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“怪物”CBチェイス・アンリが80m走って劇的V弾!尚志が学法石川との激闘制し、第100回の選手権へ!!:福島

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“怪物”CBチェイス・アンリ擁する尚志高が第100回の選手権へ

[11.7 選手権福島県予選決勝 尚志高 2-1 学法石川高 西部サッカー場]

 尚志がU-22日本代表CBチェイス・アンリ(3年)の劇的決勝点で全国へ! 第100回全国高校サッカー選手権福島県予選決勝が7日に行われ、2年ぶりの優勝を狙う尚志高と前回大会優勝校の学法石川高が激突。後半40+2分にアンリが決勝点を決め、尚志が2年ぶり12回目の選手権出場を果たした。

 熱戦は1-1で後半アディショナルタイムに突入。後半33分に追いついた学法石川がさらに1度、2度と決定機を作り出すなど注目校・尚志を飲み込みかけていた。そして、40+2分に、左CKを獲得。だが、尚志はこれを弾き返すと、右サイドでこぼれ球に反応したDF入澤新大(3年)が前方へ縦パスを入れる。

 そして、巧みなファーストタッチでDFと入れ替わったMF草野太貴(3年)が、PA手前までボールを運ぶと、切り返して「声」のした方へラストパス。これを自陣ゴールエリアから約80m走り抜いたアンリがコントロールする。ややタッチは乱れたが立て直すと、左足シュート。GKの脇を抜けたボールはそのままゴール右隅へ吸い込まれた。

「県では負けちゃいけない。最後のゴールは仲間を信じて、(予選敗退した)去年の悔しさを込めてしっかり最後やらないといけないと思って走りました」というアンリは、サブ組の方向へ走り出し、スライディング。そして、大興奮のチームメートと喜びを爆発させたあと、仲村浩二監督の下へ駆け寄り、がっちりと抱擁していた。

 仲村監督は「勝負を分けるあそこに走れるかどうか。僕、ずっと言っていたんですけれど、点取れる選手って、そこに走っているから点取れるんだよと。(走っていることが必要なシチュエーションで)、『そこにいるのが、オマエか!』と思いました」と微笑。超高校級のヘッドや対人の強さを持つ“怪物”CBアンリが走って決めた決勝点によって、尚志が全国切符を掴んだ。

 新人戦、インターハイ予選に続く優勝を狙う尚志にとって学法石川は前回大会準決勝で敗れている因縁の相手だ。学法石川は怪我のエースFW佐藤武流(3年)がベンチスタートだったものの、DF円道竣太郎主将(3年)や10番MF森隼真(3年)ら昨年の尚志戦経験者計6人が先発。PK戦までフルに戦った準決勝から連戦で体力的な負担は大きかったはずだが、選手たちは良く走り、戦った。

 尚志は、立ち上がりから動き出し巧みで突破力も秀でた右FW村上力己(3年)を再三活用。相手DFラインが下がって空いたバイタルエリアにMF松本勇斗主将(3年)が顔を出し、1タッチパスなどでテンポを上げる。

 また、10番MF松尾春希(3年)とMF新谷一真(3年)のダブルボランチがボールを失わずにゲームコントロール。奪い返しが速く、最終ラインでアンリやDF安江海ラウル(3年)が強さを見せる尚志は連動した攻撃でハイサイドを取っていたが、ラストの精度を欠いてしまう。

 また、学法石川はこの日存在感ある動きを見せたCB円道や右SB原田雄斗(3年)、CB高田颯太(2年)が競り合いで対抗。「個が強くならないと全国でやっていけないと思っています」と稲田正信監督が語る学法石川は、個の部分でも強敵に食い下がり、原田のロングスローや前線のスピードを活かした攻撃にチャレンジしていた。

 それでもGK鮎澤太陽(2年)の好守などで凌いだ尚志は28分、クリアボールを右サイドで拾った右SB佐藤利明(3年)がアーリークロス。これをFW小池悠斗(3年)が距離の長いヘッドで決めて先制した。対する学法石川は後半開始から佐藤とFW阿部吉平(2年)を同時投入。立ち上がりにいきなり2人で決定機を作り出すなど、立て続けに相手ゴールを脅かすようなシーンを作り出した。

 相手2トップのスピードにやや手こずっていた尚志は、後半15分の入澤投入で4バックから安江、アンリ、入澤の3バックへ移行。その後は試合を安定させ、逆に追加点のチャンスを増やしていた。だが、相手の守りを崩しながらも決められずにいると34分、痛恨の失点。学法石川は原田の左ロングスローからニアの競り合いで森が粘り、最後は円道が強烈な右足シュートを逆サイドのゴールネットへ突き刺した。

 勢いを増した学法石川は、さらに円道の縦パスで抜け出した佐藤の右足シュートが左ポストをかすめるなど逆転のチャンス。ただし、学法石川の稲田監督は「できればあのまま取り切りたかったですけれども、まだまだ全国行くレベルとウチとの差だと思いました。あそこでアンリ君がいて、あそこで決めて、ウチもチャンスがあって……。決め切る強さ、ここの差を彼らが感じて明日から日常から変えていかないといけない」。強気に前に出た学法石川だったが、決め切れず、逆に尚志のアンリが決勝点。U-20日本代表候補やU-22日本代表候補を経験し、尚志の基準を上げる存在が好勝負で差を生み出した。

 尚志の仲村監督は「本当、アンリがプラス要素としてしかないです」という。“飛び級”で24年パリ五輪世代のU-22日本代表にも入ったアンリは今年の高校サッカー界を代表する存在の一人で、注目度は非常に高い。他の選手たちはその陰に隠れてしまう部分もあるが、松尾は「アンリが注目してもらえれば自然と尚志も注目されることになって、その中で自分も存在感出せれば自分も注目されていくと思うので、全然嬉しいですね」という。アンリが代表チームで学んできたことを尚志に還元。また、松本はその高い意識がチームを引き締めていると考えている。

「アンリがいることによって、アイツの一言でチームの雰囲気が変わったりします。チームが緩い時に『しっかりやろう』みたいなアンリの声で締まったり、インハイ負けてからは後ろからキツイことを言ってくれる。(アンリがいることで)注目されているからこそ、勝つというのもありますし、絶対にやってやるというチーム状態でもあるので。全国制覇という目標はブレないでやっていきたい」

 仲村監督が試合後に指摘したように、日本一になるための課題は決定力。また、インターハイ王者・青森山田高(青森)のU-22日本代表MF松木玖生主将(3年)との対戦を熱望したアンリは、「山田のバックラインの選手とかパワーあるので、このままでは戦えないと思うので、選手権までに準備したい。最後なので本当にみんなが目指している全国制覇をやらなければいけないと思うので頑張ります」と誓った。インターハイでは優勝争いの一角に食い込むことが予想されたが、まさかの初戦敗退。その悔しさも胸により成長し、選手権で全国制覇に再挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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