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「攻撃力を倍増」するために磨いた守備発揮し、攣るまで走った静岡学園が被シュート1で藤枝東完封!静岡3冠達成!

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静岡学園高が静岡3冠達成。日本一への挑戦権を獲得

[11.13 選手権静岡県予選決勝 藤枝東高 0-2 静岡学園高 エコパ]

 静岡学園が00年の清水商高以来、21年ぶりの県3冠を達成――。第100回全国高校サッカー選手権静岡県予選決勝が13日に行われ、全国出場25回の藤枝東高と同12回の静岡学園高が激突。静岡学園が2-0で勝ち、2年ぶり13回目の全国大会出場を決めた。

 被シュートわずか1本。静岡学園は川口修監督が「我々のストロングは攻撃なので、攻撃を活かすためには守備力を上げようと。守備力を上げて『攻撃力を倍増する』と。練習の中で落とし込んでそういう意識でやりました」という守備によって、名門校対決で差を生み出した。例年、“王国の技巧派軍団”はまずボールを自由自在に扱うことや、試合で発揮するための技術・創造性習得に時間を割き、守備に取り組むのは秋頃になってから。それでも、インターハイで“基準”を学び、意識高く構築してきた守備の成果が大舞台で発揮された。

 試合は拮抗した序盤から徐々に静岡学園が押し込む展開に。だが、藤枝東は右SB野田隼太郎(1年)が静岡学園の磐田内定MF古川陽介(3年)の個人技に対してよく食い下がる。また、左SB恒岡大雄主将(3年)も対面のU-17日本代表候補MF高橋隆大(2年)に簡単には突破を許さない。SHのプレスバックの意識も高く、静岡学園の強みであるドリブルを封じていた。

 静岡学園は多くの時間でボールを支配し、コンビネーションから高橋がシュートを放つシーンもあったが、相手の分厚い守備の前にアイディアやテクニックで会場を沸かせた回数はわずか。重心を下げて戦う藤枝東を攻略できないでいた。

 だが、藤枝東の小林公平監督が「(静岡学園の)攻撃のところが良いのは十分に分かっていたんですけれども。守備のところやタフさのところでこっちが思っていた以上に彼らはやれていたので、そこで差があったと思います」と分析したように、静岡学園は相手に攻撃機会をほとんど与えなかった。

 また、川口監督は「今日のポイントは、自分は中盤勝負だと思っていた」と振り返る。この日、静岡学園は秀逸な動きを見せていたMF菊池柊哉(3年)と徳島内定MF玄理吾(3年)のダブルボランチのラインで何度も奪い返しに成功。MF荒井駿希(3年)を含む中盤中央3人をはじめ、ポジショニングとアプローチ、カバーリング、強度と守備の良い部分が出て相手に攻撃の形を作らせず、逆に自分たちが思うような配球をすることに成功していた。

 前半、藤枝東は準決勝3発のFW藤井斎(3年)が起点となり、右MF川口大介(3年)が仕掛けるシーンもあったが、シュートゼロ。「後半は少し勇気持って出よう」(小林監督)という指示もあって後半立ち上がりは藤枝東がやや押し込むが、静岡学園はその時間を継続させず、セットプレーによってスコアを動かした。

 後半7分、左SB野村海翔(3年)の左CKをニアのU-18日本代表候補CB伊東進之輔(3年)が頭で逆サイドのネットへ流し込んで先制点。伊東の2試合連続先制点によってリードを奪った静岡学園は、GK生嶋健太郎主将(3年)も「一番うしろから見て、守備の強度は一番良いと思っていた。中盤や前の選手がよく頑張ってくれた分、後ろは結構楽に守備ができたと思います」と評価する守備によってゲームを安定させ、攻撃する時間を増やした。

 一方、藤枝東は守備のスライドや個々の粘り強い対応を徹底しながら0-1を継続。20分にカウンターから俊足MF中村朔良(2年)が仕掛け、24分には同じくカウンターから藤井が前進し、川口が惜しいシュートを放つ。だが、相手の好守と走力の前に、想定していたよりも攻撃の回数を増やすことができなかった。

 この日、静岡学園は計6人が足を攣らせるほど走ったという。川口監督が「今日はサッカー人生で選手が一番走ったと思います。僕が外から見ていて、こんなに走った選手をあんまり見たことがなかった。それくらい選手たちが懸ける思いだったり、絶対に全国大会で勝負したい、という気持ちが出たと思います」と頷くようなゲームを見せた。

 そして、追加点を目指す静岡学園は高橋がポスト直撃の左足ミドル。そして37分、FW松永颯汰(3年)が強引にPAへ持ち込み、最後はこぼれ球を古川が左足で決めて2-0とした。静岡学園はこの後、交代出場の清水内定FW川谷凪(3年)がハイプレスでボールを奪い、ポスト直撃のシュート。さらなる追加点を奪うことはできなかったものの、最後まで走り切った静岡学園が2-0で勝った。

 名門・静岡学園は“王国・静岡”で同校初の3冠。今年、J内定3選手や複数の年代別日本代表候補を擁す強力な陣容で、複数の主力を怪我で欠く今大会も代わりにチャンスを得た選手たちが活躍するなど強さを見せつけた。間違いなく全国上位の力を有しているが、インターハイは準決勝で優勝校・青森山田高(青森)の前にシュートゼロ。攻撃力が自慢のチームは序盤こそ五分以上の戦いを見せていたが、最終的には圧倒されて0-4で敗れている。静岡学園が“基準”としたのは目の当たりにした青森山田の圧力。生嶋は「山田の守備は圧が凄くて圧倒されてしまったので、今日は『藤枝東相手にやってやろう』と話していて、そういう守備ができたので良かった」と頷く。

 全国大会で青森山田にリベンジすることは目標の一つ。そのためには「(青森山田の)厳しいプレッシャーの中でも繋いでいける技術力が大事だと思っています」(生嶋)。青森山田を“基準”に守備の部分を高めてきたが、静岡学園が強敵を倒し、目標の全国制覇を果たすためにはやはり3年間徹底して磨いてきたテクニックやアイディアが必要だ。夏に発揮できなかった個々の技術力やチームでの崩しをより磨き、守備の部分もさらに高めて今冬、打倒・青森山田と2年ぶりの選手権制覇に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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