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[MOM3631]盛岡商FW戸來匠(3年)_「もう古豪とは呼ばせない」。グリーンウッドを目指すしなやかなストライカーが2ゴールと躍動!

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FW戸來匠盛岡商高の先制点を奪う!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 選手権岩手県予選準決勝 遠野高 0-3 盛岡商高 いわぎんスタジアム]

 軽やかにピッチを跳ねていく。“躍動”という言葉がピッタリ合うようなプレーは、さながら動物のような野性味あふれるしなやかさを纏っている。そして、気持ちも強い。「いつでも自分で点を獲って、チームを勝たせる気でいます」。

 有言実行。圧巻の2ゴール。盛岡商高のエースストライカー。FW戸來匠(3年=レノヴェンス・オガサFC出身)が大事な準決勝の舞台で眩い輝きを放った。

「前半の入りから、自分が点を獲ってチームを勝たせようと思っていました」という戸來の意気込みは、いきなり意外な形で出てしまう。開始早々の前半5分。前からプレッシャーを掛けたタイミングで相手を掴んで止めると、主審はイエローカードを提示する。ただ、「その時は焦りましたけど、そこまで気持ち的に落ちることもなく、いつも通りにやろうと思っていました」とすぐさま冷静さを取り戻すと、決定的なチャンスが到来する。

 13分。左サイドからMF佐々木央汰(2年)が投げたロングスロー。「こぼれを狙うというふうに役割が決まっていた」戸來の足元へ、ルーズボールが転がってくる。右足で丁寧に、思い切り良く右足を振り抜いたシュートは、鮮やかにゴールネットへ突き刺さる。

「『とりあえず振り抜いて枠に入れよう』という感じで打ったら、良いコースに行ってくれてメッチャ嬉しかったです。打った瞬間にどこにボールが行ったのか見失ってしまって、気付いたらネットが揺れていた感じです」。チームに大きな勢いをもたらす戸來の先制弾。盛岡商が1点をリードした。

 前半のうちにMF工藤春(2年)が追加点をマークし、2-0と点差を広げて迎えた後半9分。再び8番を背負ったストライカーが、持てる能力を存分に発揮する。「手前でバウンドしたのでちょっと難しかったですけど、そこでうまく1人剥がせて、あとは落ち着いて流し込むだけでした」。

 右から工藤が入れたクロスを、きっちりコントロールしながらマーカーをその流れのままにかわすと、躊躇なく右足でフィニッシュ。ボールは左スミのゴールネットへ緩やかにバウンドしながら吸い込まれる。サイドアタックはチームの攻撃の肝。「右も左もスピードがあって、一発で抜けてクロスを入れてくれるので、中に入って決め切るというのが自分の仕事だと思います」。

 “自分の仕事”、完遂。「最近シュートの精度が上がってきていて、本人にも感覚があるんじゃないですかね。これまでチャンスを外してきたので、ここらへんで爆発してくれて良かったです(笑)」。中田監督も笑いながら評価したストライカーのドッピエッタが、チームに3-0という快勝を呼び込んだ。

「ビルドアップの中で、バイタルエリアに入って足元で受けて、そこからのスルーパスとかドリブルとか、そういうアイデアが自分の強みだと思っています」と自らを分析する戸來には、憧れている選手がいるという。

「マンチェスター・ユナイテッドのグリーンウッド選手で、自分とはタイプが違うんですけど、両足の器用さとかシュートの上手さは参考にしています。特にユナイテッドが好きなんですよね」。両足を器用に使いこなすマンチェスター・ユナイテッドの新星を目標に、さらなる飛躍を誓っている。

 自ら選んだこのチームに対する思い入れは、小さいはずがない。「自分たちはここ10年ぐらい全国に出られていないですけど、“古豪”と言われているのが自分は凄く悔しくて、そういうふうに古豪と言われることをなくすためにも、今年は絶対に勝ちたいなと思っています。決勝も今日みたいな感じでリラックスしながら、自分の持ち味を発揮して、点を獲って、チームを勝たせられればなと思います」。

 話してみると、実に温厚。「あまり怒ったりとか、プライベートの時はしないです」と笑顔で語るが、ひとたびピッチに足を踏み入れると、強気なメンタルにスイッチが入る。ナンバー8のストライカー。ファイナルでも戸來が躍動すれば、きっと臨んだ結果は自ずと付いてくるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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