全国で味わった屈辱が転機。帝京FW齊藤慈斗は「流し込むだけ」をきっちり流し込めるストライカーに
[10.24 選手権東京都予選Bブロック準々決勝 駒場高 0-4 帝京高]
本能が疼く。大事な試合でゴールを奪ってこそ、ストライカーを名乗ることが許されることは百も承知。右足で流し込んだボールが、ゴールネットを揺らす。「パンチングした時にキーパーがもう出ていて、あとは自分のところにボールが来たので、流し込むだけでした」。
「流し込むだけ」を、きっちり流し込める才覚の持ち主。帝京高を前線で牽引する13番。FW齊藤慈斗(2年=バディーSCジュニアユース出身)の今大会初ゴールは、ストライカーらしい嗅覚に彩られていた。
選手権の初戦。目白研心高とのゲームは大苦戦。延長までもつれ込む100分間を何とか逆転で制し、準々決勝へと勝ち上がったものの、無得点の齊藤が責任を感じなかったはずがない。「先に1点獲られてしまって、凄く難しい状況で何とか1点は獲れたんですけど、全員で相手が守ってきてしまうと、スペースもなくて難しかったと思います」。
1週間でしっかりと練習から足元を見つめ直す。「最後のところがうまく噛み合っていなかったので、1週間でしっかり攻撃陣は最後の崩しの部分やフィニッシュのところも詰めてこられたので、今日はそういう部分が出たのかなと思います」。その効果は確実にこの日のピッチに現れる。
「前半からやるべきことはしっかりできたので、あとは点を決めるだけでした」。相手のタイトなマークを受け、一時はピッチを出て治療を受けるなど、やや足を引きずりながらもフォワードの位置に戻ってきた齊藤に、絶好の先制機が訪れたのは前半31分のことだった。
左サイドバックのDF入江羚介(2年)からのフィードを受け、正確なポストプレーできっちり左へ。FW山下凜(2年)のドリブルと並走しながらゴール前に走り込むと、GKがパンチングしたボールがこぼれてくる。右足インサイドで、丁寧に、正確に、ゴールネットへ流し込む。
「ちょっと浮いていたんですけど、自分でもよく決めたなと思います」。攻め立てながらもなかなか点の獲れない状況で、13番が沈めた先制弾。一見簡単そうに見えるが、ポジショニングが生んだ実にストライカーらしい一撃。このゴールを皮切りに、前半だけで3点を奪った帝京は、後半にも1点を追加。「自分が決めればチームも良い流れに乗っていくと思いますし、そこで自分が決めることが一番大事かなので、決められて良かったです」という齊藤は、4-0の快勝に自分の得点できっちり貢献してみせた。
夏の福井では悔しさを突き付けられる。結果的にファイナリストとなる米子北高(鳥取)とのインターハイ初戦。70分間で得点は奪えず、PK戦でも6人目のキッカーとして登場したものの、相手GKのセーブに遭い、チームも敗退を余儀なくされた。その経験は自分の意識を改めて変えるきっかけになったという。
「自分ではあの負けで悔しい想いをしたので、この2,3か月では食事の部分と、あとは家でも体幹トレーニングや筋トレをしっかりして、この選手権に懸けて悔いなくやろうと思いました。その効果も現れていますね。身体のキレがかなり良くなってきたかなと。収めるところは得意だったんですけど、もっと収められるようになっていて、そういうところが良くなったかなと思います」。
選手権で成し遂げたい目標は明確だ。「全国でやられてしまったからこそ、そこで借りを返したいなと思っていますし、まずは全国に出ないと意味がないと思っているので、絶対に出たいですね。全国でもしっかり点を決めたいですし、チームを救うフォワードの選手になりたいと思っています」。
12年ぶりの全国へ。カナリア軍団の2年生ストライカーは、とにかくゴールを獲ることで、自分の存在価値を証明し続ける。
(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2021
本能が疼く。大事な試合でゴールを奪ってこそ、ストライカーを名乗ることが許されることは百も承知。右足で流し込んだボールが、ゴールネットを揺らす。「パンチングした時にキーパーがもう出ていて、あとは自分のところにボールが来たので、流し込むだけでした」。
「流し込むだけ」を、きっちり流し込める才覚の持ち主。帝京高を前線で牽引する13番。FW齊藤慈斗(2年=バディーSCジュニアユース出身)の今大会初ゴールは、ストライカーらしい嗅覚に彩られていた。
選手権の初戦。目白研心高とのゲームは大苦戦。延長までもつれ込む100分間を何とか逆転で制し、準々決勝へと勝ち上がったものの、無得点の齊藤が責任を感じなかったはずがない。「先に1点獲られてしまって、凄く難しい状況で何とか1点は獲れたんですけど、全員で相手が守ってきてしまうと、スペースもなくて難しかったと思います」。
1週間でしっかりと練習から足元を見つめ直す。「最後のところがうまく噛み合っていなかったので、1週間でしっかり攻撃陣は最後の崩しの部分やフィニッシュのところも詰めてこられたので、今日はそういう部分が出たのかなと思います」。その効果は確実にこの日のピッチに現れる。
「前半からやるべきことはしっかりできたので、あとは点を決めるだけでした」。相手のタイトなマークを受け、一時はピッチを出て治療を受けるなど、やや足を引きずりながらもフォワードの位置に戻ってきた齊藤に、絶好の先制機が訪れたのは前半31分のことだった。
左サイドバックのDF入江羚介(2年)からのフィードを受け、正確なポストプレーできっちり左へ。FW山下凜(2年)のドリブルと並走しながらゴール前に走り込むと、GKがパンチングしたボールがこぼれてくる。右足インサイドで、丁寧に、正確に、ゴールネットへ流し込む。
「ちょっと浮いていたんですけど、自分でもよく決めたなと思います」。攻め立てながらもなかなか点の獲れない状況で、13番が沈めた先制弾。一見簡単そうに見えるが、ポジショニングが生んだ実にストライカーらしい一撃。このゴールを皮切りに、前半だけで3点を奪った帝京は、後半にも1点を追加。「自分が決めればチームも良い流れに乗っていくと思いますし、そこで自分が決めることが一番大事かなので、決められて良かったです」という齊藤は、4-0の快勝に自分の得点できっちり貢献してみせた。
夏の福井では悔しさを突き付けられる。結果的にファイナリストとなる米子北高(鳥取)とのインターハイ初戦。70分間で得点は奪えず、PK戦でも6人目のキッカーとして登場したものの、相手GKのセーブに遭い、チームも敗退を余儀なくされた。その経験は自分の意識を改めて変えるきっかけになったという。
「自分ではあの負けで悔しい想いをしたので、この2,3か月では食事の部分と、あとは家でも体幹トレーニングや筋トレをしっかりして、この選手権に懸けて悔いなくやろうと思いました。その効果も現れていますね。身体のキレがかなり良くなってきたかなと。収めるところは得意だったんですけど、もっと収められるようになっていて、そういうところが良くなったかなと思います」。
選手権で成し遂げたい目標は明確だ。「全国でやられてしまったからこそ、そこで借りを返したいなと思っていますし、まずは全国に出ないと意味がないと思っているので、絶対に出たいですね。全国でもしっかり点を決めたいですし、チームを救うフォワードの選手になりたいと思っています」。
12年ぶりの全国へ。カナリア軍団の2年生ストライカーは、とにかくゴールを獲ることで、自分の存在価値を証明し続ける。
(取材・文 土屋雅史)
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