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前橋育英99人目のプロ選手、DF岡本一真が群馬内定会見。「ザスパクサツ群馬の一員としてプレーできることが待ち遠しい」

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群馬内定の前橋育英高DF岡本一真(中央)、群馬・佐藤正美強化担当(右)、前橋育英・山田耕介監督

 高校サッカー界屈指のエースキラーは群馬の地でプロに――。前橋育英高(群馬)のDF岡本一真(3年)が26日、群馬県前橋市内の同校で行われたザスパクサツ群馬入団内定記者会見に出席した。会見には岡本のほか、群馬の佐藤正美強化担当、前橋育英の山田耕介監督、金子雅人校長、岡本の両親が出席。岡本は「幼い頃から目指してきたプロサッカー選手という夢が叶い、そしてそのスタートをザスパクサツ群馬というクラブで実現できることを大変嬉しく思っています。ザスパクサツ群馬の一員としてプレーできることが待ち遠しいですし、人としても、プロサッカー選手としても成長して、ファン・サポーターの皆様や多くの人々に元気や感動を与えられるような選手になれるよう、頑張っていきたいと思います」と真摯な表情で語った。

「前橋育英高校で3年間やってきて、とても身近な存在として自分の中にザスパクサツ群馬があり、練習参加させていただいた時も非常にチームの雰囲気が良く、自分がここで活躍していきたいなと思ったのが一番大きい理由です」と群馬加入の理由を口にした岡本は、全国レベルのタレントがひしめく上州のタイガー軍団で、1年時から「相当な選手じゃないと入れない」(山田監督)Aチームのメンバーに選ばれるなど、大きな期待を集めてきた。

 さらに最高学年となった今年に入ると、持ち前のハードマークを生かした安定感あふれる守備はもちろん、機を見たオーバーラップからの攻撃参加も迫力を増し、押しも押されぬ中心選手として、どの試合でも常に波のないハイパフォーマンスを披露している。

 とりわけ印象的だったのは、インターハイ県予選決勝の桐生一高戦。岡本のマンマークに抑え込まれた相手のサイドハーフが、前半のうちに逆サイドへポジションチェンジをすると、ベンチは岡本にもサイドの変更を指示。結果的に岡本が左右のサイドバックをこなしながらキーマンを封じ込めたことで、桐生一の攻撃の威力を半減させることに成功する。
 
 山田監督は「信頼できますよね。ポリバレントなところもあるし、いろいろな所ができる選手で、相手のスピードにも対応できる面で、ものすごく今後が楽しみな選手だと思います」と話しながら、とりわけ最近の成長にも驚かされているという。「1年時から力はありました。ただ、対人は最近急速に伸びてきたんですけど、駆け引きは考えながらやっているんだなというのはよくわかりますよね。自分のサイドに追い込むとか、誘い込むようなディフェンスができるようになったので、その辺はプロに行っても十分通用するところじゃないかなと」。ただハードに行くだけではない。頭脳的なプレーも身に付けたことで、格段にプレーの幅が広がってきた。

 会見に出席した群馬の佐藤正美強化担当は同校のOB。ユニフォーム贈呈の際には、真新しい紺のユニフォームに付いていた“タグ”をいとも簡単に引きちぎるなど、『マッスル正美』の異名をとった現役時代さながらのパフォーマンスを披露しながら、「私自身も育英出身なので、岡本選手の存在は前々から知っていましたが、本格的に追い始めたのは今年に入ってからです。もちろんインターハイの決勝も見ましたし、プリンスリーグも何試合か見た中で、高卒の選手を獲得するというのはクラブでも挙げていたところだったので、練習参加も含めてクラブの内部のスタッフにも見てもらって、その時の様子も判断した上で、最終的にクラブとして判断をさせていただきました」と獲得の経緯を明かす。

 以前から話はあったものの、実際に岡本が群馬に練習参加したのは2週間ほど前とのこと。だが、このタイミングは18歳に大きな実りをもたらしてくれた。高校の先輩であり、日本代表として世界を舞台に戦ってきた、細貝萌との邂逅だ。

 「細貝選手はこれからプロの世界でどうやっていくのかをいろいろ話してくれました。高卒でプロに入って、浦和レッズでどうだったかということだったり、日本代表での経験を話してくれて、それが一番印象に残っています。そういう言葉をもらって刺激をもらえましたし、細貝選手のような活躍のできる選手に自分もなりたいなと思いました」。レジェンドと過ごした時間は、岡本にとってかけがえのない経験になった。

 さらに、もう1人の“先輩”の存在も見逃せない。報道陣の質問が細貝に集中する中、ちょうど10歳年上となる高校の先輩・白石智之との話が岡本からなかなか出ない状況に、「オマエが(白石から話を)聞かなかったんじゃないの?」と山田監督から鋭いツッコミも。もちろんそんなことはなく、「練習後に一緒にジョギングをしてくれました。白石選手もいっぱい苦労している選手なので、そういう話も聞きながら、良くしてもらいました」とのこと。2人の偉大な先輩にかわいがられ、充実した練習参加を送れたようだ。

 群馬にとっても、前橋育英からの高卒入団選手は横山翔平以来で実に9年ぶり。佐藤強化担当は「やっぱり注目度は高いですし、そういった選手が活躍してくれることがクラブにとっても凄く大きなことなので、あまりプレッシャーを掛けるわけではないですけど(笑)、早く活躍してもらって、地域に愛されるような選手になってほしいなと思いますし、後輩たちがまた『ザスパでプレーしたい』と思えるような成長や活躍を、是非してほしいなと思っています」と温かいエールを送る。

 高卒でプロの世界へ飛び込むという決断は、決して簡単に下せるものではない。「性格的にも地道にコツコツやることができる選手」と山田監督もお墨付きを与える岡本は、大学経由ではなく、この時期に大好きなサッカーを職業に選んだ理由を、力強くこう語っている。

「早くプロの世界に行ってチャレンジしたいという気持ちが一番大きくあって、やっぱりここからプロの世界で経験を重ねていくことで、最終的には海外でプレーしたいという気持ちがあるので、ザスパクサツ群馬でよりステップアップしていって、将来は海外で活躍できる選手になりたいと思います」。

 横浜F・マリノスジュニアユースから、上州のタイガー軍団の門を叩いて3年。最高の仲間とかけがえのない時間を過ごし、新たな縁のできた群馬の地で、岡本は前橋育英サッカー部の歴史の中で99人目となるプロサッカー選手としての道を、力強く歩み出す。

(取材・文 土屋雅史)  

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