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[MOM3627]専修大松戸FW寺島サフィール(3年)_両足の痛みは走り続けた勲章。献身的ストライカーがファインゴール!

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専修大松戸高の献身的なストライカー、FW寺島サフィール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.30 選手権千葉県予選準々決勝 敬愛学園高 1-3 専修大松戸高]

 ファインゴールを決めた歓喜の瞬間。その場から一歩も動けなくなってしまった。「敬愛が繋いでくるチームということで、試合前からスライドと前からのプレスを重点的に意識してやろうと思っていたので、前半から走り過ぎて攣っちゃいました(笑)」。

 殊勲の一撃は両足の痛みとともに。専修大松戸高のストライカー。FW寺島サフィール(3年=アーセナルSS市川出身)は、折り重なってくるチームメイトの一番下で、攣ってしまった両足に押し寄せる痛みと、最高のゴールを奪った喜びを同時に噛み締めていた。

 敬愛学園高と対峙した準々決勝。GKも巧みに使いながら、きっちりボールを繋いでくる相手のスタイルに対抗するため、前半からフォワードの寺島は相手のビルドアップの流れに神経をとがらせつつ、前からのプレッシャーを掛け続ける。

 0-0で迎えた後半。「前半はあまりシュートを打つことができなかったですけど、後半はゴールに近い位置でプレーできたことが良かったと思います」と話した寺島は、6分に2トップの相棒でもあるFW石津皓太(3年)の右クロスをニアで合わせ、軌道はゴール右へ逸れたものの好トライ。さらに、13分には左からMF南徹汰(2年)が投げたロングスローにニアで競り合い、こぼれを石津が押し込んで先制。実際はボールに触っていなかったが、「アシストです!」と自己主張する笑顔が微笑ましい。

 そして、21分。見せ場がやってきた。素早い攻守の切り替えから、MF西野峻平(3年)のパスカットを起点に、MF角川佑輝(3年)は右足のアウトサイドで絶妙のスルーパス。寺島が走る。「相手が結構戻ってくるのが速かったので、『止まれないかな』と思って、落ち着いて切り返しました」。完璧な切り返しから左足を振り切ると、ボールは左スミギリギリのゴールネットへ吸い込まれる。

「左足にはあまり自信がないんですけど、うまく入ってくれたなと思います」。軌道を見届けると、バッタリとその場に倒れ込む。「足が攣っちゃって……。本当はスタンドにも行きたかったんですけど、攣っちゃって動けなかったですね(笑)」。

 駆け寄ってきたチームメイトと、折り重なって喜び合う。「嬉しかったですね。全然寝っ転がろうとかは思っていなくて、ただ動けなかっただけなんですけど(笑)」。試合はちょうど飲水タイムに入り、寺島はそのまま交代でピッチを後にしたが、華麗な“去り際”を見る者に強く印象付ける形となった。

 ゴールシーンには明確なイメージがあったという。「参考にしているのはリヴァプールのサラーですね。利き足は違うんですけど、リヴァプールがもともと好きで見ていたので、今日の切り返しもサラーっぽいイメージでしたし、日頃からサラーを見ていたのが出たのかなと思います」。エジプト人の父親に影響を受け、チェックするようになった世界屈指のストライカーを仰ぎ見つつ、左右両足でのシュートを磨き続けている。

 この日も“アベックゴール”を決めた2トップ。寺島も石津の存在を心強く感じている。「石津は足も速くて、身長も高いので、裏抜けとか、競り合いとの部分は任せていますし、自分は結構足元に自信があるので、分担してやっていますね」。タイプの違う2人が前線で躍動することで、チームの攻撃の幅は間違いなく広がっている。

 次はセミファイナル。歴史を変えてやろうという意欲は、もちろん強い。「“センマツ”は全国に出たことがないので、流経と市船を倒して全国に行きたいですね。特に流経はインターハイの時に0-3で完敗だったんですけど、そこから自分たちも修正してきたので、勝ち切りたいと思いますし、借りを返したいです」。

 きっと、寺島は走る。チームのために。ゴールのために。最前線で、誰よりも走り続ける。

(取材・文 土屋雅史)

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