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夏の大敗を乗り越えて――。劣勢を跳ね返した佐賀東が2年連続の選手権出場に王手!

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佐賀東高はウノゼロ勝利で決勝進出!

[10.31 選手権佐賀県予選準決勝 佐賀東高 1-0 龍谷高 鹿島市陸上競技場]

 消極的なプレーが目立ち、テンポの良いパスワークは鳴りを潜めた。相手の術中にハマり、ボールが繋がらない。それでも我慢強く戦い、ライバルを撃破した。

 10月31日、第100回全国高校サッカー選手権佐賀県予選の準決勝が行われ、佐賀東高龍谷高に1-0で勝利。11月13日の決勝で佐賀商高と対戦することが決まった。

「良さを消しに来た龍谷さんに自分たちらしさを潰された」と蒲原晶昭監督が振り返った通り、佐賀東は序盤から苦戦する。

 前線からのプレスと連動した守備を見せる龍谷に対し、DF石橋拓磨(2年)、DF宝納拓斗(2年)のCBコンビに加え、ボランチのMF山内創太(3年)も最終ラインに降りてボールを動かす。しかし、相手の素早い寄せに手を焼き、縦パスを付けられない。「相手のサッカーが予想外だった」とは主将・右MF森田悠斗(3年)の言葉。インターハイ予選の準決勝では攻撃的に戦った龍谷の策に戸惑い、ブロックの外でボールを回すだけの時間が続いた。

 頼みの新潟内定MF吉田陣平(3年、日本高校選抜)も警戒されてパスを受けられない。中盤でボールを失う回数が徐々に増え、ショートカウンターからピンチを招く場面も散見。21分には、山内が龍谷の主将・DF石橋将(3年)をペナルティエリア内で倒してしまう。このPKはMF杉光楓征(3年)のシュートミスに助けられたが、以降もリズムを掴めない。27分には高い位置でプレスを掛けられ、自陣で石橋拓磨がボールをロスト。身体を張った守りでピンチを脱したものの、佐賀東は劣勢で前半を終えた。

 ほとんど良さを出せなかった佐賀東はハーフタイムに修正を図る。「守備のブロックを相手が作っている状況で、後ろで繋ぐのはもったいない。であれば、宝納は正確な左足を持っているので、一発で背後を狙う話をした」(吉田)。後半開始からショートパスだけではなく、宝納のロングフィードで局面の打開を目論む。この策が見事に的中。攻撃にリズムが生まれ、最前線のFW川原一太(3年)がスペースで受ける場面が増える。ゴール前に迫る回数も増え、フィニッシュに持ち込むシーンが作れるようになった。

 しかし、肝心のゴールが奪えない。拮抗した展開のまま、試合は残り10分を切る。ここで大仕事をやってのけたのが、頼れるキャプテンだ。

 後半32分、ペナルティエリア内の混戦から、森田がこぼれ球に反応。絶妙なファーストタッチで相手DFの裏にボールを運ぶと、龍谷GK小野櫂音(2年)の頭上を抜くループシュートを決めた。

 終盤は相手にパワープレーを仕掛けられ、アディショナルタイムには連続してセットプレーのピンチを迎える。しかし、GK松雪翔吾(2年)を中心に凌ぎ、決勝進出を決めた。

 佐賀東は2月の九州新人戦で準優勝を果たすなど、今年は春先から好調を維持。しかし、夏のインターハイでは期待に応えられず、1回戦で流通経済大柏高(千葉)に1-5の大敗を喫した。自信を持っていたチームにとって、あまりにも衝撃的なスコア。大きなショックを受けたが、現在はチームが成長する上で必要な敗戦だったと捉えている。

「あの敗戦は自分たちを見つめ直す良い機会。自分たちが強いと感じていた中で、まだまだと思い知らされました」(吉田)

 夏の敗戦以降、全国制覇を目指す上で流経大柏が一つの基準になった。ハイプレスを掻い潜る方法や攻守の切り替え。それらにフォーカスを当てながら、ボールを繋ぐスタイルに磨きを掛けてきた。準決勝は納得できるパフォーマンスではなかったが、試合中に修正を図れた点は成長の証でもある。

 2年連続の選手権まであと1勝。インターハイ予選の決勝で対戦した佐賀商も、龍谷同様に守備に比重を置く可能性が高い。そうした相手に対し、自分たちのスタイルを貫けるか。全国舞台で雪辱を果たすためにも、真価を問われる一戦になるのは間違いない。

(取材・文 松尾祐希)
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