた」(神宮)。6人目のキックを止めた2回戦・札幌創成高(○1-1、PK5-4)に続き、今大会2度目の勝負どころだった。

 ところが、この日は少しばかり事情が違った。負傷者対応のアディショナルタイムが長く取られたため、投入直後もしばらく相手の猛攻が継続。長身ストライカーに放り込まれるロングボールに対し、神宮はPK戦前に多くの仕事が舞い込んできたのだ。

「どうにか無失点でPK戦にもつれ込むようにと思っていた」。屈強な相手FWと競り合ったことで一度ボールを落とす場面もあったが、そこでもすぐにアプローチしてしっかりとボールをキープ。その後もパンチングではなくキャッチで波状攻撃を防ぎつつ、飛距離のあるロングキックで時間を稼いだ。

 その結果、失点してもおかしくないほどのピンチを防ぎ続けて0-0のままタイムアップ。「攻められてはいたけど、しっかり味方がハードワークしてゴールを守ってくれていたので、自分も責任感を持ってできた」。PK戦に持ち込むまでの“完封リレー”に貢献した。

 そうして迎えたPK戦。神宮は3人目までのうち2人のキッカーに読みを合わせ、4人目のキックを見事な横っ飛びで仕留めた。しかし、大きな喜びをあらわにするチームメートを尻目に、表情をまったく崩さず真顔を貫いた。




 神宮が笑顔を見せなかった理由は「常に平常心を意識していて、興奮して空回りしないように」という心掛けから。加えて「自分の考え方なんですが、自分が喜んだあとに味方が外しやすいと思っている」というチームメートへの配慮もあったようだ。

 そんなサポートの甲斐もあってか、味方キッカーは続く2人を含めて5人全員が成功。勝利が決まると、神宮は喜びを爆発させながら正GKの伊藤麗生主将(3年)と抱き合った。「1試合ゴールを守り抜いてくれていたので、勝ったら一番に行こうと思っていた。」ここでもチームメート思いの振る舞いだった。

 全国大会までは残り2か月余り。神宮はPK職人としての努力を重ねつつ、再び正守護神に返り咲く覚悟で日々を過ごしていくつもりだ。

「全国までまだ時間があるので、正GKを取り返す気持ちを持ちながら、PKで出ても上手くできるように気持ちをつくって頑張りたい」。全国大会の序盤は40分ハーフの延長戦なし。しぶとく戦う北海スタイルが継続できれば、最後は頼れる守護神が控えている。

(取材・文 竹内達也)
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