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[MOM3653]大分工DF平松寛大(2年)_ GKの前に立ちはだかるもう1つの壁。父の想いを背負う“大工のマスチェラーノ”が圧巻の守備を披露!

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“大工のマスチェラーノ”。大分工高CB平松寛大

[11.6 選手権大分県予選準決勝 大分工高 2-0 鶴崎工高 大分スポーツ公園サッカー場]

 鶴崎工高のシュートは最後までゴールラインを越えなかった。ただ、12本放たれたシュートのほとんどを止めたのはGKではない。守護神・GK増田海斗(3年)の前で、相手に立ちはだかったのは大分工高のCB平松寛大(2年=カティオーラU-15出身)だった。

 最初の見せ場は前半5分。開始2分で先制した大分工にとって、何としても得点直後の失点だけは避けたい場面だった。

 CKのこぼれ球を拾った鶴崎工のMF荻本響(3年)が至近距離で右足を振り抜く。誰もが“危ない”と思った矢先、ボールの先に平松が構えていた。身を挺してブロックし、チームのピンチをいきなり救ってみせた。その後も平松は身体を張り続け、最終ラインでコンビを組むCB山本玲央(2年)と共に最終ラインで存在感を発揮。「自分は他の選手に比べて、あまり特徴がない。身体を張る守備でしか貢献できないし、そこをなくしたら何もないので、いつもこだわっている」。その言葉通り、後半に入っても何本もシュートを身体に当て、相手の攻撃を跳ね返す。そのプレーぶりは“もう1人”のGKと呼ぶべきパフォーマンスだった。

「新チームが発足して、SBからCBにコンバートした。(CBでコンビを組む)山本と同じチームでやっていた(ので連携は心配ない)。平松はフィジカルも強いし、何より頑張れる選手。準々決勝の大分鶴崎戦もカバーしてくれて、チームを救ってくれた」

 友成義朗監督も平松のブレーに頬を緩ませ、鉄壁の守備を誇った2年生CBに最大級の賛辞を送った。
 
 シュートブロックを得意とする平松が憧れるのは、元アルゼンチン代表のハビエル・マスチェラーノ。決して大柄ではないが、身体を張った守備と経験に裏打ちされた的確なポジショニングで、長年活躍してきた往年の名選手が最高のお手本だ。

 マスチェラーノの全盛期を知らない平松が、参考にするようになったきっかけは大分工サッカー部OBでもある父から教えてもらったことだった。それ以来、何度も昔の映像を見返し、身体の使い方や位置取りを学習。そうした取り組みが準決勝の舞台で活躍できた要因となった。

 将来は消防士か警察官になることを夢見る平松。だが、もう一つ叶えたい夢がある。それが選手権への出場だ。サッカーを始めるきっかけを与えてくれた父は、高校2年生の時に県予選決勝で敗退。惜しくも全国の舞台に出場を果たせなかった。

「中学時代のチームメイトが進学するのも理由の一つ。だけど、父から『選手権に出場できなかったんだ』という話を小さい頃から聞かされていたので、自分も大分工に進学して選手権に出たかった」。

 父の夢も背負うCBは選手権出場を果たせるか。古豪復活に導くべく、“大工のマスチェラーノ”が決勝のピッチに立つ。

(取材・文 松尾祐希)

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