beacon

「胸張って帰ろう」。3年生5人の金沢市立工は終盤の失点で敗退も、34年ぶりの石川準決勝で健闘

このエントリーをはてなブックマークに追加

金沢市立工高(白)は2年前の優勝校・鵬学園高相手に走力と堅守で対抗

[10.30 選手権石川県予選準決勝 金沢市立工高 0-1 鵬学園高 金沢市民]

 34年ぶりの準決勝挑戦。後半36分に失点するまで、2年前の王者・鵬学園高を封じ続けた金沢市立工高の釘抜謙太監督は試合後、涙で声を震わせながら選手たちに賛辞を送っていた。

「選手が非常に良く頑張ってくれたかなと思います。最後やられてしまいましたけれども、胸を張って選手を讃えたいと思います。『本当に良くやった』と、『胸張って帰ろう』と」。コロナ禍で、夏は初戦の試合開始直前に棄権。6月、多くの人々の協力によって実現したインターハイ予選優勝校・星稜高との交流試合を最後に、3年生の多くは引退した。

 残った3年生はDF梅田慶次郎、DF吉田元気、DF永井勇気、MF越川蒼輝、FW森北斗の5人。その5人と1、2年生が中心となって戦った今回の選手権で彼らは強みの粘り強さと走力を発揮した。PK戦の末に日本航空高石川を下した準々決勝を含め、3試合連続で無失点勝利。87年度大会以来、34年ぶりの準決勝進出を果たした。

「今回の5人もそうなんですけれども、(この代は)クラブチーム出身が一人もいなくて、部活動出身の子だけで、最初は本当に弱くてですね……。本当に諦めずに、夢を持って付いてきてくれたなと思います」と釘抜監督。その世代がこの日、鵬学園相手にも素晴らしい戦いを演じた。

 タレント豊富な相手に自由な攻撃をさせないため、ファーストディフェフェンスを徹底。高い位置で奪い切ることはなかなかできなかったが、それでも彼らは走力を落とすことなく、後半も走り続けた。

 また、シュートは計17本打たれたものの、最後の局面で必ず身体を投げ出して限定。ゴールラインすれすれでクリアするなど、好守で何度もスタンドを沸かせていた。後半36分のCKからの失点もクリーンヒットされた一撃ではない。それでも、1点を奪い返す力はなかった。

「何とか彼らに良い思いを、良い雰囲気でサッカーをさせてあげたい」(釘抜監督)という思いを持っての選手権。「止める・蹴る」の部分など後輩たちへの課題を残したが、それでも3年生たちは保護者や仲間が見守るスタジアムでひたむきに戦い抜き、胸を張って会場を後にした。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP