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[MOM3662]大津FW小林俊瑛(2年)_ 地道な努力で才能開花は目前――。圧巻の3ゴールで191cmの注目FWが迎える実りの秋

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大津高の大型FW小林俊瑛(手前の9番)はGKより高い打点で自身3点目をゲット!

[11.7 選手権熊本県予選準決勝 大津高 8-0 慶誠高 水前寺競技場]

 平岡和徳総監督が普段から口にする言葉がある。「コツコツが勝つコツ」。コーチ陣に1年次から目を掛けられ、深い愛情を注がれてきた。それに応えるべく、努力を重ねてきた点取り屋が実りの秋を迎えようとしている。

 慶誠高との準決勝、3年ぶりの全国を目指す大津高勝利の立役者になったのはFW小林俊瑛(2年=藤沢市立鵜沼中出身)だった。序盤から191cmの高さを生かし、最前線で存在感を発揮。安定感のあるポストプレーでボールを収め、空中戦では相手をうまくガードしながら競り合う。最もこだわってきたペナルティエリアの攻防でも自身の長所を生かし、3つのゴールをもぎ取った。

 最初の得点は2-0で迎えた前半37分。左サイドを突破したMF川口敦史(3年)の折り返しに泥臭く合わせる。ニアサイドに走り込むと、体勢を崩されながら右足でネットを揺らした。

 ファーストゴールは得点感覚を発揮した形。2点目と3点目は一番の武器であり、高校入学後に磨き上げてきた自身のストロングポイントを最大限に生かした。

 後半16分、MF田原瑠衣(2年)のクロスに合わせる。相手のマークをうまく外してフリーになると、打点の高いヘッドでチームの4点目を決めた。30分に生まれた自身の3点目も得意の形から。ショートコーナーからMF森田大智(3年)がセンタリングを上げると、小林は相手GK村中昂星(2年)の上を行くハイジャンプで競り勝つ。177cmの村中が手を伸ばしても届かない位置から強烈なヘッドを見舞い、ハットトリックを達成した。

 山城朋大監督も3得点の活躍に目を細め、「日を追うごとに成長している」と小林のプレーを賞賛。キャプテンの森田も「(相手の高さ次第では)飛ばなくてもボールを当てられる。今ではチームの拠り所」と話し、後輩の進化に頼もしさを感じていた。

 神奈川から熊本にやって来て1年半。入学当初からポテンシャルを見込まれ、1年次からトップチームに帯同。世代別代表にも継続して招集されてきた。ただ、それはあくまで将来性を期待されての抜擢。圧倒的な高さを持つ一方で筋力や俊敏性に課題を残していたため、純粋な実力で掴み取った居場所とは言えなかった。

 だからこそ、小林は誰よりも努力を続ける必要性を認識し、平岡総監督や山城監督から与えられたメニューへ地道に取り組んだ。朝練習では弱点だったステップワークを強化。身体の成長が止まった2年生を迎えてからは筋力トレーニングを増やし、ボディに見合ったエンジンを備えるために自分と向き合い続けた。

 特に今年のインターハイ予選前は右足の中足骨を骨折した影響でトレーニングができなかったため、徹底的にフィジカルを強化。その成果について、山城監督はこう話す。

「リハビリ期間中はかなり体幹トレーニングをやらせ、バイクも漕がせたんです。その結果、お尻周りの筋肉が鍛えられ、体幹も強くなりました。インターハイでも(フィジカルが強い)流経大柏の選手と競り合っても負けなかったので、彼にとって自信になったと思う」。

 実際にインターハイの本大会では空中戦で強さを発揮。うまく身体を使って相手をブロックし、空中で姿勢が崩れる場面もほとんど見られなかった。この日の3点目は、まさに今までの積み重ねが現れたゴール。本人も「GKの上から叩けたので、ちょっと嬉しかった」と話し、取り組んできた成果に胸を張った。

 どこか弱々しかった1年前の姿はもうない。自信を得たことで、表情も凛々しくなった。口にする言葉も変わり、「2年生の選手権が一番大事。高卒でプロに行くのであれば、2年生から注目してもらわないといけない」と言い切る。飛躍の時を迎えつつあるストライカーは人生を変えるべく、初の選手権出場に向けて決勝でもゴールを奪う。

(取材・文 松尾祐希)

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