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スタメン全員が首都圏出身。“本格強化元年”の帝京五が5発逆転ゴールラッシュ、初の愛媛制覇に王手!!

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MF武田健汰(2年、背番号8)の強烈なボレーシュートで勝ち越した

[11.3 高校選手権愛媛県予選準決勝 済美高 1-5 帝京五高 北条球技]

 第100回全国高校サッカー選手権愛媛県予選は3日、準決勝を行い、帝京五高が6年ぶり2度目の決勝進出を決めた。済美高相手に前半早々に先制されたが、そこから大量ゴールを浴びせて5-1で圧勝。13日の決勝戦では悲願の全国初出場をかけ、前々回王者の今治東中等教育学校に挑む。

 スタメン11人全員が東京都と神奈川県からの越境入学組。南予の城下町・大洲市で異例の強化体制を組む新興校が「勝負の年」に決勝行きを勝ち取った。指揮を執るのは名門・国見高でエースを務め、黄金世代の年代別日本代表も経験した植田洋平監督。一発勝負の戦い方を熟知した指揮官のもと、覚悟を持って入学してきた選手たちが愛媛の勢力図を変えようとしている。

 もっとも試合は前半6分、先手を取ったのは済美だった。中盤でのボール奪取からアンカーのMF瀧野凌太(3年)がダイレクトで左サイドに展開し、ドリブラーのMF宮村和真(2年)が相手ディフェンスを剥がしてクロスボールを送ると、2列目のMF幸春登(2年)がゴール前で反応。懸命に足を伸ばしたボレーシュートでゴールに押し込み、ダイナミックな攻撃で先制点を奪った。

 それでも帝京五はブレなかった。失点直後、選手たちがすぐさま集まり落ち着きを取り戻し、“選手権仕様”のゲームプランを徹底。「基本的なうちの戦い方として、ロングボールとセットプレーで押し込んでいって先制点を取る。もしも取れなかったら選手交代を駆使して、テクニックのある選手で主導権を握っていくという戦い方」(植田監督)。先制点こそ許したものの、少ない手数でロングボールを蹴り続け、次第に相手を押し込みながら主導権を握っていった。

 さらに前半20分すぎの飲水タイムには、4-1-4-1で巧みなポジション取りをしてくる相手対策も確認。「相手のセンターフォワードとダブルシャドーの逆三角形のマーキングを徹底させて、相手の攻撃を遮断したところが攻撃にうまくつながっていった」(植田監督)。そうして迎えた同27分、中盤でのボール奪取からこぼれ球が続いたところでMF長谷川大珠(3年)が倒され、PKを獲得した。

 前半28分、このPKを長谷川が落ち着いて決め、まずは同点。そして同31分、GK小林竜海(3年)のロングフィードからパワフルな攻撃を仕掛けると、最後はMF武田健汰(2年)が強烈なボレーで突き刺し、瞬く間に逆転に成功した。さらに同37分には、右サイドで武田が得たFKを長谷川がゴール前に送り込むと、MF梅澤玄季(2年)のダイビングヘッドが決まり、3-1で試合を折り返した。

 後半はやや持ち直した済美が1トップを務めるFW久保一輝(3年)のポストプレーを起点に攻めに出ようと試みたが、帝京五ディフェンスも粘り強い対応で追撃を許さない。すると同15分、帝京五はDF平繁一樹(3年)の右CKにDF峯山隆介(2年)が合わせ、相手に当たったボールがネットに吸い込まれて4点目。直後の同16分にも高い位置でのボール奪取から長谷川が華麗なミドルシュートを決め、5-1の大差となった。

 最後まで攻め続けた帝京五はそのまま試合を締め、6年ぶりの決勝進出が決定。2点ビハインドから延長死闘を制した準々決勝の松山工戦(○4-3)に続き、圧倒的な得点力を見せての逆転勝利となった。

 植田監督は試合後、「20分までに絶対に先制点を取って逃げ切りたいという気持ちはあるけど、今日や前回はその展開にならなかったにもかかわらず逆転できたというのは、選手の力がついてきたということなのかなと思う。それしか言いようがない。サッカーの能力もそうだし、気持ちの部分でも力がついてきた」と手応えを語った。

 指揮官は就任13年目。南国高知FC(当時)で現役を引退した後、2009年から帝京五の監督に就任し、ゼロからチームを作り上げてきた。

 そうした中、強化方針においては大きな転換もあった。前回決勝進出時の2015年は地元選手が中心だったが、今回は首都圏の街クラブ出身者が主体。3年前から神奈川県のライオンズSCと協力してスカウト活動を進め、今年は集めてきた選手たちで3学年が揃った事実上の“本格強化元年”だ。

 こうした異例の強化策について、指揮官は次のように経緯を語る。

「最初は地元の子を集めてやらないといけないと思っていた。いきなり関東から呼んできたりするより、やっぱり地元の子たちを育ててやってみて、ベスト4、決勝までは行けた。でもそれ以上までは行けなかった。松山のチームには勝てなかった。もともと関東の選手を呼んでやりたいというのは最初からあったので、いい時期かなということで呼んできた。松山に勝つには関東しかないと」。

 前回の決勝進出時は松山工高に1-9の大敗。地元から有数の選手が集まる名門校にレベルの差を見せつけられた。それが今予選では、因縁の松山工にも準々決勝で延長戦の末に勝利。「あの時のリベンジとかそういう感覚はない。単純に目の前の相手に勝つという感じだった」(植田監督)と意識はしていなかったというが、選んだ道の正しさは結果でまた一つ裏付けられた。

 とはいえ、本当に喜べるのはもう一つ勝ってから。決勝で挑む今治東には総体予選で敗れており、こちらもリベンジがかかる。それでも指揮官は「この子らにとっては総体なども含めて初めての決勝だけど、いつもどおりのサッカーをやってくれれば」と選手たちを信じる構え。「これからゆっくり考えていきたい」と10日後の決戦に普段どおりに挑んでいくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
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