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「内容が悪くても前進することが大事」安定感光った今治東、八幡浜工との接戦制して2年ぶり愛媛決勝進出!

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今治東中等教育学校が決勝進出

[11.3 高校選手権愛媛県予選準決勝 八幡浜工高 0-1 今治東中等教育学校 北条球技]

 第100回全国高校サッカー選手権愛媛県予選は3日、準決勝を行い、今治東中等教育学校八幡浜工高を1-0で破った。全国初出場を果たした2019年度以来、2年ぶり4度目の決勝進出。13日の決勝戦では全国初出場を目指す帝京五高と対戦する。

 愛媛県の高体連で唯一プリンスリーグ四国に在籍しているため、スーパーシードで準々決勝からの参戦となった今治東。今予選初戦の今治西戦では前半23分までに4ゴールを奪い、危なげなく突破を果たしたものの、この日は立ち上がりから試合を支配しながら得点を奪えずに苦しい展開を強いられた。

 まずは前半5分、DF矢野宏汰(3年)のクロスに合わせたFW高橋周斗(2年)のボレーはGK正面。同6分、MF白川虎太郎(3年)がパスカットからミドルレンジから狙うも枠を外れた。さらに同8分、中央で白川が相手を剥がし、左サイドのFW十亀良幸(2年)がクロスを配球。最後はFW高須賀陽斗(3年)がゴールに押し込んだが、オフサイドの判定が下された。

 その後も前半11分、十亀のFKに合わせたDF大森翔貴(3年)のシュートもGK正面を突くと、同17分には十亀のスルーパスに反応した高須賀が狙うも枠外。徐々に勢いをつけた八幡浜工がFW小西祐丞(3年)のポストプレーやFW中野達樹(3年)のドリブル突破、FW{村田幸輝(3年)の幅広いゲームメークで反撃を試みると、試合は一進一退の攻防を呈していった。

 そして前半アディショナルタイム2分、今治東は縦パスを高須賀が収め、高橋と十亀がつないで左サイドに展開すると、攻撃参加してきたDF竹内海人(2年)がグラウンダーのクロスを供給。これが決定機となったが、高橋が決め切れず、スコアレスのままハーフタイムを迎えた。

 すると後半10分すぎ、今治東は十亀がピッチ中央で脚を負傷し、MF市川栞安(3年)と交代。同13分にはGK藤原陸(3年)のパントキックが相手に奪われ、小西のパスからFW宮島聖拳(2年)の決定的なシュートを放たれた。ここは藤原がなんとかスーパーセーブで後処理したが、嫌なムードが漂っていた。

 なんとか前に出る今治東は後半15分、自陣からのロングフィードにFW三好憂(3年)が抜け出し、ペナルティエリア右からシュートを狙ったがGK正面。同26分には市川のパスから竹内が突破し、クロスに対して三好がダイビングヘッドで飛び込むも、クロスバーをかすめ、またしてもゴールにはつなげられなかった。

 そうして迎えた後半29分には、八幡浜工が勝負に出た。ボランチから推進力のある攻撃参加を見せていた村田を本職のトップ下にスライド。そして同31分、さっそく村田が左サイドを突破し、クロスに小西が競り合うと、こぼれ球を宮島が狙った。だが、これはわずかに枠外。八幡浜工は千載一遇のチャンスを逃した。

 すると後半32分、ついに今治東が試合を動かした。中盤からのパスを左サイドで受けた竹内がダイレクトでハイクロスを送り込むと、ジャンピングヘッドで合わせたのは三好。164cmの身体から繰り出したハイジャンプで相手ディフェンスの背中を取ると、的確にミートしたボールがファーポスト脇に吸い込まれた。

 ビハインドとなった八幡浜工は直後、最終ラインのDF紀伊恭史郎(3年)を最前線に上げ、村田とのコンビでパワフルな攻撃を展開。だが、今治東も大森とDF石山瑛(3年)のセンターバックコンビを中心にボールを背後にそらさず、安定した守備を保つ。その結果、試合は動かずタイムアップ。今治東が2度目の全国大会まであと1勝とした。

 試合後、今治東の谷監督は「相手の3トップが元気がいいので、警戒しすぎて後ろに重くなった。もうちょっと前でボールを動かせる状況だった。守備も攻撃も後ろに余りすぎた」と課題を指摘しつつ、「チャンスを決め切れないとこういう展開になるだろうと予想はできた。ただトーナメントは内容が良くても悪くても前進していくことが大事なので、失点ゼロで抑えることができてよかった」と冷静に振り返った。

 指揮官によると、試合を難しくしたのは決定力に加えて、コンディション面の課題だったという。スーパーシードのため今予選はこれが2試合目だったということもあり、試合中盤から脚をつる選手が多発。決勝ゴールを決めた三好もジャンピングヘッドの直後、ゴールパフォーマンスを行ったコーナーフラッグ付近で倒れ込み、そのまま途中交代となっていた。

「試合のスタミナは走り込みとは違うし、われわれはプリンスリーグがあったけどプリンスリーグとも戦い方が違う」。そう要因を語った谷監督は「八幡浜工がカウンターを仕掛けてくるので、2列目のアップダウンが多くなった」と相手も称えながら「トーナメントのゲーム体力はようやくこの2試合でフィットするんじゃないかという気がする」と次戦での改善に目を向けていた。

 そうした難しさがありながらも、安定した強さを見せて決勝に進出。相手は初の全国出場を狙う帝京五に決まった。

「帝京さんはバランスがいいし、一人一人がしっかりしているので、チャレンジャーの気持ちでやっていきたい。総体ではうちが勝っているのでメンタリティーも高めてくると思う。受けないつもりでやっていきたい。あとはお互いが行ったり来たりする中で、どっちがチャンスをモノにできるか、どちらが多く決めるかという試合になると思う」。

 2年前に一足先に全国切符を手にしたが、立場はいまも「チャレンジャー」。10日間で入念な準備を重ね、勢いに乗る新興校を制する構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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