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[MOM3611]駒澤大高DF古田和也(3年)_先制ゴールに安定の守備。躍動したディフェンスリーダーの感謝と謙虚

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駒澤大高のディフェンスリーダー、DF古田和也

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 選手権東京都予選Aブロック準々決勝 実践学園高 1-2 駒澤大高]

 そのヘディングには、この会場に来ることの叶わない仲間の想いが乗り移っていた。一直線に向かったベンチメンバーの後ろからは、さらに多くの部員の歓喜がはっきりと伝わってくる。

「みんなのおかげで獲れたゴールでしたし、学校でも応援してくださっている方々もいて、親もそうですし、メンバーにギリギリで入れなかった人も、ここに来れていない選手やコーチもいるので、そういう方は画面越しでの応援になったんですけど、みんなの気持ちを背負ってやりました」。

 先制点を挙げ、最終ラインで相手の猛攻を凌ぎ切る。駒澤大高のディフェンスリーダー。DF古田和也(3年=FC多摩ジュニアユース出身)の攻守に渡る躍動が、チームを西が丘の舞台へ導いた。

 拓大一高、暁星高を撃破して、勝ち上がってきた準々決勝。対峙するのは関東大会予選、インターハイ予選と東京を制している実践学園高。相手にとって不足はない。「東京二冠を獲っている相手なので、しっかり気持ちを引き締めましたし、相手に飲まれて自分たちのサッカーができずに終わるのが一番嫌なので、そこは練習から相手以上の勢いを想定して、今日に挑みました」。勝利への十分なイメージを携えて、この日の決戦のピッチへ歩みを進める。
 
 立ち上がりから、駒澤大高の動きが鋭い。「初戦は結構硬くなってしまったんですけど、1回戦と2回戦で出た課題を改善しつつ、完璧ではないながらも、しっかりみんなで声を掛け合ってできました」という古田を軸に守備陣も安定。攻撃面でも相手のエリア内へ何度も侵入する。

 そして4番が輝いたのは、前半28分。駒澤大高が掴んだ左CKは一旦相手に弾き返されたものの、キッカーのMF松原智(2年)が再びクロスを蹴り入れると、古田が宙を舞う。「もう本当に智のクロスが良かったので、自分は当てるだけという感じで、嬉しくてあまりはっきりは覚えていないんですけど、左スミの方に行ったというのは覚えています」。豪快なヘディングがゴールネットへ収まると、気付けば仲間の元へ走り出していた。

「自分はディフェンスラインの選手ですけど、セットプレーでは自分が獲るという気持ちもありましたし、チームを西が丘へ導きたいという想いは強かったです」。古田を中心にできた駒澤の歓喜の輪。さらにもう1点を追加し、2点のリードを奪って前半を終える。

 後半は徐々に押し込まれていった。終盤には1点を返される。それでも、耐えた。それでも、折れなかった。「後半はファールに気を付けながらみんなもやっていたと思うんですけど、身体を投げ出したり、ゴールをさせないという気持ちが出ていましたし、本当に流れの切れ目のたびにみんなで声を掛けながらやっていたので、それが1失点で抑えられた要因かなと思います」。タイムアップのホイッスルが聞こえると、東京王者撃破の立役者となった古田は両腕を天に突き上げた。

 大会前にチームは本気で東京を獲ることを誓って、この最後の戦いへ挑んできた。古田もその想いを強調する。「ここは目標ではなくて通過点なので、今日勝てたことは率直に嬉しいですけど、次に向けて切り替えなくてはいけないですし、負けてしまった実践の人たちの想いも背負って、次戦に向けてやっていきたいと思います」。

 頂点までは、あと2つ。ここから大事になってくるのが、このチームが代々受け継いできたマインドであることは間違いない。「僕たちは試合に出て当たり前じゃないですし、家族もいて、スタッフの方々もいて、いろいろな方々の支えがあるので、1試合1試合感謝の気持ちを持って、謙虚にやっていきたいなと思います」。

 感謝と謙虚。この2つを携えている男が最終ラインにそびえる限り、駒澤大高の牙城はそう簡単に揺るがない。

(取材・文 土屋雅史)
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