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徳島市立が9年連続の決勝進出!! 1〜2年主体のポゼッション“移行期”も貫禄5ゴール圧勝

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FW林秀太(2年、背番号10)が先制ゴール

[11.6 高校選手権徳島県予選準決勝 徳島市立高 5-1 徳島科学技術高 徳島市球技場]

 第100回全国高校サッカー選手権徳島県予選は6日、準決勝を行い、徳島市立高徳島科学技術高を5-1で破った。徳島市立は2013年度から9年連続の決勝進出。13日の決勝戦では4年連続20回目の全国出場をかけ、徳島商高と対戦する。

 インターハイ16強の徳島市立が、圧巻のゴールショーで冬の決勝行きを掴み取った。なかでも前半のパフォーマンスは完璧といえる出来。新チームから発足時から積み上げてきたパスサッカーが機能し、被シュートゼロのままひたすら相手を圧倒し続けた。

 まずは前半16分、波状攻撃からFW林秀太(2年)がゴールに迫ると、振り向きざまに左足ミドルシュートを突き刺し先制。同20分にはクロス攻撃から相手GKのパンチングミスにつけ込み、DF稲川陽友(2年)の折り返しをFW笠原颯太(1年)が頭で押し込んだ。

 さらに前半26分、林とのワンツーでゴール前に攻め込んだ左ウイングバックのMF佐藤秀一(3年)がGKの頭上を撃ち抜く強烈な右足シュートを突き刺し3点目。佐藤は同アディショナルタイム1分にも、笠原が放ったシュートの跳ね返りを落ち着いて沈め、4-0の大量リードでハーフタイムを迎えた。

 後半も徳島市立の勢いは止まらない。6分、右サイド攻撃から笠原が果敢にシュートを狙うと、相手DFに当たったこぼれ球にMF柴田侑茉(2年)が反応。右足で弾丸ミドルシュートを決めて5-0とし、早くも大勝ムードに持ち込んだ。

 ところが、試合展開はここから一変した。

 徳島科学技術は後半9分、FW井上翔大(3年)がミドルレンジから右足で狙い、ようやくファーストシュートを記録すると、その後はロングボール中心に舵を切った攻撃が威力を発揮。徐々に相手を押し込めるようになり、同13分には左サイドからカットインした井上が惜しい右足シュートで最初の決定機をもたらした。

 そして後半24分、徳島科学技術はMF田仁皓晴(3年)が右サイドに展開し、MF高間晴暉(3年)がダイレクトでクロスボールを送ると、2列目から反応したMF野崎春咲(3年)がニアサイドに飛び込む。相手GKと交錯しながら放った右足シュートでゴールに流し込み、ついに1点を返した。

 その後も徳島科学技術のペースが続き、後半26分には井上のクロスから惜しいチャンス。ファーサイドでFW山本虹太朗(3年)が頭で折り返し、田仁がゴール前に詰めた。だが、ここは徳島市立が誇る188cmの長身GK藤澤芭琉(2年)に収められ、2点目を奪うことはできなかった。

 後半28分と31分には徳島市立が林のヘッド、笠原の左足シュートで立て続けに相手ゴールを襲うも、GK山根壮騎(3年)が連続スーパーセーブ。これ以上点差を広げることは許さない。その後もゴールを狙い続けた徳島科学技術。しかし、徳島市立の守備陣の奮闘もあって反撃には至らず、5-1で勝利した徳島市立が決勝進出を決めた。

 ところが試合終了直後、徳島市立の選手たちに笑顔はなかった。

 前半は被シュートゼロで圧倒したものの、後半は8本のシュートを打たれて1失点。交代出場選手の中には涙を流す姿もあった。河野博幸監督も「判断ミスとか技術的なミスで奪われ方が悪くなり、カウンターを受けてしまった。入れた選手が上手くいかず、交代選手もよくなかった」と課題を口にした。

 その一方、前半の良い時間帯ではこれまでの積み上げの成果を見せていた。巧みなポジショニングで3-4-2-1の布陣を自在に操り、最終ラインとボランチが相手のスペースをうかがいながら攻撃をビルドアップ。中央にボールが入れば他の選手がサイドに流れ、その間にまた別の選手がゴール前に飛び込むという流動的な動きで相手を大いに苦しめていた。

 その背景には、徳島市立が近年トライしている“仕様変更”があるようだ。

 徳島市立は数年前から、これまでの縦に速いスタイルから徐々に舵を切り、ボールポゼッション志向への道を歩み始めている。指揮官によると、5年ほど前からスカウト選手のターゲットをテクニック重視に傾けており、その選手たちがメンバー入りするようになってきたいまが「移行期」。4〜5年を一つのサイクルと定義づけ、長期的な目線で戦術へのテコ入れを行ってきたのだという。

 今季は先発の大半を技術に優れた1〜2年生が占めており、これまでスピードやフィジカルを長所とする選手が並んでいた前線にも林、笠原、FW藤島涼介(3年)らテクニック系の選手を起用。新たなスタイルが根づこうとしている。

 もっとも、勝利のために粘り強く戦ってきた徳島市立のカラーも捨てるつもりはない。「このサッカーを全国に出た時にどうするかは分からない。ある程度はするけど、ある程度は割り切らないといけないこともある」と語った指揮官は「全国ではガチガチした展開になってくるので、その中で何ができるかを勉強していったらいい」とトーナメントの戦いから学んでいく姿勢だ。

「ある程度オールマイティーじゃないとこれからのサッカーはあかんじゃないですか。繋ぐだけでもあかんし、蹴るだけでもあかんし、守るだけでもあかん。そういうところをこの子らのレベルの中で考えていければ。最終的にどうするかはピッチの中で判断しないといかんから、練習と試合を経験しながら最終的にそうなっていけば」(河野監督)。

 すなわち、いまトライしているポゼッション志向のスタイルも“オールマイティー”になっていくための一つの顔。徳島市立はたしかな成長を求めながら、この徳島県予選を勝ち抜いていく。

(取材・文 竹内達也)
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